宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は戦争の影響で株価が下落している中で、投資をやめたい、投資信託を解約したいという相談にお答えします。

  • インフレや株価の下落が不安な場合は、一時的な資金の回避を検討する
  • つみたてNISAでは積立投資のストップか減額で対応し、投資信託の解約はしない
  • iDeCoでは資産配分の変更やスイッチングで株式型商品の比率を下げる

投資信託からの「一時的な回避」をどう考えるか

【質問】
こんとこの日経平均株価、上げ下げで変動が激しく、昨年から始めたつみたてNISA、iDeCoも、まさかの損。このままでは怖くて、解約しようと思っています。まさかこんなに早く損するなんて……。やっぱりお金は堅実に貯めていけば良かったと後悔です。やめ方のアドバイス、何かありますか?

そうですか~やめることの検討ですか。つみたてNISAとiDeCoは、我慢も必要ですけどね。
今回は、最近非常に増えている解約の相談にスポットを当てます。

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相談者は、つみたてNISAもiDeCoも昨年からの運用です。同じように昨年頃から投資を始められた投資家は、大半の方がマイナス運用に陥っていることでしょう。今年に入ってからはインフレリスクに加えて、この戦火ですから、経済に打撃があって当然です。特にロシアがエネルギー産出国であることで世界経済に大きな影響が出始めていて、そのことが投資家心理をさらに冷やしています。

2008年のリーマン・ショックの時には円高が進み、株価の下落も大きなものになりました。それに対して今は円安傾向で、株価の下落もリーマン・ショックの時よりは軽いものですが、日本経済そのものへのダメージは、株式市場の下落幅よりさらに大きいと思います。

でもよくよく考えてみてください。株価の下落はわずか半年足らずのことですよね。日経平均株価は昨年9月、1996年8月以来31年ぶりとなる、30670円10銭の高値を付けました。現在は25000円前後での推移で、下落が強い相場になっています。これからどうなるのか? 答えは前回(第60回)でも若干お話いたしましたが、過去にはリーマン・ショックのような金融関連の事件より、米国の同時多発テロなどのような戦争を要因とする下落の方が、株価の回復が早い傾向がありました。

不安定な世界だから「リスク度」で投資信託を選ぶ

それでも対処しなければならない時、つまり株価の回復を待たずに解約する時はどうすればいいのか? 考えていきたいと思います。

トラリピインタビュー

資産運用のための投資にはさまざまな方法がありますが、今回の相談者のように投資信託をメインにしている方が、インフレや戦争を目の前にして初めて感じる怖さは納得できます。今回は投資信託を運用している方の、一時的な資金の回避について考えたいと思います。あくまでも「私だったらどうするのか?」という視点ですが、参考にしてみてください。

つみたてNISAは購入の減額かストップ。解約はしない

つみたてNISAなどで積立投資をされている方は、もともと「ドルコスト平均法」の効果で、リスク分散を図りながらの運用ができています。ドルコスト平均法とは、一定の金額で、かつ時期を分散して、定期的に買い続ける手法です。日々の変動に一喜一憂することなく、長期運用が前提であれば投資タイミングもあまりシビアに考えずにできるのが積立投資のメリットです。

積立投資は購入金額を固定するため、投資信託の価格が上昇している場合は購入口数が少なくなり、高値づかみを回避できます。一括購入で高値づかみをした場合のダメージは計り知れません。積立投資は値動きに上げ下げの波がはっきりする場合に強みを発揮できます。ただ、下落した後の上昇相場であれば有利なのですが、下落相場が長引く場合は、当然パフォーマンスは良くなりません。

下り坂
しばらく下り坂が続くような相場では、積立投資を続けても収支がプラスになるまで時間がかかることがある

今回のケースでは、戦争状態が長引いてしまい、株価も下落相場が長期間続くと仮定するならば、マイナス回避のためにすることは、つみたてNISAの購入金額の減額、あるいは一時ストップ。これで十分でしょう。絶対に利益確定の解約はしてはいけません。せっかく、今まで株価の上げ下げの中で投資信託の積み立てを続けて、ドルコスト平均法の効果を得られたのに、それを持ち続けずに解約してしまうのは、大きな損をするのと同じことになります。

解約して別の商品を買えばいいと思うかもしれませんが、それはできません。つみたてNISAは年間40万円までの非課税投資枠がありますが、解約しても非課税投資枠は復活しません。購入した投資信託はそのまま持ち続けてほっといて、最大20年間の非課税期間を最大限利用して、先々の楽しみのために取っておきましょう。

また、投資信託をつみたてNISAではなく、まとめて一括で購入した方は、下落相場が長く続くと厳しくなりますので、今すぐお金を使う用途があれば、一部解約して損を確定するしかありません。余談ですが、解約といっても証券口座までも解約しないでくださいね。以前、せっかく時間をかけて口座を開設したのに、下落して腹を立てて全部解約した方がいたものですから……(笑)。

iDeCoでは資産配分の変更とスイッチングで対応

またiDeCoの場合は、つみたてNISAと同じようにドルコスト平均法の効果が得られる積立投資になりますが、税制優遇がある老後資金のための積立制度ですから、脱退(解約)や一部引き出しは原則できません。
iDeCoで資金を一時的に回避するには、資産配分(アセットアロケーション)の割合を変更するか、スイッチング(預け替え)と言って、投資信託の一部を解約して元本確保型などの別商品を買うことになります。それぞれを同時に変更することもできます。

私も先月、戦争勃発時にiDeCoのスイッチングを行いました。インデックス型の投資信託を一部解約して、元本保証商品の追加購入に充てました。
そして、新しいアセットアロケーションに変更しました。「国内株式インデックス型60%、バランス型30%、元本確保型商品10%」から、「国内株式インデックス型35%、バランス型30%、元本確保型商品35%」への変更です。

要は、これまで株式型商品の運用で得た利益の一部を元本確保型に移行させて、リスクを軽減させたということです。理由はズバリ年齢で、昨年60歳を迎え、積み立ても終了したこと(ただし5月から再積立開始予定)と、経済状況の不透明感が増したことから、値下がりのリスクを抑えた短期型運用に少しシフト変更してみたのです。

直近でも私のもとにiDeCoの相談がありました。相談者はまだ若く、アセットアロケーション配分を見たうえで、これから長い運用期間がありましたので、現状のままで慌てないでいきましょうね、とお話しさせていただきました。

iDeCoに限らず、資産運用に成功するポイントは「疑問を感じることができる理解力と、感じた疑問を相談できる環境」に凝縮されます。特に積立投資をしっぱなしのiDeCoではそれに加えて、スイッチングができるなどの利点も頭に入れておくべきだと思います。

相場の上げ下げの波はチャンスと思いましょう。特に長期で運用ができる方であれば、下落相場の今は原則として「買い」ですから、慌てずにほっといて、ただ挑めていればいいでしょう。

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