現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第56回は、研究・産業・医療の3つの分野で、理化学機器などの卸売りを行うアズワン(7476)をご紹介します。

  • アズワンは研究用機材や医療用品、生産現場向けなど理化学機器の卸売りを行う企業
  • 景気変動の影響を受けにくく、12期連続増益。企業のDXによる受注拡大を見込む
  • 今期は大幅減益の見通しだが、製造業の国内回帰や研究開発の活発化に期待

アズワン(7476)はどんな会社?

アズワンは、研究用機材や介護・医療用品、生産現場向けなど理化学機器の卸売りのリーディングカンパニーです。研究、産業、医療の3つの事業分野を中心に、研究に必要な機器や商品の取り扱い点数は約1000万点以上と、業界でも圧倒的な品揃えを誇っています。

また、アズワンは商社でありながら、収益性の高い独自輸入品やプライベートブランドなどのオリジナル商品も4割取り揃えています。

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同社は1962年に、科学機器を販売する「井内盛栄堂」として大阪に設立されました。カタログ販売をメインとして事業を拡大し、物流体制も充実させていきました。2001年には社名を現在のアズワンに変更しています。

アズワン(7476)は事業の安定性が魅力

アズワンの魅力は、業績の安定したビジネスモデルです。

アズワンの売上高の分野別シェアは、大学や民間企業などの研究向けが約6割、病院など医療・介護向けが2割、食品や製造業などの生産現場向けが2割となっています。ユーザーである研究者は、カタログやアズワン提供のウェブサイトで商品を検索して発注します。ユーザーへの配送や取引は、アズワンの取引先の販売店が主となって行います。試薬や研究機器は取り扱いに知見が必要な製品も多いためです。

研究用機器
アズワンでは取り扱いが難しい研究用機器などの販売を、知見を有する販売店を通じて行っている(写真はイメージです)

その販売店の数は4700社にものぼり、前述のように分野も様々であることから、景気の変動の業績を受けにくいビジネスモデルとなっています。
そのため、前期2023年3月期まで売上高は13期連続増収、純利益は12期連続増益となっており、日本の医療と技術開発を支えながら着実に成長しています。

今後については、企業などのDX(デジタルトランスフォーメーション)化が受注拡大につながっていくことが期待されます。これまでユーザーの多くは、各担当者ごとに別々に研究機器などの購買を管理していました。アズワンの提供する集中購買システム「OCEAN」を利用することにより、ユーザーは購買価格を安くすることができ、DX化により管理コスト、労力も大きく軽減できます。大学、企業など285社(機関)がアズワンの集中購買システムを利用しています。

アズワン(7476)の業績や株価は?

アズワンの今期(2024年3月期)は、売上高が前期比6%増の966億円、営業利益が9%減の103億円を見込んでいます。前期(2023年3月期)に過去最高の売上高、営業利益となりましたが、今期は一転大幅減益の見通しです。

医療・介護向け分野では、前期までの新型コロナ感染対策の特需の反動減で減益を見込んでいます。また、今年の4月に兵庫県尼崎市に開設した物流センターのコストも減益要因となります。

一方で、脱炭素、バイオ技術をはじめとした研究開発が活発化し、EC(電子商取引)利用もますます拡大が進むと見込まれます。また、医療・介護向けでは脱コロナで医療機関での一般診療や手術需要も伸びると予想されます。

12月8日の終値は5267円で、投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約53万円、予想配当利回りは2.15%です。

【図表】アズワンの株価(週足)
アズワンの株価(週足)

株価は2021年9月に上場来高値の9120円を付けましたが、その後は下落トレンドが続き、23年10月には年初来安値4548円まで売られました。その後は下げ一服となり、最近では5000円~5200円のレンジでもみ合いとなっています。

前述のDX化のほか、円安で半導体など製造業の工場を海外から国内に回帰させる動きがあり、クリーンルームをはじめとした生産現場の備品などの需要が今後増えると見込まれます。

化学・医療専門機器の卸ではトップクラスのアズワンですが、卸や小売りを含めた科学機器市場の市場規模は約1兆円と推定され、アズワンのシェアはまだ5%に過ぎず、成長の余地は大きく残されています。

コロナ禍特需一巡で今期は減益予想ですが、来期以降のプラス要因も大きく、株価は先行きの成長を織り込み上昇トレンドに転じる可能性もあると見ています。

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