現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第43回は、「マテリアルハンドリング」の世界トップメーカー、ダイフク(6383)を取り上げます。

  • ダイフクは、「マテリアルハンドリング」の世界トップメーカー
  • 倉庫のオペレーションを9割削減するなどユニクロの生産、物流自動化に貢献
  • 2023年6月6日には年初来高値2999円。過去の株価から戻り余地大きい

ダイフク(6383)はどんな会社?

ダイフクは、モノや材料などの移動に関する搬送システムや機器全般を表す、「マテリアルハンドリング(Material Handling、マテハン)」の世界トップメーカーです。

半導体や自動車などの工場、物流倉庫で使われる自動搬送システムやラインを手がけています。また、身近なところでは、空港の手荷物搬送ラインやガソリンスタンドなどの洗車機も大きなシェアを持っています。

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ダイフクの創業は1937年です。大阪市西淀川区で、製鉄工場向けに鍛圧機械を作る坂口機械製作所として設立されました。しかし、やがて事業に行き詰まり、1947年ごろから、祖業である荷物の運搬機械を手がけるようになり、その後業績が回復します。また、この年に社名を今の社名のダイフクにつながる大福機工に変更しました。当時、大阪と福知山に工場があったことに由来しています。

さらに、その後1957年には、コンベヤシステムの1号機をトヨタ自動車の刈谷工場に納入します。当時の日本の自動車産業はまさに高度成長期の入り口でした。大量生産、自動化のニーズにより、ダイフクの業績は、さらに拡大してゆきました。

近年では、2018年にユニクロを展開するファーストリテイリングと戦略的グローバルパートナーシップを締結すると発表し、話題となりました。100人必要な倉庫のオペレーションを9割も大幅に削減するなどユニクロの生産、物流自動化に大きく貢献しました。

コロナ禍では、ネット通販の普及加速による物流倉庫のマテハンシステムや、半導体の需要増加によるクリーンルームなどの搬送システムが伸びていました。

ダイフク(6383)の強みは?

ダイフクの強みは、社是に「モノを動かし、心を動かす」とあるとおり、マテハンシステムの機器からソフトウェアまでを自社で開発している点です。古くからモノの移動に関する知見を積み上げており、関連する特許の保有数は世界各国で3700件以上にも上ります。

また、システムの納入だけでなく、コンサルティングから企画、メンテナンスやアフターサービスまで手がけています。現代の産業では、ありとあらゆる場面でモノの移動の自動化ニーズが広がっており、マテハンシステムに関する実績がユーザーに支持されており、マテハン業界の売上高では8年連続世界1位を獲得しています。

ダイフク(6383)の業績や株価は?

ダイフクの今期2024年3月期の業績予想は、売上高が前期比0.5%増の6050億円、営業利益が7%減の545億円を予想しています。前期に伸びていた半導体業界の一時的な投資抑制の影響、インフレや人件費の高騰によるコストの増加で減益を見込んでいます。

6月9日の終値は2925.5円で投資単位は100株単位となり最低投資金額は約30万円です。

ダイフク(6383)の株価(2020年7月~、月足)
ダイフク(6383)の株価チャート

株価は、2021年1月に上場来高値4499.9円を付けたのちは、売りに押され、2022年末に2029.9円まで売られました。コロナ禍で巣ごもりによるECの普及への期待で変われたもののその後は反動で売られる展開となりました。しかし、2023年の株価は戻り基調が続いており、6月6日には年初来高値2999円をつけるなど、見直されています。

人件費の高騰やコロナ禍で先送りされてきた企業の設備投資意欲が高止まりしています。財務省の法人企業統計によりますと、金融・保険業を除く全産業の設備投資額は1〜3月期、前年同期比で11%増の16兆5395億円と15年ぶりの規模になったようです。

東京株式市場では、同じく設備投資大手のファナック(6954)やオムロン(6645)なども買われており、ダイフクについても過去の株価から比べると戻りの余地も大きいと見ています。

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