現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第30回は、半導体や電子部品などの大手メーカー、ローム(6963)を取り上げます。

  • 1954年創業のロームは、半導体や電子部品などの大手メーカー
  • 強みは、垂直統合型と呼ばれる材料から製品化まで一貫して自社内で行う生産体制
  • 2023年3月期の業績予想を上方修正。円安や脱炭素による市場成長で拡大見込む

ローム(6963)はどんな会社?

ロームは半導体や電子部品などの大手メーカーです。

1954年に東洋電具製作所として創業し、当初は抵抗器と呼ばれる電流を流れにくく調整することで電子回路に流れる電流を制御する電子部品の製造からスタートしました。1969年には半導体分野に進出しIC(集積回路)の製造を始め、2年後にはアメリカのシリコンバレーへ進出するなど国内外で成長を続けていきました。

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1979年に社名を現在のロームに変更しました。社名のローム(ROHM)は抵抗器(Register) の頭文字の「R」に抵抗の単位であるオーム(OHM)を組み合わせたことに由来しています。

時代とともに変化する産業に対応した経営を進めており、2000年ごろにかけては任天堂などのゲーム機、携帯電話向けにメーカーの注文に応じて設計する「カスタムIC」の需要が伸び、業績を拡大しました。

現在は自動車や産業機器向けを主戦場として取り組んでおり、電気の流れを制御するパワー半導体やアナログ半導体などに注力しています。具体的には、自動車向けでは車載充電器、自動運転ユニット、LEDライトなど、産業向けでは携帯の基地局、サーバーなどの記憶装置、工場向けでは産業用モーターや無人搬送車など産業のあらゆる場面でロームの製品が使用されています

LSIイメージ
複雑な機能を持つチップ状の電子部品「大規模集積回路(LSI)」が主力
※画像はイメージ

ローム(6963)の強みは?

ロームの強みは、垂直統合型と呼ばれる材料から製品化まで一貫して自社内で行う生産体制にあります。

トラリピインタビュー

ロームは1970年以来、ICなどの半導体分野で回路を設計したり、製造のプロセスを最適化したりする試行錯誤を繰り返してきました。また、ものづくりのための製造装置なども自社内で生産することにより研究開発のノウハウを積み重ねながら、技術の外部流出を防いできました。これにより、メーカーの需要に応えられる製品の長期の安定供給も可能となります。

現在ではモノとモノがネットワークを通じてつながるIoT、自動運転の実用化や電気自動車(EV)などの普及が加速しており、半導体や電子部品に求められる性能も高度化しています。ロームは企業の目的を「つねに品質を第一とする。いかなる困難があろうとも良い商品を国の内外に永続かつ大量に供給し文化の進歩向上に貢献することを目的とする」としており、メーカーの需要に応えられる高品質な製品の研究開発、提供を進めています。

ローム(6963)の業績や株価は?

ロームは11月1日に今期2023年3月期の業績予想を上方修正しました。今期は売上高が前期比15%増の5200億円、経常利益が27%増の1050億円を見込んでいます。脱炭素による省エネ機運の高まりで省エネ性能の高い電子部品や半導体の市場が成長し、為替の円安が進行したことも業績を支えると見込んでいます。

1日に同時に発表した4~9月期の決算は売上高が17%増の2599億円、営業利益が46%増の504億円と大幅増収増益でした。中国、欧州、米州、台湾向けの売上高が大幅に伸び、各地域で自動車向けを中心に製品の販売が好調でした。

電化製品やスマートフォンなど一部の民生向けでは在庫の調整の動きが見られますが、ロームが注力している自動車や産業機器向けの分野では中長期的な市場の成長を見込んでいます

11月4日の終値は10310円で投資単位は100株単位となり最低投資金額は約101万円です。投資金額が大きいため、100株以下で購入できる単元未満株の投資を検討しても良いでしょう。

ローム(6963)の株価(2021年11月~、月足)
ロームの株価チャート

株価は、6月以降は11000円どころを上限として9000円を下値にボックス圏での推移が続いていました。ただ下値は着実に切り上げており、円安や脱炭素による市場の成長で業績はさらなる拡大が見込まれます

長期の月足チャートで見ると9月の高値の11220円、2021年の高値の12140円などが節目となりますが、長期の上昇トレンドラインは継続しており、期待が持てそうです。

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