宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は、「使えるお金が減っている」と嘆く男性会社員を対象に、毎月の給与から税金や保険料がどのように引かれているか、給与の仕組みと将来のリスクについて説明します。

  • デフレが続き、給料がなかなか増えない中で、最近の物価高が家計を悩ませている
  • 給与の総支給額から税金や保険料を引いたのが、実際に使えるお金(手取額)
  • 年々上がり続ける税金や保険料を「給料の抱えるリスク」として認識する

給料が増えないまま、急な物価高が家計を直撃

【質問】
毎年じゃけど、新年度になるたびに給与明細を見るのが怖くなります。使えるお金が減っている気がするわ。お昼はワンコインで済ましています。お金が減ってると思うのは僕の錯覚なんでしょうか?

これって切実ですよね。錯覚ではありません。確かに減っています。お給料が働いても働いても増えていかない。長くデフレ経済が続いた日本で、給与が増えないのは仕事が減っているから、仕方ないと諦めていませんか? さらに、ここにきての記録的な物価高が、使えるお金が減っていくことに拍車をかけています。直近、食品だけの値上げでも、平均して15%を軽く超えてきています。

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ここ3年のコロナショックもあり、外でお金を使う機会がめっきり減っている今日で、家計を見直したいと考える方が増えました。「これでいいの?」「しょうがないの?」といった気持ちが、家計の改善につながっていくと思います。給与が増えるには、デフレに慣れてしまった日本経済の建て直しや、企業の努力による働く環境の改善が必要なので厳しいと言わざるを得ないのですが、別の観点からすると、そうともいえないことに気づかされます。

今回の相談者は男性で、30代の妻と子ども一人の共働き家族です。生活する費用は上がっていく一方なのに、給料は上がっていません。相談者にとっては、お小遣いが増えないなど切実な問題が山積みです。家庭内で本人の待遇がこれでは、教育費など家族の生活に必要なお金を作ることができません。少子化に歯止めがかからないのは当たり前です。そこで今回から何回かに分けて、給料の仕組みと「給料の抱えるリスク」、「給料の中で使えるお金」を考察していきます。少しでも不安要素を払拭できればありがたいです。

給与の総支給額から税金や保険料を引いたのが手取額

まずは、給料の仕組み。給与は、いくらもらえるのか? ベースは「基本給」で決まります。給与の計算方法を、宮崎県の一般事業所を例に説明します。

【図表】実際にもらえる給与の例
給与 ①基本給 200,000
②時間外手当(残業代) 14,000
③通勤手当(交通費) 15,000
④総支給額(①+②+③) 229,000
保険料 ⑤雇用保険料※1 1,374
⑥健康保険料※2 11,154
⑦厚生年金保険料※2 20,130
⑧保険料合計(⑤+⑥+⑦) 32,658
税金 ⑨所得税※3 2,500
⑩住民税※4 4,000
⑪税金合計(⑨+⑩) 6,500
手取額(④-⑧-⑪) 189,842

※1 厚生労働省「令和5年度の雇用保険料率」(④の0.6%に該当)
※2 協会けんぽ「令和4年度保険料額表」(宮崎県、報酬月額210,000~230,000円の場合)
※3 国税庁「令和4年分 源泉徴収税額表」(社会保険料控除後の給与等の金額(④-③-⑧)181,342円の場合)
※4 収入に基づく概算

仮に①基本給200,000円として、残業したら②時間外手当が追加されます。時間外手当が14,000円とすると、課税される支給額は214,000円となります。そして③通勤手当があり、仮に15,000円だとすると、④総支給額は229,000円です。通勤手当は一定額まで非課税ですが、雇用保険料の対象には含まれます。

ここから、強制的に差し引かれる税金と保険料の控除(⑤雇用保険料1,374円、⑥健康保険料11,154円、⑦厚生年金保険料20,130円)が発生します。総支給額229,000円から控除額(⑧保険料合計)32,658円と、③通勤手当(非課税分)15,000円を差し引いたのが181,342円(社会保険料控除後の給与等の金額)で、ここから最終的に、どれだけ税金がかかるかが決まります。⑨所得税は、国税庁による給与所得の源泉徴収税額表にあてはめると2,500円。⑩住民税は4,000円(市町村で後ほど通知。ここでは4,000円と仮定)となって、確定されます。

そして最後に、総支給額229,000円から、支給控除(雇用保険料、健康保険料、厚生年金保険料、所得税、住民税)39,158円を引いて手取額が189,842円となり、使えるお金が確定します。どうですか? 法治国家といわれる日本ですが、今回のケースでは総支給額の約17%が税金や保険料となっています。

増税と社会保険料の増額が「給料の抱えるリスク」

日本では所得が高くなるほど課税額が増える累進課税なので、一人稼ぎよりは共働きで、所得を分散させる方法もありかもしれません。明細書をまざまざと見られる方は少ないでしょうが、主な非課税の収入は通勤手当ぐらいしかありませんので、終身雇用が見直されている現状でしたら、基本給を減らして通勤費に上乗せ(笑)とかありかもしれません。

両親と小さい子ども
ひとりの給与所得が増えると課税額が増えるため、夫婦で共働きをして所得を分散し、課税額を抑える方法も考えられる

健康保険料、厚生年金保険料については平成21年の14年前と比較しても、この会社員の例では健康保険料で2,134円、厚生年金保険料は2,856円のアップ、14年間で年59,880円の増額がされていることがわかります。雇用保険料に至っては、昨年9月までは687円なので、一気に2倍になっています。特に20年前から続く増税と社会保険料アップは、少子高齢化への対策が進まない限り、永遠に続くことになります。

単純に考えても、平成21年から14年間まで最低でも約840,000円も社会保険料などの増額分を払っています。14年間あれば、その半分にあたる420,000円の元手で、利回り5%で運用すれば倍になり、むしろ840,000円増やすこともできたと思うと、やるせない気持ちになります。さらに、40歳以上になったら介護保険料も上乗せされるのを忘れないでください。

このように、同じ給料をもらっても、使えるお金は減り続けていることを、「給料の抱えるリスク」として再認識しておきましょう。

次回は、次のステップとして「給料の中で使えるお金」を増やす工夫について考えていきます。

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