アメリカではインフレが続いており、FRBは利上げを決定しました。利上げが行われれば株価が下落するといわれており、実際にNYダウは直近の半年間で1割以上の下落となりました。確かに利上げ後は一時的に株価が下落しやすいですが、長期的視点に立つと見え方は変わってきます。金利と株価の関係について詳しく探ってみましょう。

  • アメリカの物価上昇は40年ぶりの水準。抑制のためにFRBが利上げを加速
  • 金利が上がると、企業の借り入れや設備投資が減るなど経済活動が抑制される
  • 利上げは経済の正常化に伴う場合が多いため、長期的には株価の成長が期待できる

アメリカがインフレ抑制のため利上げを決定

景気停滞が続く日本とは対照的に、アメリカは好景気が続いています。景気が良ければ緩やかなインフレが起こるものですが、アメリカのインフレは近年過熱気味ともいえる水準です。2022年3月の消費者物価指数の上昇率が40年ぶりの高い水準となったことからも、そのすごさが分かるでしょう。

この状況を受けて、アメリカの中央銀行FRBは2022年3月以降に利上げを行うと発表しました。5月には政策金利を0.5%上げることを決めるなど、利上げのペースを加速させています。FRBの使命のひとつは物価の安定であり、利上げによって急激な物価上昇を抑制に動いた形です。

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アメリカはコロナ禍の影響もあってゼロ金利政策をとっていましたが、利上げを行うのは大きな政策転換です。今後もしばらく利上げの方針が続くことが想定されています。

利上げになると株価が下がると聞いたことがある人も多いと思います。実際にアメリカの株価は下落傾向にあり、2022年1月には3万6000ドル台後半だったNYダウは、5月9日時点で3万2000ドル台前半まで落ち込んでいます。NYダウはこの半年弱で、1割以上の下落となったのです(図表1)。

【図表1】2022年1月~5月9日のNYダウの推移(日足、終値)
2022年1月~5月9日のNYダウの推移(日足、終値)
出所:市場データを元にMonJa作成

しかし、長期的に見れば利上げは必ずしも株価にマイナスの作用を与え続けるとは限りません。ここからは利上げの影響と、利上げ後の長期的な値動きの傾向について詳しく見ていきましょう。

利上げは経済活動を抑制し、株価下落の要因になりうる

利上げとは、国の中央銀行が政策金利を引き上げて、市場金利が上昇するように働きかけることを指します。

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金利が上がると企業は銀行からの借り入れをしづらくなり、設備投資を縮小するようになります。個人も金利上昇により住宅ローンや自動車ローンを組みにくくなり、高額商品の購入を後回しにします。企業の成長が鈍化すれば賃金の伸びが低迷し、消費を抑制せざるを得ない人も出てくるでしょう。このように、利上げによって経済活動は抑制の方向に動いていきます。経済活動が抑制されれば、物価の上昇も止まるというわけです。

しかし、利上げのスピードや幅が大きすぎると、インフレ抑制を通り越して不景気を招いてしまうことがあります。そうならないために、中央銀行は景気動向を慎重にチェックしながら利上げを行います。

今回のアメリカのインフレの原因は、需要の増加か原材料費の高騰か、はっきり断定することができません。ウクライナ情勢への不安から、世界経済全体が不安定になっている影響もあるでしょう。これらの理由から、アメリカはこれまでの利上げ局面以上に、慎重な舵取りで利上げが行われていくことになりそうです。

経済活動が抑制されると、株価はいったん下落の方向に動きます。実際に、FRBなど主要国の中央銀行が発表する政策金利の動向によって、翌日の株価が大きく動くことは珍しくありません。今年3月のFRBの利上げ発表でも、一時的に株価が落ち込むような動きが見られました。

利上げ後は短期的に株価が下落しやすいため、個別株などで短期的な投資を行っている投資家は、利上げ後の値動きに十分な注意が必要です。

景気が良ければ、株価の下落は長続きしにくい

利上げ発表直後は株価が下落に動きやすく、利上げは株価にとってマイナス要素と考えられがちです。しかし、そもそも利上げを行う局面は景気拡大期が多く、長期的な不安材料にはならないという考え方が主流です。

景気が底堅ければ株価の下落は一時的なものにとどまり、その後は再び株価の上昇が期待されます。実際に、過去のアメリカの利上げ局面では利上げが始まってからもしばらく株価の上昇が続きました(図表2)。

【図表2】米国の政策金利(FF金利)誘導目標とNYダウの推移(日足、終値)
米国の政策金利(FF金利)誘導目標とNYダウの推移
※FF金利誘導目標は、2008年12月15日以降は上限値
出所:市場データをもとにMonJa作成

今回のアメリカの利上げは、コロナ禍を乗り切り、経済が正常化に向かう局面で行われるものです。FRBはアメリカ経済が当面は継続的に成長すると見込んでいるため、株式投資においてはむしろプラス要素と考えていいかもしれません。株式や投資信託を長期で運用する投資家にとっては、利上げが行われるからといって、あわてて何かする必要はありません。落ち着いて様子を見守るのが得策といえるでしょう。

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