3月の決算シーズンが近づいてきました。今回のテーマは「配当」です。「配当とは」「配当に関連する指数と判断する時の注意点」について、株式投資初心者の方向けに解説していきます。
- 配当は株主に対する企業からの利益還元。通常、前期の儲けから振り向けられる
- 配当性向は当期純利益のうちどれだけ配当に回したかを示す。高すぎるのも問題あり
- 配当利回りは株価に対する配当金額の割合を示す。資金回収の試算ができる
配当は株主に対する企業からの利益還元
配当は、株主に対する企業からの利益還元です。通常、前期の儲け(税引き後当期純利益)の一部を株数に応じて分配します。儲けからの分配になりますので、前年の利益が少ない場合や赤字の場合は、配当が前年に比べて減ったり(減配)、支払われない(無配)こともあります。逆に前年より儲けが大きければ受け取れる配当が増える(増配)ことが期待できます。
1株当たりの配当金額をいくらするかは会社側で金額を決め、通常は株主総会での承認後に株主に対して支払いが行われます。
次に配当に関連する2つの指数についてみていきます。
配当に関連する指数と判断する時の注意点
配当に関連する指数は「配当性向」と「配当利回り」の2つです。以下、それぞれの内容と注意点についてみていきます。
1.配当性向
最初に当期純利益のうちどれだけ配当に回したかを見る「配当性向」についてみていきます。
配当性向は以下の計算式で求めます。
配当性向(%) = 1株あたり年間配当金 ÷ 1株当たり当期純利益 × 100
※当期純利益とは、一会計期間(通常は1年間)に会社が活動した結果の全収益から、全ての費用・法人税などを差し引いた利益のこと
例えば、A社の1株当たりの年間配当が150円、B社が100円だとしますと、絶対額ではA社の方が株主に利益還元しているように思われます。
1株あたりの当期純利益がA社1,000円、B社500円の場合の配当性向を計算しますと、
A社の配当性向は15%(150円÷1,000円×100)
B社の配当性向は20%(100円÷500円×100)
となり、B社の方が当期純利益からみると株主に対してより利益還元していることになります。
ただし、配当性向が高ければ高いほどいいという訳ではありません。近年、内部留保に対してあまりいいイメージが持たれていませんが、内部留保があることで会社は、研究開発や設備投資などを迅速に行うことができるようになります。配当性向が高すぎるとそのような資金を借り入れで賄う必要がでてきます。また、配当性向の高い会社は、今後の成長性が低い可能性があります。
1株あたり当期純利益(EPS)の前々期、前々期から伸びも併せて確認しておきましょう。EPSが伸びていれば、同じ配当性向でも配当額は増えます。
2.配当利回り
配当利回りは、株価に対して配当金額の割合を示す指数になります。
配当利回りは以下の計算式で求めることができます。
配当利回り(%) = 1株当たり年間配当金 ÷ 株価 × 100
例えば、A社の1株あたり年間配当金が150円で株価が3,000円の時の配当利回りは、
5%(150円÷3,000円×100)
です。株価が4,000円の時は3.75%(150円÷4,000円×100)、2500円の時は6%(150円÷2,500円×100)と、同額の年間配当額でも株価により配当利回りは変動します。
これから投資先を検討する方は、現在の株価と予想される1株あたりの年間配金で計算した配当利回りを参考に銘柄選びをすることになります。
また、配当利回りによって資金回収のシミュレーションをすることができます。
例えば、現在の株価で購入して配当金額が現在と変わらず今後も受け取れるとしたら、配当利回り5%では、20年(5÷100)*で投資資金が回収できる計算になります。
*税金等考慮せず。
既に株式を保有している方は、購入した時の株価と1株当たり年間配当金を使って利回り計算をします。仮に購入した時点より、毎年配当の額が増えていれば、配当利回りは上昇します。逆に配当額が減っていれば配当利回りは低くなります。何回かに分けて購入した場合は平均購入単価を使って配当利回り計算をします。
権利確定日の2営業日前までに購入
2023年1月24日時点の日経平均株価の配当利回りは、2.29%でした。日経平均で採用されている銘柄を見ていくと、配当利回りが高い銘柄は、商船三井16.39%、郵船16.07%でした。逆に低い銘柄は、京成0.46%、リクルート0.52%、キーエンス0.51%でした(銘柄推奨ではありません)。日経平均採用銘柄の中でも配当利回りに大きな開きがあることがわかります。
配当を受け取るには、その企業が決めた権利確定日(配当を支払う株主を決める日)の2営業日前(権利付最終日)までにその企業の株を購入しておく必要があります。
3月末が権利確定日の企業でしたら、また余裕をもって銘柄選びができるかと思います。多くの企業が本決算を行う3月の決算シーズンも近づいてきましたので、今回は配当について取り上げさせていただきました。