新年度に入り、勤め先の締め日によっては初任給を受け取るタイミングが近づいている新社会人の方もいるでしょう。賃金の受け取り方法は現金の手渡しか口座振り込みが基本ですが、4月からはキャッシュレス決済での受け取りも選べるようになります。
- 〇〇ペイなどのキャッシュレス決済サービスで給料が受け取れるようになった
- 給料のデジタル払いを選択しても、現金で引き出すことは可能
- ポイントは溜まるが、預金先としての活用は難しいことには注意が必要
キャッシュレス決済サービスでの賃金受け取りが可能に
これまでは原則、賃金の受け取り方法は、現金または銀行などの口座振り込みのみでした。
しかし、一定のニーズがあると判断されたことから、2022年11月に労働基準法が改正。労働者が希望した場合はキャッシュレス決済サービスでも賃金を受け取れるようになりました。これが「賃金のデジタル払い」です。
労働者が賃金のデジタル払いを受けるには、次のような手順が必要です。
- 企業と労働組合または労働者の代表で労使協定を結ぶ
- 賃金のデジタル払いを希望する労働者が説明を受け、企業へ同意書を提出する
同意書を提出する際に、賃金のデジタル払いで受け取る賃金額や、どのキャッシュレス決済サービスで受け取るかなどを決めておく必要があります。
選べるキャッシュレス決済サービスは、厚生労働大臣の審査により一定の要件を満たしていると認められたものです。
審査が完了して受け取りに指定できる事業者とキャッシュレス決済サービスは、厚生労働省のサイトで随時公表されていく予定です。
2023年4月17日現在、PayPay株式会社・楽天ペイメント株式会社・楽天Edy株式会社などの事業者が指定申請を行ったと発表しています。
審査結果は数カ月程度かかるとされているため、実際に賃金受け取りが可能になるのは4月以降となりそうです。
振り込みとキャッシュレス決済の併用も!
賃金のデジタル払いは、あくまで選択肢のひとつのため、これまで通り現金や口座振り込みでの受け取りも可能です。
また、賃金のデジタル払いを希望する場合も、キャッシュレス決済サービスで一部を受け取り、残りを口座振り込みにすることもできます。たとえば、固定費などの支払いを口座引き落としで、日用品購入などの支払いをキャッシュレス決済で行っている人は、口座からキャッシュレス決済サービスへの資金移動の手間を省けるメリットがあるでしょう。
また、賃金のデジタル払いを選択した場合、ATMや銀行口座への出金といった方法で現金化が可能です。事業者により払い出し方法や手数料は異なりますが、月1回は手数料なしで払い出しができます。急遽手元に現金が必要となった場合にはキャッシュレス決済サービスで受け取った分から出金をする、という臨機応変な対応もできそうです。
キャッシュレス決済は「預金」のためのものではない点に注意
賃金のデジタル払いは、キャッシュレス決済を利用している人にとっては便利なものとなるでしょう。一方で、注意しなくてはいけない点もあります。
事業者が破綻した場合には、キャッシュレス決済サービスで受け取った金額は保証機関から弁済されます。そのため、銀行口座のようにまとまった金額を入金額に設定しても問題ないように思えるかもしれません。
しかし、キャッシュレス決済サービスは、あくまで支払いや送金のためのものであり、預金先としての活用は難しくなっています。
キャッシュレス決済サービスでは、口座の上限額が100万円以下となっています。その限度額を超えた分は銀行口座などに自動出金されますが、その場合、出金にかかった手数料を負担しなくてはいけないこともあります。
さらに、先述の審査を通過していない場合は受け取り先に指定できないため、希望するキャッシュレス決済サービスで賃金のデジタル払いを受けられない可能性もあります。ほかにも、現金化ができないポイントや仮想通貨での受け取りはできません。
キャッシュレス決済サービスは、利用するとポイントが貯まるなどといったメリットもあり、活用している人も多いでしょう。賃金のデジタル払いを受けるかどうかは、ご自身のニーズや生活スタイルなどを鑑みて検討してみてくださいね。
(出典)厚生労働省「資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について」