現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第8回は、半導体の小型化・高機能化に欠かせない部材メーカーである新光電気工業(6967)を取り上げます。

  • 新光電気工業は、半導体の製造に欠かせない部材のメーカー
  • 米国のインテルなど先端半導体メーカー向けの出荷が順調に伸びる
  • 2022年3月期は大幅増収増益を見込む。工場や生産設備の増設など投資継続

新光電気工業はどんな会社?

新光電気工業は、東証1部市場に上場する富士通傘下の半導体パッケージ基板やリードフレームなど半導体の製造に欠かせない部材のメーカーです。特に半導体の小型化や高性能化に対応するさまざまな半導体のパッケージ関連に強みを持っています。半導体のパッケージには前述のような部材が用いられ、古くからこれらの製品を手掛けてきており、高いシェアとなっています。

新光電工は戦後間もない1946年に家庭用電球のリサイクル事業を祖業として長野県に設立されました。社名の「新光」は初代社長の奥田孝治氏が戦後の日本で再起を目指そうという強い願いを込めて希望と未来を意味する「新しい光」から名付けられています。

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その後1957年には富士通による出資を受けて半導体の分野に事業を広げていきます。1969年に参入したリードフレームもその一つです。リードフレームはスマホやパソコンなど電化製品に使われているICやLSIなどの集積回路の部材です。半導体のチップと土台となる基板は極細のリードフレームと呼ばれるムカデのような金属の端子で接続・固定されています。

新光電工では、長年培った超精密の金型技術によるさまざまな形状のリードフレームを手がけており、昨今の半導体の需要増を受けて出荷が順調に伸びています

新光電気工業の強みは?

新光電工は半導体のパッケージに用いられるパッケージ用の基板にも強みを持っています。

半導体のICチップは剥き出しのままでは衝撃や埃、熱、湿気、静電気などの影響で容易に故障してしまいます。半導体パッケージはICチップを樹脂などで外部環境から保護する役割を果たしています。また、半導体は電力で動作するため動作時に発生する熱によって性能の低下や故障などの影響がありますが、このような熱を外部に放熱することも重要な役割です。放熱に使われる高熱伝導の金属製の部材はヒートスプレッダーと呼ばれ、主力の製品の一つです。

昨今では次世代高速通信の5GやAI(人工知能)、データセンターなどの最先端の分野では半導体の高性能化が進んでいます。高性能化のため微細化と言って回路の線幅を極限まで細くしたり、半導体のチップを多層構造にしたりするなどの技術開発が進んでいます。

新光電気工業が得意とするフリップチップタイプのパッケージ基板はこのような最先端の半導体チップで利用が進んでおり、米国のインテルなど先端半導体メーカー向けの出荷が順調に伸びています。

半導体パッケージイメージ
半導体パッケージの領域で、新光電気工業は高品質・高機能な製品を生み出し続ける
※画像はイメージ

新光電気工業の業績や株価は?

新光電工の2022年3月期は売上高が前期比40%増の2642億円、営業利益が2.3倍の614億円と大幅増収増益を見込んでいます。先端半導体への需要の強さが続いている中で、強みとする半導体フリップチップパッケージ基板などの売上が会社の想定を上回り、10月末には通期の見通しを上方修正し、市場の予想を上回る業績拡大が続いています

新光電気工業(6967)の株価(週足、終値)
新光電気工業の株価チャート期間:2021年1月4日~2021年11月15日

11月19日の終値は5270円で、投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約53万円です。最先端の半導体への需要増加に加えて、足元の半導体不足でリードフレームやフリップチップパッケージ基板への需要が根強いことから、新光電工は工場や生産設備の増設など将来への投資を続けています。株価は上昇基調が続いていますが、当面は業績の成長が見込めると思われますので、引き続き注目したい銘柄の一つです。

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