テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家が700人以上所属する日本放送作家協会がお送りする豪華リレーエッセイ。ヒット番組を担当する売れっ子作家から放送業界の裏を知り尽くす重鎮作家、目覚ましい活躍をみせる若手作家まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜く放送作家&脚本家たちのユニークかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず!
連載第45回は、人気アニメ「名探偵コナン」でおなじみの脚本家・三上幸四郎さん。
結婚はフリーランスの処世術
フリーランスになって四半世紀がすぎた。そのあいだ日々仕事をし、結婚し、子どもをそだて、離婚の危機もなく、なんとか脚本家として生きのびてきた。
生きながらえてきた理由のひとつは、まちがいなく結婚したことだ。
結婚のメリットは大きい。なによりもフリーランスにとって「金と生活」というやっかいごとが軽減される。それは、浮き草のような仕事をつづけていくための数少ない処世術のひとつなのかもしれない。
というわけで今回は私が会得した、結婚とその生活に関して心がけておくべきポイントを、男性のフリーランスの方にむけていくつか紹介します。
男性限定で、この4つ
1.結婚相手は、会社員を選ぶこと
世の中、自由業者よりも定期収入を得ている会社員のほうが圧倒的に上位で信用がある。
そのことを素直にみとめよう。もちろん私の奥さんは会社員。世帯主は妻で、子どもの健康保険も彼女の会社の名義だ(無料!)。そのほか、なにかの契約のときも奥さんをたてるとスムーズにすすむ。
こんなふうに会社員であることの利点はかなり大きい。だからこそ伴侶には会社員を選び、遠慮なくその恩恵にあずかること。また、そのためにも日ごろから、会社員はえらい、と過剰なまでにほめておくこと。
2.結婚相手は、異業種であること
同業者同士の結婚はおすすめしない。まわりを見ても戦死者多数。おそらく、たがいの事情を知りすぎているためにケンカになり、かなりの高確率で破綻するのだろう。
逆にこれは、異業種同士の結婚のメリットでもある。たがいが仕事のグチをいっても相手の仕事がよくわからないので、聞いているふりをして、かるくスルーできる。しかもグチをいったほうは口に出すという行為で、いつのまにか怒りがなくなっている。
3.ケンカしたら、自分が折れろ
いっしょに生活していたら意見の食いちがいで、いいあいになることもある。が、むこうは会社員なので出ていっても金には困らず、いくらでも生きていける。
ところがこっちはそうはいかない。捨てられたらおしまいだ。だからケンカになったら、とにかくあやまろう。男のプライドなんかなんの役にもたたない。すこしぐらい理不尽でも、頭をさげろ。
4.掃除洗濯は、家にいるものの義務
どうせ家にいるなら、掃除と洗濯くらいはやろう。もちろんゴミ出しも忘れずに。子どもの保育園の送り迎えもきちんとやること。料理が苦手ならオリジン弁当でごまかせ。
きちんと家事をしておくと相手はごきげんだ。それで平穏に生きていけるのだから、メリットは大きい。いそがしいって? そんなことないでしょ。どうせ机のまえに座っていても、ほとんどボーッとしてるんだから。
以上、4つのポイントでした。
まあ、こんな感じで伴侶にめぐまれ、結婚生活をつづけると、なんとか金も生活もあまり心配せずに生きていける。とはいえ相手があること、こちらもそれなりにストレスはたまる。
で、そんなときはどうするかというと、目のまえの原稿に怒りをぶつけるんですよ。
まさにいま私は、それをやりおえたところです。
次回は放送作家のすずきBさんへ、バトンタッチ!
ぜひ聴いてください!
2022年1月22日(土)(予定)
NHK‐FM 午後10時~
FMシアター「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」
主演 須藤理彩 竹下景子
実に15年ぶりのFMシアター!
こども病院の女医とファシリティドッグの活躍を描いた医療ドラマです。
https://www.nhk.or.jp/audio/html_fm/fm2022003.html/