現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第55回は、リンゴ酸や「超高純度コロイダルシリカ」といったニッチな分野で世界シェアトップを誇る化学メーカー、扶桑化学工業(4368)をご紹介します。

  • 扶桑化学工業は1962年にリンゴ酸の製造を開始し、海外にも事業を展開
  • 半導体の材料の研磨剤に使われる「超高純度コロイダルシリカ」で世界トップシェア
  • 扶桑化学工業は今期の大幅減益を見込むものの、悪材料は出尽くし業績反転に期待

扶桑化学工業(4368)はどんな会社?

扶桑化学工業は、リンゴ酸などの果実酸、超高純度コロイダルシリカなどの電子材料製品を強みとする、グローバルニッチトップの化学メーカーです。

リンゴ酸は、スポーツドリンクや炭酸飲料などの爽やかな味の飲み物、シャーベットやアイスクリームなどの冷たいデザートなどの加工食品に広く利用されています。また化粧品や医薬品、農業(土壌改良剤や飼料)、漁業(飼料や除藻剤)などの各分野でも使われています。
同社はリンゴ酸のほか様々な果実酸類を取り扱っており、それぞれ少しずつ酸味に違いがあり、用途に合わせて製品を提案することができるのが強みです。

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同社は1957年に現名誉会長の赤澤庄三氏が大阪市淀川区に当時の帝國製薬の大阪工場を独立させ、扶桑化学工業として設立されました。赤澤氏は化学に対する好奇心から大阪大学薬学部の研究生として医薬品の研究に取り組んでいました。
1962年にはリンゴ酸の製造を開始し販売も軌道に乗り、海外展開も拡大していきました。

リンゴ
リンゴの果実から発見された「リンゴ酸」をはじめ、扶桑化学工業ではさまざまな果実酸を製造している

もう1つの柱の「超高純度コロイダルシリカ」

扶桑化学工業のもう1つの事業の柱は「超高純度コロイダルシリカ」です。コロイダルシリカとは微粒子のシリカゲルを含んだ液体状の製品で、半導体を作る際に使われる磨き粉の原料用途などで使われています。

同社の超高純度コロイダルシリカは、半導体の材料となるシリコンウエハーを鏡の面にように仕上げるほか、半導体のチップの回路を作り上げながら表面を平らにする工程で研磨材として使われます。シリコンウエハーの主原料用途では、扶桑化学工業の世界シェアはトップです。

同社の強みのナノテクノロジーによって、その粒子の粒の大きさはナノ(10億分の1メートル)レベルで均一化されています。また粒の微細化や形の制御、表面加工などによって、研磨剤としてだけでなく、樹脂の添加剤やプリンターインクのトナーの添加剤としても使われています。

足元の半導体市場は、パソコンやスマートフォンなどの在庫調整で市況が低迷していますが、中長期では自動車やAIサーバーなどによる市況の好転が期待されます。こうした中で同社は電子材料の需要拡大に備えた生産効率の最大化、低環境負荷と高付加価値を実現する材料の開発も推進しています。

シリコンウエハー
半導体の材料となるシリコンウエハーの研磨剤として、扶桑化学工業の「超高純度コロイダルシリカ」が使われている(写真はイメージです)

扶桑化学工業(4368)の業績や株価は?

扶桑化学工業の今期2024年3月期は、売上高が前期比12%増の605億円、営業利益が42%減の109億円を見込んでいます。

9月15日に今期の業績予想を下方修正しました。リンゴ酸などのライフサイエンス事業は、国内食品向けの需要は底堅いものの、工業用途の落ち込みが続いています。
また、海外では景気減速で中国欧州向けが低迷しています。
超高純度コロイダルシリカなどの電子材料事業は、半導体市場の低迷が想定より長引いており、コストアップも業績悪化に影響しています。

11月24日の終値は4240円で、投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約42万円、予想配当利回りは1.56%です。

前期2023年3月期に過去最高の売上高、営業利益を記録しましたが、今期は一転大幅減益の見通しです。

【図表】扶桑化学工業(4368)の株価(2022年9月~直近)
扶桑化学工業(4368)の株価(2022年9月~直近)

株価は2021年9月の5420円から2022年の安値3060円まで売られた後は、戻り基調となっています。2023年7月に年初来高値4765円を付けましたが、その後は利益確定売りで3790円まで調整しました。現在では一進一退の株価推移が続いています。

半導体の市況は人工知能(AI)などに使われる先端半導体などの需要も伸びてきています。まだパソコンやスマートフォンなどの市況は低迷していますが、来年にかけては底入れが期待され、電子部品材料事業の業績回復が予想されます。

9月の業績予想の下方修正で当面の悪材料はいったん出尽くしたとみて、来期以降の業績反転への期待を考えると株価は成長余地が大きいと見ています。

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