現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第53回は、衛星放送やメディア事業に加えて、衛星通信サービスを軸とした宇宙事業を推進するスカパーJSATホールディングス(9412)をご紹介します。

  • スカパーJSATは日本の宇宙ビジネスの先駆者で、アジア最大の衛星通信事業者
  • 宇宙ビジネスの拡大とともにスカパーJSATホールディングスの成長も期待される
  • 株価は2022年以降、上昇トレンドに回帰。PBRは1倍割れで上昇余地に期待

スカパーJSATホールディングス(9412)はどんな会社?

スカパーJSATホールディングスは衛星放送、ケーブルテレビ、インターネットなど多岐にわたるメディア事業や、人工衛星の運営などの宇宙事業を手がけています。

宇宙事業のJSATとメディア事業のスカイパーフェクト・コミュニケーションズが、持ち株会社化を経て、2007年に東京証券取引所に新規上場しました。
グループとしては、1989年に日本企業として初めて通信衛星を打ち上げて以来、30機以上の衛星を活用してきた宇宙ビジネスのパイオニア企業でもあります。

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スカパーJSATホールディングス(9412)の強みは?

スカパーJSATホールディングスの強みは、宇宙事業の成長性です。宇宙事業では、自社で打ち上げた人工衛星や、米国の衛星通信最大手のインテルサットと連携し、災害時のバックアップ回線や航空機、船舶向けインターネット回線などの衛星通信サービスを展開しています。

通信衛星
スカパーJSATは通信衛星を介したインターネット回線や、衛星画像を活用したサービスを提供している(写真はイメージです)

衛星通信サービスとは、宇宙空間にある衛星を介して行う通信です。赤道上空36,000kmの静止軌道上にある衛星が日本全土をカバーし、海・空・地上のどこにいても大容量通信が可能です。また、自然災害時には地上のネットワークをバックアップする大切な役割があります。

2023年3月末時点では16機の衛星を保有しており、アジアでは最大の通信衛星事業者となっています。衛星から得られるデータを活用した解析サービスも事業の裾野が広がっています。6月には伊藤忠商事とともにカタールの環境省向けにタンカーや淡水化プラント、発電所などの衛星画像を解析し、オイル漏れなどを検知するサービスの提供を始めました。

今後は安全保障分野などでもますます宇宙空間の利活用が進められるとみて、成長が期待される事業となっています。

スカパーJSATホールディングス(9412)の業績や株価は?

スカパーJSATホールディングスの今期2024年3月期の連結業績予想は、一般事業会社の売上高に相当する営業収益が前期比0.1%減の1210億円、営業利益が0.8%増の225億円と、微増益を見込んでいます。

8月に発表した4~6月期の営業利益は25%増と大幅増益でした。宇宙事業では、グローバルやモバイル分野で船舶、航空機向けの伸びが大きく、為替の円安もプラスに働きました。
国内では衛星通信サービスの機器販売や回線利用が拡大し好調でした。メディアでは、広告宣伝費の効率化やBSスカパー!の費用削減で減収減益ながらもコストコントロールを進めました。

8月3日には米国のインテルサットと共同で手がける通信衛星「Horizons-4」が、米フロリダのケープ・カナベラル宇宙軍基地からの打ち上げに成功しました。アラスカ、ハワイを含む米国50州と、メキシコ、カリブ海全域に加え、太平洋地域の移動体通信をサポートすることになり、2024年1~3月期から運用を開始する予定です。

【図表1】スカパーJSATホールディングス(9412)の株価(2022年10月~直近、週足)
【図表】スカパーJSATホールディングス(9412)の株価(2022年10月~直近、週足)

10月20日の終値は704円で、投資単位は100株単位となり最低投資金額は約7万円、予想配当利回りは2.84%です。

株価はコロナ禍後も低迷していましたが、22年4月くらいから上昇トレンドに回帰しました。直近では9月19日に753円の年初来高値を付けた後、一押し入れた局面となっています。チャートの月足でみると2000年のITバブルの時につけた2980円からはまだ戻りの余地があり、2015年4月の806円をうわ抜けるとさらに買いに弾みが付きそうです。

【図表2】スカパーJSATホールディングス(9412)の株価(2000年~直近、月足)
【図表2】スカパーJSATホールディングス(9412)の株価(2000年~直近、月足)

純資産からみた株価の割安性をはかる指標のPBR(株価純資産倍率)は0.79倍と、解散価値である1倍を下回っています。現在の日本株の主なテーマである東京証券取引所によるPBR1倍割れの是正勧告など、業績面からも上昇の余地があると期待しています。

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