日本では「国民皆保険制度」により、国民全員が公的医療保険で保障されています。これにより、病院を受診した際などにかかる医療費は一部のみを負担すれば良い仕組みになっています。今回は、この公的医療保険の種類をご紹介します。
- 公的医療保険にはいくつかの種類があり、主に職業によって異なる
- 2022年10月には後期高齢者の自己負担割合が一部変更になる
- 退職・転職する場合には、自身で切り替え手続きをしなければならない
公的医療保険の仕組みと違い
公的医療保険とは、ケガや病気で病院を受診した時や、薬局で処方箋薬の受け取りをした時の医療費負担が軽減される仕組みです。一口に公的医療保険と言っても、いくつかの種類があり、主に職業によってその種類が異なります。
種類 | 運営 | 概要 |
---|---|---|
国民健康保険 | 自治体 | 自営業やフリーター、専業主婦(主夫)などが主に加入する。 保険料は前年の所得金額と世帯での加入人数、年齢を基準に算出される。 |
健康保険 | 健康保険組合・協会 | 会社員や船員など、企業や船舶で働く人とその扶養に入っている人が主に加入する。保険料は標準報酬月額(前年4月から6月の給与額平均)を基準に算出され、事業主と折半で支払う。 |
共済組合 | 共済組合 | 自治体職員や教職員など、公務員とその扶養に入っている人が加入する。保険料(掛金)は標準報酬月額にその年度の保険料率・掛金率を乗じて算出される。 |
後期高齢者医療制度 | 都道府県の後期高齢者医療広域連合 | 75歳以上の人や所定の障害状態に該当する65歳以上の希望者が加入する。保険料は所得に応じて決定する所得割額に均等割額を加えて算出される。 |
公的医療保険の保障内容は、医療費の自己負担軽減や医療費が高額になった場合の高額療養費制度など基本的な部分は共通しています。しかし、病気やケガで休業した場合に受け取れる傷病手当金や、出産時に受け取れる出産手当金や育児休業給付金など、健康保険・共済組合でしか受けられない保障もあります。詳しくは下記の記事でもご説明しております。
公的制度でもらえるお金は?~病気・ケガ編
公的制度でもらえるお金は?~出産・育児編
自己負担割合は年収や年齢によって異なる
公的医療保険により、病院などの窓口で支払う金額は軽減されます。この自己負担割合は年齢と収入により異なり、2022年6月現在の負担割合は以下の通りになっています。
また、2022年10月には75歳以上の後期高齢者の自己負担割合が一部変更になります。上記の「一般・低所得者」と「現役並み所得者」の区分に加えて、「一定以上の所得のある方」の区分が追加されます。どの区分に該当するかは、以下の条件で判定されます。
2割負担の対象に該当する場合も、2025年9月30日までは外来診療を受けた際の自己負担軽減措置があります。
退職をする場合は原則として保険の切り替え手続きが必要
普段はあまり意識しない公的医療保険ですが、気を付けたいのは退職や転職をする場合です。
健康保険に加入をしていて会社を退職する場合には、必ず自身で保険の切り替え手続きをしなくてはいけません。方法としては、お住まいの自治体役所で国民健康保険への加入手続きをするか、加入していた健康保険の任意継続被保険者制度を利用するかのいずれかになります。
任意継続被保険者制度は、健康保険の被保険者期間が一定以上ある人が利用できる制度です。健康保険への加入継続を希望する場合に、保険組合や協会へ書類提出をすると、それまでの健康保険に最長2年間加入することができます。
ただし、任意継続の場合の保険料は事業主との折半ではなくなるため、支払い保険料はそれまでよりも高くなります。また、保険料の納付を忘れた場合や2年が過ぎた場合などには、健康保険の資格を喪失します。
転職で既に次の会社が決まっている場合でも、空白期間が1日でもある場合は切り替えが必要です。転職・退職後は何かと忙しい時期ではありますが、忘れないように注意してくださいね。
<参考URL>
厚生労働省「我が国の医療保険について」
東京都職員共済組合「地方公務員共済組合制度の概要」
公立学校共済組合「掛金等の徴収」
東京都後期高齢者医療広域連合「後期高齢者医療制度とは」
全国健康保険協会「健康保険任意継続制度(退職後の健康保険)について」