住宅購入の際、併せて火災保険に加入する人が多いと思います。火災保険の保険料値上がりなどの動きがある中、保険料をなんとか抑えるために、「水災補償を外せないか」と考えることもあるかもしれません。今回は、火災保険の水災補償の概要と必要性を考えてみましょう。

  • 水災補償は、火災保険に付帯するタイプが多くなっている
  • 水災を意識していない人は多く、水災補償に加入しているのは少数派
  • 大切な住居と家財のもしもに備えるため、自助の方法も検討したい

火災保険に付帯できる水災補償の内容

水災補償とは、洪水や土砂崩れといった水災により住宅や家財に一定の損害が出た場合に、保険金を受け取れる補償です。

一般的に、建物や家財に再調達価額(同程度のものを建てたり購入したりするのにかかる金額。「新価」などの言い方をすることもあります)の30%以上の損害を受けた場合や、床上・地盤面から45㎝以上の浸水で損害が発生した場合に補償を受けられます。ただし、地震による津波などは、地震保険での補償になり、水災補償では対象外です(地震保険についてはこちらの記事で解説しています)。

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火災保険の中には免責金額(この金額までは自己負担をするので補償は受けない、という金額)を設定しているものもあり、その場合は水災補償についても免責金額が適用されます。

■火災保険の一例
保険会社 保険商品 概要
東京海上日動 トータルアシスト
住まいの保険
(火災保険)
充実タイプ・スタンダードタイプ(破損等
補償なし)・マンション向けタイプ(水災
補償なし)の3タイプ。WEB証券で申し込む
と保険会社が防災・減災の取り組みに寄付
を行う。
ソニー損保 ソニー損保の
新ネット火災保険
火災等の補償以外は必要なものを選択して
セットできる。自動車保険・医療保険の加
入者は保険料割引あり(最大1,000円)。
楽天損保 ホームアシスト
(家庭総合保険)
火災等・風災等の補償をベースに必要な補償
を選択できる。保険料支払いで楽天ポイント
が貯まる。また、ポイントでの保険料支払い
も可能。

日本では大雨が頻発、水害の増加が懸念される

水災補償は、火災保険の基本となる火災の補償にプラスして、付帯するかどうかを選択できるタイプが多くなっています。そのため、補償が必要かどうか悩む人もいるようです。

平成27年度に行われた内閣府政府広報室「水害に対する備えに関する世論調査」の概要によると、約52%の人が水害について「今後10年以内に被害を受ける可能性はないと思う」と回答しています。水災補償についても、建物または家財を対象とした保険に加入している人は31.1%にとどまり、半数以上の人は補償がない、または補償があるかどうかが分からないという、水災補償を意識していない人が多い現状がうかがえます。

一方で、日本では年々大雨の発生回数が増加しており、水害が頻発する懸念があります。国土交通省「水害レポート2021」によると、時間雨量50mmを超える短時間降雨の発生件数は増加傾向にあり、全国で総雨量1,000mmを超える大雨の発生とそれによる大規模な水害が令和に入って以降、毎年発生しています。

また、都市部の住宅地でも水害が発生することがあります。都市部では、降雨量に対して下水などの排水機能が追い付かないため浸水が発生する内水氾濫が多くなっており、「都市型水害」と呼ばれ警戒されています。

行政もポンプ場の整備などハード面の対策を進めていますが、思わぬ被害を受ける可能性はゼロではありません。

都市型水害のイメージ
都市部では、降雨量に対して排水機能が追い付かないため浸水が発生する内水氾濫が増加している

大きな被害が出る可能性も考えて補償の選択を

家や家財は購入に大きな金額がかかる分、被害が出た際の負担も大きくなってしまいます。損保協会が公開している「令和3年7月1日からの大雨」での火災保険による支払保険金(見込含む)を見てみると、証券件数1件あたり約120万円の支払いが発生しています。

貯金があれば大丈夫、と思うかもしれませんが、さらに大きな損害が出ることも考えられます。自宅を見回してみて、家財の総額がいくらになるのか、それらが故障などした場合に貯金でまかなえるか、さらにそこに住宅の修繕費用がプラスされたら……と、簡単にでも思い浮かべてみましょう。もしも不安があるようでしたら、大切な住居と家財のもしもに備えるための「自助」の方法を検討してみてください。

これから住宅の購入を検討している方も、火災保険には入っているけれど水災補償を付けていない方も、改めてその必要性について考えてみてはいかがでしょうか。

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