宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回寄せられたのは、投資信託を6年持ち続けたところ元本割れを起こしているという相談。新しいNISAのスタートを目前に控えた今、長期投資に合った投資信託の選び方について考えます。
- たとえ長期投資であっても「偏った分散」「高値つかみ」をすれば失敗する
- 高値つかみを防ぐには、スポット買いであっても買う時期を複数に分散する
- 長期投資に合ったアクティブ型投資信託を選ぶポイントは「運用報告書」
同じような投資信託ばかり、高値で買ってしまう失敗
【質問】
「お金を増やすためには長く投資信託を持ち続ければ良いと」聞いた気がします。銀行で最初は1本の投資信託を買い、それが今では7本まで増えています。でも、どうやらトータルでは元本が減っているようです。もうやめようと思いますが、それでも長く持ってればいいのでしょうか?
今回の相談は、直近で相談を受けた相談になります。
金融機関で6年前にスポット買いで始めた投資信託から毎年商品を増やして、現在は7本の運用商品のうち、3本だけは2年前から積立をしているとのことでした。
例えば、6年前に日本株式型の投資信託を運用を始めたならば、今から6年前は株に投資するチャンスで、普通ならプラス運用しか考えられません。どこでどうやってマイナス運用になったのか? 逆に聞きたくなりました。
元本割れになった理由は、複数の商品に分散投資したところ、間違って偏った分散に走ってしまったこと。そして、スポット買いで高値つかみを一気にしていた結果でした。
これは、金融機関の売り手側のアドバイスに問題が多分にあり、個人の長期投資がなかなか根付かない原因でもあります。長期運用と言いながら、同じような商品で固めてしまう。これでは手数料を稼ぎたいための売り込みと言われても仕方ありません。
長期投資を根付かせるために運用会社に求めること
個人から少額のお金を集めて、株式などを運用する投資信託。来年度から始まる新NISA(少額投資非課税制度)で脚光を浴びていますが、ひっちゃきになっているのは売り手側が中心なのかなぁという感じです。投資枠を大幅に拡大して、眠っているお金の流れを運用商品に誘導する使命を、金融機関が政府から託されているともいえますが、長期投資を根付かせるためには、商品開発から販売に至るまでのシステムを変えないと難しいと感じます。
日本の運用会社の大半は大手銀行、証券会社、保険会社の傘下にあります。親会社の意向に合った、話題性があり売りやすい投資信託の設定を優先させたり、運用経験の浅いファンドマネージャーを抜擢したりと、商品の品質とは関係ない動きが指摘されています。顧客の目先を変えながら、とにかく多く売ろうとして商品を乱発してきたのが、日本の運用会社のやり方に見えます。
米国で長期投資が根付いてるのは、投資信託を運用する運用会社が、独立した一つの会社形態として成り立っているからです。
米国の運用会社には、決定権がある取締役がいます。投資先やお金を管理する先を選ぶのも取締役で、持続的にお金を増やそうと努力をし、お金を出資する投資家の期待を得て、継続して成長していきます。まさしく企業そのものです。
昨今、日本のある運用会社で、親会社の意向と違うということでファンドマネージャーが解任されるニュースが流れました。「お客様あっての運用」のために地道に口座を増やそうとするよりも、目先の利益に重点を置くということでしょう。
日本で長期投資が根付くまでには、まだまだ時間がかかるでしょう。金融機関のお客様のお金は、退職後の資金や子供の教育資金など目標とする期間は長く、運用はそれに合致したものでなければなりません。まさに長期投資そのものです。その流れが、米国では以前から根付いているのが現実なのです。
「スポット買い」でも買う期間を複数回に分ける
さて相談者の質問ですが、6年間で7本の投資信託は、分散がきちんとわかったうえでの運用であればいいのですが、人気商品でパフォーマンスが良いからと、その都度増やした商品が多いことがわかりました。結果、高値つかみとなってしまいました。
7本の商品の内訳も分散されておらず、世界株式型中心など偏ったものでもありましたので、まずは半分くらいに絞ったうえで、今度は投資信託の購入先も変えてみてはいかがですか?とアドバイスさせていただきました。
例えば、50万円でスポット買いの場合は必ず、時間、期間を置いて購入すること。5万円を10回に分けて買ってもいいのです。「面倒だからいいや」ではなく、面倒なら買わない方がましです。後で50万円が10万円になってしまうことも、リスク商品である投資信託には当然ありうることですから……。
後で泣かないためにも、実行第一です。
長期運用指向のアクティブ型投資信託を選ぶ
そして積み立ても含め当然のことですが、買付・保有・解約などにかかる手数料にも気を配る必要もあります。その一方で、パフォーマンスを上げるためには、アクティブ運用型の商品も組み入れておく必要性も案内しています。
新NISAでも「長期、分散、積立」と親和性が高い、ノーロード(買付時の手数料がゼロ)かつ保有時の手数料も低コストであるインデックス運用型の商品が中心になってくるはずですが、大半の人が行う投資行動と同じようにしていたら、自分も同じようになってしまうことも頭に入れておくことです。
つまり、
相場の大暴落だ → それ、みんな損するから一斉に解約だ → 結果、みんなで損をした
となってしまいます。
長期運用を理解していない投資家が、暴落にあわててしまって損切りをする。その行動を次々と続けていくと、投資信託の資産総額は減り続けて、新たな投資家のお金も集まらなくなります。そして運用会社は運用どころではなくなり、商品自体が終焉を迎える。残念ながら日本の投資家の多くが、このような行動を取ってしまっています。これはまさにありえる話です。
目先の低コストばかり気にしていては、最終的に高コストとなって跳ね返ってくるかもしれません。長期的なパフォーマンスに優れるアクティブ運用の投資信託は、購入する投資家の心理も長期運用指向の傾向にあるので、暴落などの下げ相場でも我慢できる投資家心理に強みがあり、それが商品自体の強みにもなります。
相場の大暴落だ → それ、みんな安く買おう → 結果、みんなで儲かった
これが理想の姿ではないでしょうか。
著名な投資家ウォーレン・バフェットさんも推奨する「バイ・アンド・ホールド」とは、資産価格が上下しても持ち続けるという長期投資の理論です。この意味でも、アクティブ運用の投資信託を入れておくことをお勧めしたいと思います。
長期運用に適した商品かを運用報告書で確認
でも、「どうやって商品を見つければいいの?」という疑問もあると思います。投資信託などの運用商品には必ず運用報告書があり、運用の仕組みなどが細かく記載されています。まずは、気になったアクティブ運用投資信託があったら、運用報告書で運用方針を読み込んで、以下のことを確認してみてください。
- 文章に「長期的」などのキーワードがあるか
- 運用期間が最低でも15年を超えているか
- 決算時の分配金が出ていないか
分配金が出たことがない商品であれば、バリバリの長期型である証拠となります。
何事も調べることから始まります。新NISAでは、つみたて投資枠だけにとらわれず、成長投資枠にもお金を振り分けていただきたいと願います。