資産形成の近道は小型株にあり──。「小型株集中投資」を実践する気鋭の投資家・遠藤洋さんに、今からでも始められる小型株投資の極意を教えていただく連載。第18回は、急激に進行する円安に対して、個人投資家がどう対応すべきかについて語ります。
昔は「お金持ち」だった日本も今は……
今年に入って円安が急激に進みました。過去十数年を振り返っても、これだけの短期間で一気に円安が進むことはなかったと思います。
過去の為替相場を振り返ると、世界で何か大きな問題が起きると円高に動く傾向がありました。「有事の円」という言葉もありますが、金融危機や戦争が起きると円が買われやすくなりました。それが今では逆になっていて、ウクライナ問題が起きてから為替は円安が進んでいます。
僕は最近までヨーロッパなどを旅行していたのですが、僕が訪れたモナコやドバイはタックスヘイブンと呼ばれる税金が安い国で、世界中のお金持ちが集まっています。港へ行けばプライベートのヨットが並んでいて、街ではフェラーリやランボルギーニなどの高級車がたくさん走っていました。
昔の日本も、海外から見れば「お金持ち」の国でした。ひと昔前までは日本人がアジアに旅行へ行って、物価が安いからといってモノを大量に買って帰るような時代でした。今はその逆のことが起きています。コロナが流行する直前まで、たくさんの外国人が「日本は安い」ということで、日本に来て旅行を楽しんでいました。海外からの「インバウンド消費」を増やすために、日本も国を挙げて対応しました。
こうして今のヨーロッパと日本を比べてみると、日本の経済力が相対的に落ちているように見えます。今の状況を考えると、国際情勢が悪化したときに、円高ではなく円安になる流れも自然であるように思います。
今後もしばらく円安が続きそうだということを踏まえたうえで、個人投資家はこの先どう対応すればいいのでしょうか。
円安で伸びる輸出型企業の多くは大型株
個人投資家にとっては、為替が円安か円高か、それ自体が問題になるわけではありません。仮に今後円安に進むことがわかっているのであれば、円安になるほどもうかる会社に投資すればいいし、円高が進むほどもうかる会社もあります。そういう会社や業界を見つけて投資をしていくことが、円安や円高への基本的な対応となります。
円安で業績が伸びやすい会社は、ひとことで言うと「輸出の割合が高い会社」です。日本国内で作って海外に売るビジネスモデルですね。「外貨を稼げる会社」と言い替えてもいいと思います。わかりやすい例を挙げるならトヨタ自動車でしょうか。
ただ注意しなければいけないのは、円安で会社の利益が増えたとしても、それが必ずしも会社の成長によるものとは限らないことです。たとえば商品を売ったときの日本円での利益が円安で110円から130円に増えたとしても、海外ではどちらも同じ1ドルの利益にすぎません。
問題は、今の時点で円安が有利に働く輸出型の会社は、トヨタのような大企業、大型株が多いことです。僕が注目している小型株には、輸出で稼ぐタイプの会社は多くありません。小型株のほとんどは、日本国内でビジネスをしている会社です。
円安で小型株にもチャンスが来るか?
日本国内の会社は、今は円安や円高はそれほど業績に関係ないかもしれませんが、コロナの規制が解除されて、円安目当てで日本に来る外国人観光客が増えれば、ホテルや飲食店、小売店の需要は回復すると思います。僕がヨーロッパへ行ったときにはもう、PCR検査をしている国はほとんどありませんでした。日本の規制が今後どうなるかはわかりませんが、規制が緩くなれば、円安のメリットを得られる小型株も出てくるかもしれません。
会社の業績は人々の行動で決まります。人がどこでどうお金を使うかが、会社の利益につながり、時価総額に影響します。今後コロナがどうなるか、円安が続くかどうかで、人の行動がどのように変化するかを想像することが、投資先を探すヒントになると思います。
世の中の波にうまく乗って、タイミング良く適切な会社を選ぶことができれば、投資金額が短期間で2倍、3倍になるのが個別株、小型株投資のおもしろさです。