宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は、今年5月から始まった「60歳以降のiDeCoの再加入」について、小田さん自身の経験をもとに、加入の手続きや商品選び、これまで積み立てた資産の扱いについてアドバイスします。

  • 60歳以降も働くならiDeCoに再加入した方がいい。ただし手続きはたいへん
  • iDeCoに再加入すると、新旧2つの口座をメンテナンスする必要がある
  • 古いiDeCoの口座は利益の確保を重視。新しい口座も低リスクで運用する

60歳以降も働くならiDeCoは「加入しないと損」

【質問】
iDeCoに60歳まで積み立てしていました。60歳で定年の予定でしたが、仕事を延長して働くことになりました。60歳を過ぎても再度iDeCoに入って年金積立ができると聞き、再加入しようと思うのですが、加入するにあたって何か注意することなどありますか?

今回は「iDeCo延長時の手順書」として、iDeCoの運用を延長する際の注意点や問題点を複数挙げながら、その手順について考えていきます。

皆様も承知しているかもしれませんが、今年5月から「iDeCoの65歳までの延長」が始まったばかりです。実際にどれだけの方が再加入の手続きをされているのかはわかりませんが、60歳以降も仕事によって「お金を生む行為」をされるならば、iDeCoの手続きは少しの手間はかかりますが、絶対にやらないと損をすることになります。iDeCoの再加入を決めた今回の相談者の選択は価値あるものになりました。

60歳以降もiDeCoの積立を続けた方がいい理由

昨年でiDeCoを終了していた私もようやく手続きを完了でき、第2弾の加入にこぎつけました。その経験を通じて、自身で感じて考えたことを話していきます。

働くサラリーマンにとっての最大の弱点は、「税金をコントロールできないこと」にあります。日本の税金は累進課税といって、所得が増えれば税金も増える仕組みで、所得によって決められたお金を必ず国庫に納めなければいけません。もちろん給料が増えれば使えるお金も増えるのですが、日本の未来を考えれば、同じ所得でも国庫に納める税金は増え、使えるお金が減っていくことにならざるを得ません。自分の使える経費(基礎控除など)も初めからルールで決められているなど、強制的に税金納付額が決定されます。

そんなサラリーマンなどの給与生活者にとって唯一の「コントロールできる税金」がiDeCoだといえます。働き続ける限りは、iDeCoに加入して税金対策を続けなければもったいないですよね。税金のコントロールは大切な「金融リテラシー」です。確定申告がいらないサラリーマンにとっても、将来のために金融リテラシーを身に着けていくことは重要な課題です。

資産運用に必要な「貯める力」と金融リテラシー

iDeCoの再加入は投資経験者にとっても面倒

さて、本題に移ります。iDeCoの延長ですが、実際にやってみてけっこう面倒くさいと感じました。私のように投資の経験を重ねている者がそう思うのですから、一般の人たちに浸透するまではたいへんかなというのが率直な感想です。

まずやるべきことは、受付金融機関の選定です。60歳まで加入していたiDeCoの金融機関と同じにするのか? それとも別の金融機関にするのか? 金融機関によって商品から手数料まで変わってきますので、今一度確認する必要が出てきます。どこに加入するのも自由ですから、最初に加入したときと同じように、金融機関をもう一度自分で選ばなければいけません。その労力はたいへんです。

私は1回目と同じ金融機関に加入して指示を仰ぐことにしました。申し込みから3週間ほどして、国民年金基金連合会から「個人型年金加入確認通知書」が届き、掛金納付、引き落としについてお知らせがありました。それまでは、提出した書類で大丈夫なのか? と不安がありました。最初にiDeCoに加入したときは、加入手続きの段階でリスク許容度を確認し、運用商品の選定もそこで行いましたが、再加入の手続きではその部分がなかったこともあり、そもそも書類の内容が正しかったかどうかもわからず、まだかまだかの毎日でした。

通知書が来てからすぐ、金融機関に確認しながら、口座の情報がネット上に反映されるのを待ちました。この段階でやっと運用商品を決めることになるので、加入者はそれまでに、自分自身で商品を決めておかなければいけません。

再加入を機に考えたいiDeCoのメンテナンス

ここである疑問が浮かんだ方は、すでに投資初心者を脱却しています。「今まで積み立てていたお金はどうなるのか?」。そうです、iDeCoの再加入は、2つの積立金を持つことになるのを理解しなければなりません。つまり、60歳まで運用していたお金と、61歳から積み立て運用するお金の2口座になります。それぞれ別管理のため、別々のメンテナンスが必要になってくるのです。

2つの口座
iDeCoに再加入した場合、これまで運用してきた口座と、これから運用する口座の両方を管理することになる

これは思ったよりけっこう面倒でした。同じ金融機関で、かつ同じ商品で運用するのであればいいのですが、今までの口座とこれから運用する口座で、商品だけでも違うとなると、投資についての金融リテラシーが必要になり、これは投資経験者でないと無理かもしれません。

私は、以前のiDeCoでは60歳時点でリスクが高い商品を一部解約(20%)して、元本確保型商品(15%から35%)にスイッチング(預け替え)しました。私の場合、約11%の利益が出ていましたので、スイッチングによりリスクを低めに設定し直して、この先相場が悪くなっても元本をできるだけ多く確保したかったことが理由です。スイッチングは約半年前のことですが、おかげさまで、現在も約12%の利益を確保しているので、良かったと思っています。

そして今回の61歳からの運用商品は、外国株式型を含めた商品55%を基準にしてバランスを取りながら、積立を始めているところです。以前のiDeCoと合わせると、同じ金融機関であっても全部で6種類の商品をメンテナンスしなければならないので、運用の状況を確認する機会は前より増えています。

ここで私の経験を踏まえてiDeCoの再加入を検討する方にアドバイスをすると、今までのiDeCoの口座では、

①今までの積立運用で利益が出ている方は、スイッチングで商品を変更するなどして、現在まで増やしてきた資産を減らさない工夫を試みる。

②逆に、運用成果がマイナスの場合は、リスクの取り方に問題があるので、商品の配分の変更を考えるなどして、今からでも資産を増やす努力をする。

といったメンテナンスが必要になると思います。

そして肝心なのは、これからの運用法にあります。今のところ、再加入後にiDeCoで積立運用ができる最長期間は5年間に限られますので、長期運用よりは中期運用になります。外国株式型中心の私の運用法は、リスクOKの方向けとなりますので、一般的にはお勧めできません。再加入後の口座も、リスクが低めの運用にシフトしておいた方がいいでしょう。

最後に、iDeCoはサラリーマンなどの給与生活者にとって、税金の支払いをわずかですがコントロールできる素晴らしい制度だと思います。サラリーマンにとって最大のコストは税金です。昨今、多くの企業が副業にオッケーを出すようになりました。副業などで働くことは、税金対策の面でもメリットが生まれますので、iDeCo以外のところで一歩踏み込む努力も必要だと思います。