現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第29回は、パックごはんや包装餅の最大手食品メーカー、サトウ食品(2923)を取り上げます。

  • サトウ食品は、パックごはんや包装餅の最大手食品メーカー
  • 強みは、原料である良質の米と最新の技術を駆使した独自の製法にこだわった品質
  • 足元の株価はレンジで推移するが、長期では上昇トレンドが続く

サトウ食品はどんな会社?

サトウ食品はパックごはんや包装餅の最大手食品メーカーです。「サトウのごはん」や「サトウの切り餅」のブランドは消費者によく知られています。 新潟の女性アイドルのNegiccoが出演する「サトウのごはん」のかけ声が耳に残るテレビCMでおなじみの方もいらっしゃるのではないでしょうか?

同社は戦後間もない1950年に創業者の佐藤勘作氏が白玉粉の製造を祖業とする「佐藤勘作商店」を新潟県で設立し、前身となりました。当初はぜんざいやあんみつなどに入れる白玉粉を製造していましたが、その後昭和30年代に入り、正月用ののし餅の製造販売に乗り出しました。

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テレビCMなどの効果もあり、餅の販売が順調に伸びていき、1983年には、新商品「つきたてシングルパック」の製造販売を始めます。当時としては画期的な餅を一切れ一切れ無菌化して包装する技術を確立し、ヒット商品となりました。

さらに1988年には餅の製造技術を生かして、炊きたてのごはんをそのままパックし、保存料を使わず常温で1年間保存できる無菌化包装米飯の「サトウのごはん」を商品化し、業界内で話題となりました。

サトウ食品の強みは?

サトウ食品の強みは原料である良質の米と最新の技術を駆使した独自の製法にこだわった品質です。「サトウのごはん」は、全国で収穫された国内産の水稲米から厳選したものを使用しています。米は精米し時間がたつと風味が落ちてしまうのでサトウ食品は白米の一歩手前の玄米を自社工場で精米しています。精米された白米は高性能の選別器で傷や欠けがないか確認をして不良米を取り除きます。

米を炊飯する際には、「はじめチョロチョロなかパッパ」と「ガス直火炊き」という日本古来からの炊飯方法で約40分かけてじっくりと炊きあげています。他社で採用されている蒸気を吹き付ける炊飯方法に比べてコストや時間はかかりますが、より美味しく炊きあげることができ、消費者に支持されています。

炊き立てご飯
良質な米を美味しく炊き上げ、無菌化して包装する技術がサトウ食品の強み
※画像はイメージ

サトウ食品の業績や株価は?

サトウ食品の今期2023年4月期は売上高が前期比2%増の397億円、経常利益が3%減の28億円を見込んでいます。9月7日に発表した5~7月期(第一四半期)は売上高が前年同期比12%増の67億円、経常利益が2.5倍の3億6200万円と大幅増益でした。

コロナ禍による生活スタイルの変化で「ストック」できることが食材選びのポイントとなり、パックごはんやパック餅の販売を押し上げています。独自の釜炊き製法をアピールするテレビCM「サトウのごはん『ふっくら釜炊き編』」などの効果もありました。

また、円安や小麦価格の上昇でパンの値段が上がっていることも米食品が買われやすくなる背景となっています。総務省の小売物価統計調査によると、9月の東京都区部でのコシヒカリの小売価格は5キロあたり2292円と1年前の2287円にくらべてほぼ変わらずでした。これに対して食パン1キロは495円と1年前にくらべて14%値上がりしています。

10月21日の終値は5170円で投資単位は100株単位となり最低投資金額は約52万円です。

サトウ食品(2923)の株価(2017年1月~、月足、調整後終値)
サトウ食品の株価チャート

株価は6月以降に業績の安定性、米食の優位性、食のスタイルの変化などが評価され、ゆるやかに上昇しました。9月の第一四半期決算発表を受けて、一時5370円まで買われる場面がありましたが、その後は売り物も出て、足もとではレンジでの推移となっています。

ただ、月足チャートで見ると長期の上昇トレンドが続いています。インフレや人件費の上昇などが業績の下押し圧力となりますが、需要の力強さが再度確認されれば再度、上値をトライする場面もありそうです。

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