テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家が700人以上所属する日本放送作家協会(放作協)がお送りする豪華リレーエッセイ。ヒット番組を担当する売れっ子作家から放送業界の裏を知り尽くす重鎮作家、目覚ましい活躍をみせる若手作家まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜く放送作家&脚本家たちのユニークかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず! 
連載第153回は、脚本に小説にと大活躍の源祥子さん。

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白蛇と見つめ合った私

源祥子さんの写真源祥子
脚本家、小説家、コピーライター
日本放送作家協会会員

白い蛇を見た。
あれはいくつの頃だったろう、7歳か8歳か……。
私は実家の茶の間にいた。
テレビを見ていたのか、宿題をしていたのか──日はまだ高かった。
ふっと何の気なしに庭を見たら、長く大きな白蛇が頭をもたげて真っ黒な目でこちらをじっと見ているではないか。

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うちは4人きょうだいで、常に誰か人がいるわちゃわちゃとした家族だったのにも関わらず、その場に白蛇と私しかいなかったのはいま思うと少し不思議ではある。
なんせ50年近い昔の話であるので詳細は思い出せない。
が、庭の緑の中で真っ白な体がまるでパァっと光を放っているようで美しかったこと。同時に庭と茶の間の間にあるガラス戸は閉まっていたものの、やはり「こっちに来たらどうしよう……」という恐怖を感じたことはぼんやりと覚えている。
まさに蛇に睨まれた蛙状態で固まってしまった私。
どれぐらい見合っていたのか……どちらが先に目をそらしたのかはわからない。
大阪にある実家の隣は、緑豊かな相当広い公園だ。
そのせいか実家ではしょっちゅう蛇を目にしたが、白蛇はその1度きり。
私以外の家族の誰も見たことはないという。

と、そんな昔話をなぜか思い出して先日友達に話したら「白い蛇見たらお金持ちになるっていうよね」と言われた。
たしかに蛇皮の財布が金運にいいという話は有名だし、抜け殻を見つけたら財布に入れておくというのも昔はよく聞いた話だ(いまもやっている人っているのだろうか)。
中でも白蛇を見た人は金運が超強運。
ネットでちょっと検索してみたらそんな情報もある。

ちなみに「蛇は金運の象徴」というのは日本だけではなく、中国でも同じらしい(中国人の友達談)。
中国では蛇のほかに、蛙も金運の象徴。
また、「一生食いっぱぐれない」の意味を込めてねずみのモチーフを好む人もいるそうだ。「なぜ、ねずみ?」と問うてみたら、「米びつの中にねずみが入って米を食べるじゃないですか」と言われた。

ちょっと想像したくない状況だったのでそこを深堀るのはやめておいた。
とにもかくにも蛇を象った世界的に有名なイタリアブランドのジュエリーもあることだし、きっと全世界的に「蛇=金運」なのだろう。

居間から見た庭のイメージ実家の茶の間から、ふと何気なしに庭を見たら……(写真はイメージです)

ギリギリでもなんとかなる金運

蛇の中でも金運マックスの白い蛇と見つめ合った。
そんな体験をしたから私だからこそ、いま胸を張っていいたい。
白蛇見たらお金持ちになれるっていう話な、それ完全に迷信やで」と。
いや、そういいたくもなるではないか。

フリーのライターとなって20年以上経つが、収入はずっと高くない
もっと正直にいうならば、低い。
20年ほど前に会社員だったことが数年間あるのだが、その頃の方が年収が高いという切なさよ……。
それでも、ほとんど知り合いもクライアントもいない東京に11年前にふらりとひとりで出てきて、すべての物価が恐ろしいほど高いこの街でなんとか生き延びている。
これはやはり「ギリギリでもなんとかなる金運」とでも呼びたくなるようなビミョーな金運を、幼き日に白蛇様から授かったからなのかもしれない。

しかも、「小さい頃にな、白蛇見たことあるねんで」と友達に話をしたその翌日、このエッセイの依頼をいただいた
やはり、やはり、そうなのかも! 
お洋服や靴やバッグに目がなく、無理してでもお金を遣ってしまうこの性格。
きっと白蛇様は幼い私を見て瞬時に見抜いたのだろう。
だからあの日「ここで見つめ合ったのもなにかの縁。貧乏で死なない程度のギリギリの金運を、そなたに授けよう」と念じてくれたのではないだろうか。

白蛇のイメージ

ビミョーな金運を、幼き日に白蛇様から授かった……

独身・子なし、根無し草で能天気な私であるが、フリーランスでいつまで生きていけるのかさすがに不安はセロではない。
だって、最近はインボイス制度なんてものもできちゃいましたしね。
物価も上がり続けてますしね。
生きにくいったらありゃしない。

10年ほど前、フリーランス業の先輩方からは「50歳を過ぎたら、フリーはとたんに仕事がこなくなるよ。50歳の壁は高いよ。見切りをつけてどっかに就職した方がいいかもよ」と脅かされ続けていた。
が、おかげさまでその壁はなんとか超えられた。

でも60歳の壁はどうなんだろう
さすがに相当高そうではあるが……。
とはいえ最近はもう「いざとなったら違う仕事をすればええやんか」という開き直りもできるようになった。

どっかまた次の新しい街にふらりと流れていくのもいい。
なんといっても私には白蛇様が与えてくれた「ギリギリなんとかなる金運」がある。
きっとある。
そう、人生ではなんでも強く念じて、それを信じることが大切なのだと自分を励ますこの頃なのである。

次回は旺季志ずかさんへ、バトンタッチ!

ぜひ、聴いてください!

脚本を担当しております、九州朝日放送さんのラジオドラマ『下町ロケット ヤタガラス編』が現在放送中です。
主演の佃航平には俳優の岸谷五朗さん、財前道生には平山祐介さん、野木博文には西村まさ彦さんという豪華キャスト! ぜひお聴きください。

ラジオドラマ『下町ロケット ヤタガラス編』の視聴はこちらから

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