現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第39回は、半導体の材料となるシリコンウエハーの専業メーカー、SUMCO(3436)を取り上げます。

  • SUMCOは、半導体の材料となるシリコンウエハーの専業メーカー
  • 製造技術に強み。最先端のロジック半導体に限ると世界シェアは50%以上
  • 前期2022年12月期は大幅増収増益。株価は出遅れ、今後の物色に期待

SUMCO(3436)はどんな会社?

SUMCOは、スマートフォンや家電、パソコンなど我々の身の回りのあらゆる電子機器に組み込まれている半導体の材料となるシリコンウエハーの専業メーカーです。その世界シェアは約3割と、トップの総合化学大手の信越化学工業(4063)に次いで2位となっています。

世界シェアNo.1製品を多く持つ「信越化学工業」

創業は1999年で、当時の住友金属工業(現・日本製鉄)と三菱マテリアルなどの住友・三菱グループのシリコンウエハー事業が統合してできた会社です。当初はシリコンユナイテッドマニュファクチュアリングとしてスタートし、2005年に社名を現在のSUMCOに変更しました。SUMCOの由来は旧社名のS(シリコン)、U(ユナイテッド)、M(マニュファクチュア)、 CO(コーポレーション)のそれぞれの頭文字をつなげたものです。

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シリコンウエハーの「シリコン」とは、日本語でケイ素(珪素)となり、地球上で酸素に次いで最も多く存在している元素です。ケイ素は石や土などの主な成分となっています。このケイ素を加工して不純物を極限まで取り除くことにより、電気を通したり通さなかったりする性質を持ち、電子回路に適した「半導体」の材料となるのです。

SUMCO(3436)の強みは?

SUMCOの強みは超高純度のシリコンウエハーを作る技術です。

代表的な300ミリのシリコンウエハーは、0.8ミリの極薄で、30センチの円形の薄い板です。円柱状になっているケイ素の塊(インゴット)をスライスして、表面を丁寧に研磨、洗浄して作られます。

インゴットは多結晶のシリコンを特殊ガスや高温の環境下で溶解し、独自の結晶育成技術を用いて作られます。その純度は99.999999999%(イレブンナイン)まで高められています。

トラリピインタビュー

また、SUMCOは成膜などの特殊加工を行った高性能品の製造も得意としており、サーバーやデーターセンターなどで用いられる最先端のロジック(演算)半導体に限ると世界シェアは50%以上となっています。

SUMCO(3436)の業績や株価は?

SUMCOが2月に発表した前期2022年12月期は売上高が前期比31%増の4410億円、営業利益は2.1倍の1096億円と大幅増収増益でした。

PCやスマホの需要鈍化により、データを記憶するメモリー向けのシリコンウエハーの販売は調整しました。一方で、演算のロジック向けの調整は軽微にとどまり、EVや先進運転支援システム(ADAS)の普及で自動車向けの需要は伸びが続いています

SUMCOは、シリコンウエハーの市況は不確実性が高いとして、通期の業績予想を開示していませんが、2023年1~3月期(第一四半期)は売上高が前期比5%増の1050億円、営業利益が2%減の230億円を見込んでいます。第一四半期は営業減益予想となっていますが、シリコンウエハーの市況は車載向けや産業向けを中心に概ね堅調な需要が続くと見られています。また、主な半導体メーカーとSUMCOは長期の供給契約を結んでおり、価格下落による市況悪化の影響を強く受ける可能性は低いと思われます。

3月24日の終値は1954円で投資単位は100株単位となり最低投資金額は約20万円です。

SUMCO(3436)の株価(2021年8月~、月足)
SUMCO(3436)の株価チャート

株価は2022年11月の2118円から下落トレンドが続いていました。しかし、3月24日に1976円を付けたことにより、2月8日の2022円、3月9日の1965円を結んだ下落トレンドを上方向に抜けたと見て、戻りが期待できそうです。

半導体関連株は、日米で売られていたグロース株に資金が向かっていることもあり、市場でも関心が高まっています。半導体シリコンウエハー世界大手の信越化学工業や半導体製造装置の東京エレクトロンなどは、昨年来高値圏で株価が動いていることから、出遅れのSUMCOにも物色が向かうと見て、株価上昇を期待しています

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