宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は、いよいよ来月に迫った新NISAの活用法に関して、「運用して増やしたい、でも絶対に失敗したくない」という40代女性に向けてアドバイスします。
- 毎年最大360万円、合計1800万円を非課税で運用できる新NISA
- 初心者が新NISAで失敗しないためには、2本の投資信託の積立投資から始める
- 投資する商品は自分で決めることが重要。どこで口座を開設するかもポイントに
新NISAは、投資家にとっては「夢の制度」だが……
【質問】
いよいよ新NISAが始まりますが、絶対に失敗したくありません。そこで教えてもらいたいのですが、新NISAを使って運用する商品は、何にすればベストなのでしょうか?
今回は40歳代女性の相談になります。なるほどなるほど、新NISAで損をしたくない、儲かりたいということは、多かれ少なかれ皆が思っていることでしょう。新NISAでは非課税投資枠が、これまでのNISAより増額されたことで、なおさらお金をつぎ込まないと損だという投資家もいるので、よけいにそう感じてしまうかもしれません。
新NISAの非課税投資枠、つまり投資に税金がかからない枠は、「つみたて投資枠」で年間120万円、「成長投資枠」が240万円。合わせると360万円です。さらに、税金がかからない投資期間も恒久化(永久)とありがたい限りです。
新NISAではつみたて投資枠と成長投資枠の併用ができて、税金がかからない保有限度額は1800万円(成長投資枠のみの場合、限度は1200万円)です。積立投資は成長投資枠でもオッケーなので、つみたて投資枠と合わせて最大で年間360万円、毎月にすると30万円を積立投資で運用できることになります。
仮に新NISAを使って、月10万円を10年間、成長投資枠で投資信託を積立投資するとしましょう。元本は10万円×12カ月×10年で1200万円です。
10年後、売却益が300万円出たとしたら、通常であれば300万円の20%である60万円の税金がかかります。この税金が、NISAなら全部タダというわけです。
保有する商品が保有限度額を超えない限り、税金がかからずに運用を続けられてしまう新NISAは、投資家にとっては夢の制度でもあります。しかし、NISAは儲かって初めて恩恵を得られるものです。マイナス運用だと、得られるものは損しかありません。この制度をできる限り有効に利用するためには、税金がかからない期間をうまく利用しながら、いかにパフォーマンスが良い投資商品を選ぶのかが重要になってきます。
投資に「絶対」はないが、失敗しない可能性は高くできる
旧NISAでは、つみたてNISA(長期での運用)、一般NISA(短期を含む運用)と明確に分けられていた運用法が、つみたて投資枠と成長投資枠の併用がオッケーとなったことで、投資家心理が「太っ腹」になってしまい、長期運用と短期運用のバランスが崩れていくかもしれません。
使い方が自由な新NISAだからこそ、運用の目的とその目的に合った運用法について、なおさら考えていく必要もあるかもしれません。ということで今回は、相談者が求める「絶対失敗したくない運用法」について考えていきます。
まずは、新NISAで運用できる商品にはどんなものがあるかを見ていきます。NISAで使える商品は現在のところ、
つみたて投資枠→投資信託(一部ETF含む)
成長投資枠→国内株式(ETF、J-REIT含む)、外国株式(ETF含む)、投資信託
※投資信託は、金融庁の基準に沿って届け出が出されたものに限る
という縛りがあり、新NISA全体では投資信託がメインとなっています。
今回の相談者のように、最近は主婦の方々が、ご主人が資産運用に興味を示さないと言って運用を始めるケースが増えているようです。この場合、ご主人以上に「生活費(お金)を自分が担っている」という感覚があるためか、隠れて運用しているわけではないのですが、どうしても「失敗したくない」が前面に出てくることになります。
本来、投資信託のようなリスク商品には「絶対」はないのですが、運用で失敗しないことは、いくつかの約束事を守れば、限りなく可能なものになってきます。私がこれまでに学んだ3つの約束事を話していきますので、ぜひとも実行してみてください。
① 投資商品は、多くても2本の投資信託だけで十分
リスク(途中の値動き)を抑えたければ、自分でもわかる企業などを投資対象としている、日本株がメインの投資信託とします。「インデックス型」と呼ばれる、指数に連動した商品でも構いません。
そして運用期間は最低でも10年以上取って、積立運用をします。途中のスポット買い(一括購入)はいりません。
2本の投資信託で、分散投資をすることも考えてみましょう。例えば、運用ポートフォリオ(商品の比率)を、日本株(80%)がメインであれば、もう一方の商品(20%)は債券などを含んだものにするのもいいと思います。
そして一番重要なことですが、失敗しない運用を目指すのであれば、個別株式への投資などは、絶対しないことが鉄則となります。もう一度確認します。積立のみです。後はしないことです。
② 投資商品は自分で決める
他力本願で商品を決めてはいけません。勧められたから買う、これほど無責任なことはありません。損すれば金融機関のせいにするだけです。
商品を買うことは、自分に責任を負うことです。そのために、どの商品がいいか調査すること、商品の報告書を読むことに時間をかけていくことになります。長期にわたって積立運用をしていく商品ですから、まずはネット検索で、「15年以上長期運用の日本株投資信託」などと検索して調べることが第一歩かもしれません。そうやって商品についてしっかりと調べて、自分で納得して買うことができれば、長期運用が楽しみになってくるはずです。
③ 新NISA口座を作る際は、ネット証券か、直接申し込み可能な投資信託会社で開設する
気になった投資信託が決まったら、その商品がどこで売られているか、金融機関を調べなければいけません。商品を検索して、ホームページや交付目論見書などの資料を見ると、販売されている金融機関がほとんどの場合わかります。金融機関名が記入されていない商品は、投資信託会社(運用会社)で直接販売しているものなので、運用会社に問い合わせて申し込みます。
金融機関で投資信託を買った方のよくある話として、「ついつい買ってみた」というものがあります。特に証券会社には、投資信託に限らず投資できる商品が幅広く用意されています。よくわからないまま商品を買ってしまい、損をしてしまってはたいへんです。失敗したくなければ「ついつい」はやめるしかありません。金融機関の対面での口座開設は、初心者にとっては「ついつい買ってみた」という誘惑の温床にもなりえます。
新NISAの利点は「恒久化」と「投資枠が自由に使える」
この3つの約束事を守れれば、初めての運用でも、ある程度のパフォーマンスを得ることが可能となることでしょう。
投資する商品が増えれば、それだけリスクも高まります。まずは肩の力を抜いて、最初は月1万円の積立から始めてみましょう。年12万円の投資で慣れていき、徐々に積立額を増やしていきながら、運用の醍醐味を体感するのもいいと思います。
最後になりますが、新NISAの最大の利点は、つみたて投資枠と成長投資枠の使い方が自由で、非課税で運用できる限度額の上限が1800万円となったことにあります。しかしながら、毎月30万円も、非課税投資枠を使い切れるでしょうか? そもそも、投資信託のようなリスク商品の運用は、余裕資金で行うことが前提です。今の時代、余裕資金が月30万円ある方がどれだけいるでしょうか?
収入の一部を運用に回してお金を増やしていきたい一般の方にとって、新NISAの利点は非課税期間の恒久化と、つみたて投資枠・成長投資枠ともに長期運用を推進できる制度になったこと、この2点に尽きます。