テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家が700人以上所属する日本放送作家協会がお送りする豪華リレーエッセイ。ヒット番組を担当する売れっ子作家から放送業界の裏を知り尽くす重鎮作家、目覚ましい活躍をみせる若手作家まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜く放送作家&脚本家たちのユニークかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず!
記念すべき連載第100回は、『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』『水曜日のダウンタウン』『IPPONグランプリ』など、数々の人気バラエティー番組を担当する高須光聖さん。
信頼関係のみで始まる仕事
ほとんどの仕事はその報酬額を決めてから仕事に着手するが、僕ら放送作家はそれがない。プロデューサーから「新番組のご相談をお願いしたいのですが、お時間ありませんか?」と連絡が入り、会議室に行くと話し出しはだいたい「まだ内緒なんですが……」と終了が決まった番組名を聞かされる。
裏事情や枠の裏環境など一通り聞いて「ということで高須さんの力を貸してもらいたく……」とお願いされ「なるほど」と答えると、なし崩し的に仕事はスタートする。その場で金額的なことは一切触れずに信頼関係のみで始まるのである。
企画が出来上がり、編成のOKが出ると会議メンバーは一気に増え、初回収録に向けて、コーナーや企画ごとの分科会が始まり、収録台本ができ上がると本番を迎える。
収録を終えた翌日の昼、「昨日は面白くなりました、MCの○○さんも終始ご満悦で、面白かったと言って帰られました。ありがとうございました」といういい報告を受けた後ぐらいに、「ところでギャランティーなのですが」と金額の話が初めて出てくる。「大変申し訳ないですが、本当にお金がなくて……」と一回クッションを置いてから、「少なくて大変申し訳ないんですが、いくらいくでお願いできますでしょうか?」と提示が来ることが多い。そこで断れば金に煩い奴に思われるため、だいたいの放送作家は「はい、わかりました」と受け入れている。「今回は珍しく予算に余裕がありまして……」と一度ぐらい言われてもいいようなものだが、未だにそれはない。
熱湯風呂は50~60万円、逆バンジーは100万円のことも
不景気の波はさらなる大波となってテレビ局を襲い、最近では台本からもいろいろなものがカットされることもある。先日何気なく書いたMC登場のCO2(プシューと白いスモークみたいなもの)を削ってもいいですか?と連絡を受けた。
なんでも一本10万かかるらしく、登場口の両サイドに3本ずつだと計6本、60万になる。もちろん「カットして下さい」と答えたが、なんとも切ない話ではあるが仕方ない。これを機に幾つかのバラエティーの定番ものの金額を調べてみた。
ダチョウ倶楽部さんのあの透明な熱湯風呂も一回使用するのに人件費込みで50万〜60万、罰ゲームで昔よく使った逆バンジーも80万〜100万、その時に演者のリアクションをしっかり撮るためのCCD付きヘルメットは5万〜10万。面白くするためになんでも自由に書かせて頂いた自分は本当に恵まれていたのだとつくづく思う今日この頃である。
次回は、放送作家以外にも多方面で活躍する鈴木おさむさんにバトンタッチ!
ぜひ、ごお聴きください!
毎週日曜日25時―25時半 TOKYO FM 80.0「空想メディア」
放送作家の地位向上を目指し、昭和34年(1959)に創立された文化団体。初代会長は久保田万太郎、初代理事長は内村直也。毎年NHKと共催で新人コンクール「創作テレビドラマ大賞」「創作ラジオドラマ大賞」で未来を担う若手を発掘。作家養成スクール「市川森一・藤本義一記念 東京作家大学」、宮崎県美郷町主催の「西の正倉院 みさと文学賞」、国際会議「アジアドラマカンファレンス」、脚本の保存「日本脚本アーカイブズ」などさまざまな事業の運営を担う。