アメリカの物価が上昇傾向にあります。2021年秋には、物価上昇の懸念から米国株が一時的に下落する局面もありました。インフレと株価との間にはどのような関係性があるのか、確認してみましょう。
- 2021年秋の米国株式市場では、インフレ懸念の売りが優勢になる局面も
- 必ずしもインフレ=株安ではない。好景気ならインフレとともに株価も上がる傾向
- インフレ下での株式投資では、コストの上昇を製品価格に転嫁できる企業を選びたい
米国でインフレ圧力が強まっている
2021年に入り、米国の物価上昇が続いています。特に5月頃からは、米消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回ることも多く、加速傾向にあります。
10月の米国株市場では、CPIの上昇率が前月から拡大したことを受け、インフレ加速を懸念した売りが優勢となる局面がありました。背景には、米国の中央銀行である米連邦準備制度理事会(FRB)が「物価上昇を抑えるために量的金融緩和政策を早期縮小するのではないか?」という警戒感があるとされています。
インフレでなぜ株安?
一方で、インフレは必ず株安に結びつくわけではありません。インフレと株価の関係を見ていきましょう。
一般的に、インフレは景気が良いときに発生します。企業収益の伸び、賃金上昇、物価上昇が連動する好循環により、インフレと同時に株価も上昇すると考えられます。
しかし、予想外に急激なインフレが起こった場合は事情が異なります。仕入れコストの増大をすぐに価格へ転嫁することは難しく、企業収益を圧迫してしまう可能性があるからです。株価は企業の収益状況に左右されるため、インフレによって利益が下がると投資家が判断した場合、株安につながることがあります。
直近のインフレにおいては、前述したようにFRBの金融緩和縮小も投資家の懸念点となっています。
アメリカの中央銀行であるFRBは、新型コロナウイルスでダメージを受けた経済を回復させるために、大規模な資産を投入して金融緩和を行っています。金融緩和によって金利を下げることで、経済を活性化させる効果が期待できるからです。
インフレ率の上昇が続けば、FRBは物価上昇を鎮静化させるために政策金利の引き上げを検討せざるを得ません。それによって長期金利が上昇すれば、新たに発行される高金利の債券が買われるようになり、株式市場には逆風が吹くことも考えられます。
長期的には、株式はインフレに強い資産という見方も
長期的には、株式はインフレに対抗する投資対象とする見方もあります。上場企業にとっては、コストの上昇を製品価格に転嫁することで収益増加につなげるチャンスでもあるからです。
ただし、すべての企業が値上げを実行できるわけではありません。ブランド力やマーケットシェアなど、総合的な競争優位性が必要であり、それらを持たない企業はインフレに勝る収益を上げることは難しいでしょう。
インフレ率が高まる局面では、企業の稼ぐ力により注目して投資を行うことが大切です。