宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。世界の情勢が緊迫する中で、今回も初めて投資信託を検討する投資初心者のために、リスク度という観点で投資信託を比較してみます。

  • 戦争は経済に打撃を与えるが、人がいる限り経済の成長は止まらない
  • リスク度を考えて、投資初心者にはMMFが多めの配分を提案
  • 利上げ局面でMMFは金利の上昇が期待でき、株価下落のヘッジにもなりうる

ロシアでは激しいインフレへの懸念も

【質問】
まさか!ロシアによる戦争が始まっちゃいました。狂犬的な独裁者には腹が立ちます。投資信託を買おうと思っていた矢先の戦争に困惑しています。知人は「今は下がっているから買わない方がいいよ」と言いますが、本当はどうでしょうか? 今、やるべきことを教えてください。

いや~参りました。一方的な力による戦火には、到底納得できるものではありません。全世界を巻き込む紛争になるかもしれませんが、一人の暴君による「命を軽視する行為」には、はっきりとした行動で意志表示を示す必要があります。

水への投資 世界的に不可欠な資源への投資機会 BNPパリバ・アセットマネジメント

インフレリスクは予想されていたのですが、投資でいう「地政学リスク」が勃発したのですから、日本の投資家にとっても身構えるのは当然のことでしょう。ロシアでは通貨ルーブルが急落となり、これから利上げを断続的にしなければならないのは明白です。インフレ抑制のための利上げが物価に追いつけず、インフレ率の悪化(ハイパーインフレ)で、ロシアの市民生活が最悪の状況になることもありえます。

紛争リスクが世界経済に大打撃となり、日本にも多大な影響が出てくるのは避けられません。今回の相談者のように不安を感じて、投資の意欲が激減するのは普通のことです。
そこで、仮に投資できるお金が100万円あったとして、こんなときに投資信託を買ってもいいのか? 購入するなら何を買うのか?

戦乱からの株価の回復は早かった

今回は、リスク度を基準にした投資信託の購入方法を考えます。
前回に続いて、主に日本株式に投資する、それぞれ特性が異なる5種類の投資信託を比較して、最善の買い方を具体的に考えていきます。そして、今回は米国で利上げがある可能性を考えて、債券型MMF(マネー・マーケット・ファンド)1商品を追加しています。
なお、6つの商品の選別に際しては、私自身で投資をしているものや、これから運用を考えているものを選んでいます。決して推奨しているものではありませんのでご了承ください。

「どこで買うか」で手数料が変わる投資信託

前回までと同じく、パッシブ運用のインデックス型(日経平均株価連動)1商品と、ファンドマネージャーが運用するアクティブ運用型を3商品、バランス運用型1商品、そしてMMFのそれぞれの特徴をつかんでいきます。今回は、投資信託評価会社のモーニングスターによるリスクメジャー(基準価額の変動リスクを示した値。低い方から1~5の数字で示す)を参考にしていただきます。

投資信託名 種別 リスク
メジャー
購入
手数料
信託報酬 設定日 運用会社
たわらノーロード
日経225
インデックス型 3 0 0.187% 2015/12/7 アセット
マネジメントOne
ひふみ投信 アクティブ型 3 0 1.078% 2008/9/30 レオス・
キャピタルワークス
さわかみファンド アクティブ型 3 0 1.100% 1999/8/24 さわかみ投信
損保ジャパン・
グリーン・オープン
「愛称:ぶなの森」
アクティブ型 4 3.3% 1.650% 1999/9/30 SOMPOアセット
マネジメント
MHAMスリーウェイ
オープン
バランス型 1 1.1% 0.935% 1993/11/26 アセット
マネジメントOne
外貨建てMMF
(米ドル建て)
0 0.91%
(上限)
1992/1/17 日興アセット
マネジメント

※手数料は税込み。購入手数料は上限(実際の手数料は販売会社により異なります)。データは2022年3月3日時点

ここで相談者からの質問に答えていきます。戦争状態の中で、投資信託というリスク商品を購入してもいいのか?という質問ですが、人間がいる限り、経済はなくなることはありません。成長を抑止することもできません。発展あるのみです。

過去の戦争の例では、2001年の米国同時多発テロ、2002年のイラク戦争勃発など株価が一時的に暴落をたどったこともありますが、翌年には回復に向かっています。逆に、戦争とは関係ない2007年のサブプライムローン問題、2008年のリーマン・ショックのような金融関連の事件の方が、株価へのダメージが長引いています。
今回の下げは、長い眼でみれば、投資妙味がある商品を安く買える機会であると思っていいはずです。

利上げの恩恵が得られるMMFは株安への対策にもなる

以上のことをふまえて、現金100万円をどのように投資信託に振り分ければいいかをイメージしていきます。あまり現実的ではないかもしれませんが、6商品全て購入する場合でどうなるかを仮定してみました。投資経験者向けと初心者向けの2通りのパターンです。

6本の投資信託の振り分け

経験者と初心者の大きな違いは⑥MMFです。米ドル建てMMFは、株式を一切組み入れない投資信託の一種です。米国の短期の国債、優良社債などで運用され、安定して利息を確保しています。米ドルベースでの元本割れは絶対ないとは言えませんが、心配する必要はないと思います。

MMFは毎日、運用実績に応じて分配され、月の分配金を月末にまとめて元本に再投資するので、複利運用にもなります。コストは日々負担する管理報酬のみ。上記商品も、2022年3月1日現在で直近7日間の平均利回りは0.146%(課税前)という分配実績です。MMFにはリスクメジャーはありませんが、評価するとしたら1(限りなく低い)となるでしょうか。初心者は低リスクのMMFの割合が大きい分、リスク度が高い株式型の商品(①~④)の割合は小さくなります。

米ドル建てMMFについて注目したいのは、何と言っても米国の利上げ政策でしょう。米国がこれまで続けてきたゼロ金利政策は、インフレの抑制のために終わりを迎えます。米国が利上げを行えば、米ドル建ての短期金融商品の金利は上昇することになります。利上げは長期金利の上昇につながり、債券価格は下がります。

そして金利が上がれば、株価にとっては下げの要因になります。この先、米国で利上げが続けば、株式は下げ相場になるでしょう。MMFは株式の下落へのリスクヘッジになり、なおかつ為替益も期待できます。投資初心者には安定して収益を望める商品として、経験者にも預金に代わる現金の預け先としてMMFは有望といえそうですね。

今回のような地政学リスクは世界経済の根幹を揺るがす事態ですが、このような事態であるからこそ、皆で経済を支える必要があります。少しでも早く戦争が終息しますように願うばかりです。

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