日々の生活において、物価上昇を実感することが増えていませんか? 最近特に上昇が著しかったのは、ガソリンです。世界的な原油価格の高騰で、ガソリンの全国平均小売価格も2021年11月上旬には、7年ぶりとなる1リットル=169円台を記録、その後も高値圏に留まり、2022年3月には1リットル=174円まで高騰しています。原油はガソリン、灯油、プラスチック製品など私たちの生活のあらゆる部分に関わっており、企業活動や株価にも大きな影響を与えます。今回は、原油価格と株価の関係について理解を深めましょう。
- 13年半ぶりの原油高。需要増・供給源が高騰の理由
- 原油高は、経済活動や株価にマイナスの影響を与えがち
- 一方で、原油高がプラスに働く企業や投資信託、ETFもある
13年半ぶりの原油高、その理由は?
自動車を運転したり、石油ストーブを使ったりする人は、燃料価格の高騰を身にしみて感じているのではないでしょうか。足元の原油高は13年半ぶりの水準となっており、上昇には複数の要因が重なって発生しました。
1つ目の理由は、コロナショックが明け、世界的に経済活動が復活し始めたことです。生産や輸送など、経済活動のあらゆる部分に原油が必要になるため、需要が増えて価格上昇の一因となりました。
2つ目の理由は、原油の生産量が抑えられていたことです。世界の原油生産の中心であるOPEC(石油輸出国機構)にロシアなど非加盟国を加えたOPECプラスは、景気の先行きが不透明であることを理由に増産を見送っていたのです。
アメリカも主要な産油国のひとつですが、今年の8月末に石油関連施設が集中するアメリカ南部をハリケーンが直撃しました。産油施設が壊滅的なダメージを受けたことで、原油産出量が激減しました。ただ米国のハリケーン被害からの回復が進んだことで、増産基調になってきました。
ここまでは、2021年の原油価格高騰の理由です。足元ではロシアによるウクライナ侵攻の影響で原油価格はさらに高騰しています。
いずれにせよ、今回の世界的な原油高は、需要増と供給減という双方の要因から発生し、さらに地政学的なリスクが顕在したことで、いまだに先行きが見えない状況が進んでいます。
原油高が企業活動全般に影響
原油価格が上がると、ガソリンだけでなく灯油やプラスチック製品、企業活動全般に大きな影響をもたらします。
プラスチック製品にはレジ袋、食品トレー、ペットボトルなどの日用必需品が含まれます。近年、脱プラスチックの取り組みが広がっているとはいえ、これらの製品は私たちの日常生活にとって欠かせないものです。
また、クリーニングに用いる溶剤、温室野菜を育てるためのボイラー燃料などにも石油が使われています。スーパーの食品輸送にもガソリンなどの燃料が使われています。
日々のニュースでも食料品や生活必需品の値上げ発表が相次いでおり、しばらくは苦しい状況が続きそうです。上昇基調は一服感が出たとはいえ、投資についても、当面原油は高値圏にあるという前提で考えていく必要があるかもしれません。
原油高が株価に与える影響は?
さて、原油高は株価にどのような影響を与えるでしょうか。原油価格が高騰すると大半の企業は業績が悪化し、一部の企業は受注増により業績が向上します。まずは原油高が業績を圧迫する企業を見ていきましょう。
運送や宅配などはガソリン価格の上昇が企業業績を圧迫する代表格といえます。また、日本の産業を支える製造業も原油高の影響を直接受けることになります。化学製品、鉄鋼、プラスチック製品など、製造業は全般的にマイナスの影響が出てくるでしょう。実際のところ、こうした銘柄は原油高騰時に売り圧力がかかりやすくなります。
一方で、原油価格の高騰が株価にプラスになる業種も存在します。原油高がプラスに働く業種としては、一般に石油開発などの資源企業がよく知られています。原油高になると、中近東やロシアといった産油地域の開発が活発になるため、石油プラントなどの関連企業は受注が増加傾向になることが一般的です。
そのため、原油高の兆候が見られたときには、石油関連企業の株価が上がりやすくなります。また当然ながら、原油先物をベンチマークにする投資信託やETFにも上昇圧力がかかります。
個人投資家の皆さんは、投資信託やETFで投資に取り組む人が多いと思います。原油価格の高騰がプラスに働く投資信託やETFなどについては、別の記事で紹介していきます。