宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は、60歳でiDeCoの積立をいったん終えたものの、今年5月の制度改正で60歳以降も積立ができるようになり、積立投資を再開するかどうか迷っている方からの相談に答えます。

  • iDeCoの運用期間が65歳まで延長。5年間の運用でも節税効果は大きい
  • iDeCoは運用益も非課税。下落相場に備えた資産配分のメンテナンスも大切
  • iDeCoには手数料がかかる。60歳以降も積立を続けないともったいない

5年の運用でも大きいiDeCoの節税効果

【質問】
半年前に60歳を迎えたことで、4年間ほど積立していたiDeCoもいつの間にか掛金の引き落としが終わってしまいました。そのまま放置していたら、最近になって証券会社から積立を再開できるような案内が届きました。でも私の年齢で年金の積立投資を始めるのは、リスクを考えると不安でなりません。ちなみに私は65歳までは働こうと思っていますが、いいアドバイスありませんか?

前回は50代後半の方からの相談でしたが、今回は60歳の方です。

50代後半から始める、ゆとりある老後への備え

今回の相談は、まさにiDeCo(イデコ)の弱点だった加入者年齢に関することです。iDeCoは「確定拠出年金」という、老後のために自分でお金を出して(拠出して)運用する国の年金制度です。拠出時、運用時、受け取り時の3つの税制優遇があることから、掛金を積み立てる期間が長ければ長いほどより多くの恩恵を得て、途中で解約できないことから、iDeCoは「長期投資の王道」と私は勝手に思っています。

ところが私世代、つまり50代後半から60歳ぐらいの方は、iDeCoで60歳までの短い期間の運用しかできないために、今回の相談者も将来の年金に対して不安を募らせることになります。そのiDeCoの運用期間が、2022年5月から、65歳まで5年間延長されたのです。さらに10月からはiDeCoがDC(企業型確定拠出年金)と併用できるようになるので、ますます個人の年金運用を通じた節税が加速しそうです。

金融商品は、一般的に運用で得た儲けに対して20%の税金がかかりますが、iDeCoなら積立運用期間は非課税でお金を増やすことができます。運用期間が5年間延長されると、非課税運用の効果はどうなるのでしょうか?

毎月の積立金が23,000円、年276,000円で、相談者の課税所得は330万円以下とのことですから、積立金に対して税率20%が節税できることになり、年間で55,200円、5年間で276,000円の節税になります。さらに相談者がiDeCoの運用を始めた55歳から5年間、毎月23,000円を積立し、年3%で運用できたら、利益は非課税になり、積立金138万円に対して資産は149万円弱となります。運用した資産と節税金の5年間のトータル資産は177万円弱です。

しかし、65歳まで10年間運用できたなら、積立金276万円に対して、節税金を合わせた10年後の資産は377万円弱となり、5年運用した場合と比較すると200万円も大きくなっています。たかが5年、されど5年なんです。iDeCoの積立期間は非課税であっても、受給が始まれば年金も課税対象となりますが、お勤め期間に応じて退職所得控除という非課税枠もあるので安心です。

どうですか? これだけの節税のメリットが得られるなら、当然のことiDeCoの再加入を検討するしかありませんね。

筆者が約5年間iDeCoを運用した結果

さてここからは、具体的に「そんなうまい話があるの?」と疑問に思われる方のために、今回の相談者と同年代で、まさにiDeCoを実践している私の運用を見ながら考えていきます。
(今回は運用効果についてのお話ですので、運用商品については割愛させていただきます)

現在のiDeCoの運用は、

2022年6月28日時点のiDeCoの資産状況

積立期間……59カ月間
積立金額……月23,000円
合計元金……1,357,000円
資産残高……1,495,361円
損益……+138,361円
損益率……10.2%

となっています。複利だと年率約6%で運用できたことになります。

そして、忘れてはいけないのは運用とは別の、積立金額に対する節税分効果です。この間の節税額は276,000円で、資産残高を含めたトータルでは約177万円となりました。節税分も含めると約16%もの運用となっています。節税分は自分のご褒美で使っちゃいました(笑)。

今、iDeCoの再加入を申請中で、ここからの5年を同じように年率6%で運用できれば、65歳時点でのトータルは約376万円弱となり、トータルでは約36%の損益率。さらに節税分プラスで、約431万円。こんなに大きく節税効果が発揮できます。心のゆとりを持たせるには十分でしょう。

今までの約5年間での資産残高の最高が約150万円で、今もほとんど変わっていないので、今年に入ってからの下げ相場はあまり影響していません。これには理由があります。2月にスイッチングで株式型投資信託のインデックス商品を一部解約し、解約金を元本確保商品に充当して、アセットアロケーション配分の変更を行いました。結果としてインデックス商品から元本確保商品に20%ほどシフトしたのですが、下げ相場に耐えられたのもそのおかげだと思います。このようにiDeCoでは、今の現状を理解しながら、必要なときに資産配分のメンテナンスをすることが重要ですので、運用を通じて考える習慣を身につけてください。

また、iDeCoの65歳までの延長は公的年金に加入しているのが条件なので、元気なうちは働きましょう。

働く高齢者
今の生活と老後の年金のことを考えて、元気なうちは働きたい

iDeCoで積立を続けるべき2つの理由

最後に、60歳以上の方がなぜiDeCoで積立を続けた方が良いのかを話していきます。通常、若年層が加入して長期で老後年金を運用するのは問題ないのですが、iDeCoは加入期間が短いと受給開始が遅くなります。60歳から受給開始できるのは、10年以上積立していた方になります。私のように積立が5年未満なら、63歳からしか受給を開始できません。60歳から63歳までの3年間も、運用しなければもったいないですね。このようにiDeCoは「長期運用でやってくださいね」という意図で制度が作られています。

もう一つ大きな理由があります。iDeCoの手数料です。60歳以降、積立(拠出)はなくなった場合でも運用は続けることになります。運用が続いている以上、国民年金基金連合会への手数料はありませんが、運営管理機関、資産保全に関する事務を担っている事務委託先金融機関に月66円(年間792円)から月484円(年間5808円)の負担が発生します。利益の減少、これはもったいないですね。

このように、積立していないのに手数料だけ取られる現象が続きますので、50歳代後半でiDeCoに加入して60歳で積立をやめるとなると、手数料負担が重くなり、節税のメリットが減少します。できれば60歳以降も積立を続けて、手数料以上の運用ができるように商品を選ぶことに心掛けていきましょう。

そして来年には、iDeCoの加入年齢の引き上げが70歳まで延長されるかもしれません。先を見据えて行動を起こすのも人生100年の生き方です。

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