投資をしていると、普段聞きなれない言葉を耳にする機会がよくあります。自分が投資している資産や、投資を検討している金融商品のことを理解するには、そうした聞きなれない言葉の意味も理解しておいたほうがいいでしょう。今回は、投資信託(ファンド)などのレポートでよく見かける「騰落率」について解説します。

  • 騰落率を確認することで、ある期間におけるファンドの損益を知ることができる
  • ある期間の最初と最後の結果を示すものであり、期間中の値動きはわからない
  • 騰落率が低いからといってそのファンドのリスクが低いわけではない

投資信託の騰落率とは何か

投資信託の騰落率とは、そのファンドが一定の期間にどれくらい値動きしたかを確認するときの指標です。騰落率を見ることで、その期間におけるファンドの損益がわかります。

ファンドの騰落率は、基準価額の変動と分配金の支払いを合わせたもので、騰落率のことを「トータルリターン」、もしくは単に「リターン」と呼ぶこともあります。通常は、投資信託の基準価額に、税引き前の分配金をすべて再投資したと仮定して加えた「分配金再投資基準価額」をもとに騰落率を算出します(以下、分配金再投資基準価額のことを単に「基準価額」と呼びます)。

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例えば、基準価額10,000円のファンドが、設定から半年後に10,500円になっていた場合、5%の上昇で、半年間の騰落率は5%となります。

この場合の計算式は、
(10,500-10,000) ÷ 10,000 × 100 = 5%
です。

一方、基準価額が10,000円から9,500円に値下がりした場合は、
(9,500-10,000) ÷ 10,000 × 100 = -5%
となり、騰落率は-5%です。

騰落率は一定期間の値上がりや値下がりを示すものなので、同じファンドでも計る期間が異なれば、騰落率はまったく異なる結果になります。

実際にファンドの騰落率を見てみる

① eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)

騰落率は、運用会社のホームページなどで確認できます。
例えば、個人投資家に人気の『eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)』の騰落率を、三菱UFJ国際投信のファンド情報ページで見てみましょう。

基準価額のチャートという機能で、期間を自由に設定しながら同ファンドの騰落率を確認することができます。下図のように、2022年初来~3月末時点の騰落率は2.03%ですが、設定来(2018年7月3日)~2022年3月末では、96.08%という高い騰落率になったことがわかります。直近のパフォーマンスは小幅なプラスにとどまっていますが、設定来では2倍近いリターンになっているのです。

■『eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)』の2018年7月3日~2022年3月31日の騰落率
eMAXIS Slim 米国株式設定来パフォーマンス
出所:三菱UFJ国際投信ホームページ

今度は期間を変更してみましょう。例えば、直近1年間の騰落率は2022年3月末時点で約29.99%。コロナショック直後の2020年3月17日につけた最安値から2022年3月末で確認するとなんと127.00%だったことがわかります(下図参照)。

■『eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)』の2020年3月17日~2022年3月31日の騰落率
eMAXIS Slim 米国コロナショック以降のパフォーマンス
出所:三菱UFJ国際投信ホームページ

② ひふみ投信

次にもう少し運用実績の長いファンドで見てみましょう。
例えば、『ひふみ投信』の「1カ月前」「3カ月前」「6カ月前」「1年前」「3年前」「設定来」の騰落率は、同ファンドを運用するレオス・キャピタルワークスのサイトで確認できます。

『ひふみ投信』は、2008年10月1日に設定されたロングセラーのファンドです。日本株式を中心に厳選して投資しており、長期的に高いリターンを目指しています。
2022年3月末時点で、3カ月前、6カ月前、1年前からの運用実績はマイナスとなっていますが、設定来の騰落率は、2022年3月末時点で468.21%という驚異的なパフォーマンスをあげています。

■『ひふみ投信』の2022年3月末時点の騰落率
ひふみ投信のパフォーマンス
出所:レオス・キャピタルワークスホームページ

長期の資産形成に耐えうるような運用方針の投資信託であれば、直近のマイナスをそれほど気にせず、長期の騰落率に注目するという考え方が成り立ちます。逆に短期間で収益を上げたい場合は、直近の騰落率が参考になるでしょう。
このように騰落率は投資信託の選定において、非常に役に立つ指標なのです。

騰落率の注意点

騰落率を確認するときに注意したいのは、騰落率はあくまで、期間中の最初と最後の結果を示しているに過ぎないということです。

例えば、先ほどご紹介した『eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)』は、設定来~2022年3月末の騰落率は96.08%と好成績を残していますが、実は2020年3月にコロナショックにより、大きな下落を経験しています。『ひふみ投信』も同時期に大きく下げています。

先ほどの『eMAXIS』の図に表示された基準価額のチャートを見ていただければおわかりの通り、2020年3月頃に大きな下落を経験しています。しかし、期間の初めと終わりの分配金再投資基準価額のみで算出する騰落率だけでは、値動きの過程がわかりません。

そのため、騰落率が低いからといって、投資信託自体の値動き(=リスク)が小さいとは限りません。集計期間の最初と最後の基準価額が近かっただけで、途中で大きく値動きをしている可能性もあります。

騰落率は投資信託の過去の運用成果を知るために大切な指標です。しかし、騰落率はある一定期間の結果にすぎませんし、将来を約束するものでもありません。やはりそのファンドの投資哲学や投資銘柄なども併せて確認する必要がありますし、同じ資産に投資するほかの投資信託や、ベンチマークである市場平均と比較することも大切です。

騰落率の言葉の意味をしっかり理解したうえで、ほかの指標も見ながら、ファンド選びの参考の一つとして活用することが肝心です。

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