現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第19回は、世界シェアNo.1の製品を多く持つ総合化学メーカー、信越化学工業(4063)を取り上げます。

  • 信越化学工業は、19カ国で事業を行い、7割が海外売上高の総合化学メーカー
  • プラスチックの一種の塩ビ、半導体材料のシリコンウエハーは世界シェアNo.1
  • 景気変動の影響を受けにくく、2022年3月期は大幅増収増益

信越化学工業はどんな会社?

信越化学工業は産業や生活の基礎になる素材や製品を手がけており、世界シェアNo.1の製品を多く持つ総合化学メーカーです。

信越化学工業株式会社のホームページ

信越化学工業の設立は大正15年(1926年)で、化学肥料の石灰窒素の製造を手掛ける「信濃窒素肥料株式会社」として長野県に設立されました。最初の工場は現在の新潟県の直江津に造られており、社名の「信越」は地名に由来しています。

1960年にいち早く海外に進出し、現在では19カ国で事業を行い、売上高の7割が海外売上高となっています。

信越化学工業の強みは?

信越化学工業の強みは、産業や生活に欠かせない多くの世界シェアNo.1の製品を手がけていることです。

主力製品の1つは塩化ビニール樹脂(塩ビ)です。塩ビはプラスチックの一種で加工しやすい、燃えにくい、耐久性があるなどの特徴を持っています。その特性を活かし、エコバッグ、長靴、ラップなどの生活用品から水道や電線、壁紙などのインフラ・建材としてさまざまな場面で用いられています。

塩ビではいち早く海外展開を進めており、1974年に米国で当時最大の塩ビパイプメーカーのロビンテック社と合弁でシンテック社を設立しました。その後も生産能力の増強を続け、設立から35倍に生産能力を拡大しています。現在では世界最大の塩ビメーカーとして世界全体の需要の10%を供給しており、世界のインフラ素材を支える存在となっています。

塩
塩化ビニル樹脂は原料の6割が天然由来の塩。他の汎用樹脂に比べ環境への負荷が小さい

またスマホやパソコン、サーバーなど電子機器に欠かせない半導体の分野では材料となるシリコンウエハーも早くから手がけており、こちらも世界シェアNo.1となっています。その他半導体の回路を形成する工程で使われている感光材のフォトレジストでは世界シェアNo.2となっています。

このようなさまざまな競争力のある製品を多く手掛けることで景気の変動の影響を受けにくくなり、強い収益力につながっています。また不況時でも思い切った設備投資を行うなど、先を見越した経営力により同業他社に比べても高い収益力を維持し続けています。

このような強さは業績にも現れており、リーマン・ショック後の2009年3月期も営業黒字を確保しその後も東日本大震災などの外部環境の変動時も連続増益を続けており、海外投資家などからの高い評価に繋がっています。

信越化学工業の業績や株価は?

信越化学工業の前期2022年3月期は売上高が前期比39%増の2兆744億円、営業利益が72%増の6763億円と大幅増収増益となりました。

主力の塩ビは強い需要や原材料の高騰を受けた値上げ効果により、業績を押し上げました。また、半導体のシリコンウエハーやフォトレジストなどの関連材料も品不足が続いており、高水準の出荷となりました。今期2023年3月期はロシア・ウクライナ情勢や原材料価格の高騰が続いていることから業績予想は一旦開示を見合わせています。

5月6日の終値は18275円で投資単位は100株単位となり最低投資金額は約183万円です。1単元の投資額が大きいことから、単元未満株の取引を検討してもいいでしょう。

信越化学工業(4063)の株価(2021年1月~、月足、終値)
信越化学工業の株価チャート

株価は景気敏感の大型株として昨年からは上値の重い展開が続いていましたが、良好な業績が再度評価され、3月以降は下値を固めており、反騰ムードが高まっています。新型コロナやウクライナ情勢などの不透明要因が後退すれば一段高も期待できそうです。

この先の不透明な環境の中でも、インフラ投資関連や半導体といった需要の伸びる製品を数多く手がけていることから堅調な相場展開が見込めると見ています。

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