「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は、円安の不安と米ドルへの懸念が高まる中で、NISAでも投資できる金(ゴールド)について考えます。
- 円安で、ドルも心配な状況で、お金に近い選択肢として考えられる金(ゴールド)
- 金への投資は、ETFや投資信託をNISAの成長投資枠で買う方法もある
- 金は価格変動とドルの為替変動の両方の影響を受けるうえ、利息や配当金はない
今や1ドル155円を超える日は珍しくなく、円安ではなく円弱の状態が続いています。先日、留学生と話をしていたら、「故郷に10万円を送りたければ、14万円くらい送らないといけない」と暗い声で語ってくれました。物価高に伴う定額減税も複雑極まりないですが、減税に伴う政府の減収は、結局、国債を発行することでカバーするのだとか。これでは、むしろ円弱を加速させ、ますます物価が上がってしまうような気がしてなりません。
ドルも不安?
留学生も時間に制限はありますが、勉強とともにアルバイトも頑張っています。「ドルでお給料がもらえると良いね」などと留学生と話していますが。
ところで、「円弱」の時代ですから、「ドルなら安心」なのでしょうか?
ドルは言うまでもなく、アメリカの通貨です。そのアメリカも国内では分断が進み、貧富の差が拡大しています。また、アメリカは世界的にもBRICsなど新興国の台頭を許し、ウクライナとロシアの戦争やガザ地区での戦闘を終わらせることができません。アメリカは「かつてのアメリカではない」という印象をお持ちの方も多いのではないでしょうか? ですので、「ドルでも」心配という方も多いと思います。
とはいえ、では通貨という点で「ドル以外の選択肢」というと、なかなか見出せないのが現状でもあります。消去法で「やっぱりドル」という結論になるかもしれません。
金(ゴールド)という選択肢
さて、お金ではありませんが、お金に近い選択肢として考えられるのが「金(ゴールド)」ではないでしょうか?
歴史の授業ではありませんが、その昔、多くの国で「政府が発行するお金」の信用の裏付けとして「金(ゴールド)」が使われていました。そうです「金本位制」ですね。今は金本位制ではなく管理通貨制度の時代ですから、「金(ゴールド)」が信用の裏付けということではありません。しかし「金(ゴールド)」への信用と価値は今でも世界共通ですから、輝きは失せていません。では、「金(ゴールド)」への投資は、どのようにすれば良いのでしょうか?
金(ゴールド)を扱っているお店に行くのも良し……NISAを利用するのも
田中貴金属さんや三菱マテリアルさんのお店やサイトで「金(ゴールド)」そのものを買ったり、あるいは積み立ての手続きをするのも良いでしょう。ところで、NISAで「金(ゴールド)」に投資を出来るのは、ご存知でしたか? 「金(ゴールド)」を裏付けとしたETFがあります。
ETFなら上場株式と同じ投資になりますので、NISAの成長投資枠で投資が可能です。なお、ETFですので、厳密には「金(ゴールド)」そのものではありません。しかし、ETFの中には下記のグラフで示したもののように、ある程度の口数(=株数)の場合、手数料を払えば「金(ゴールド)」の実物と交換できるものもあります。
また「金(ゴールド)」を裏付けとしたETFにのみ投資する投資信託(=以下、本稿ではファンドと称します)もあります。ファンドですので、NISAの成長投資枠で積立投資も可能です。なお、本稿時点ではつみたて投資枠の対象になっているものはないようです。
金(ゴールド)への投資の留意点
「金(ゴールド)」は、世界中でドルで取引することが決まっています。やっぱりドルですね。国内では「金(ゴールド)」そのものも、「金(ゴールド)」を裏付けとしたETFも、またファンドも、皆、円で買う(あるいは投資する)ことが可能です。ですが、その円による価格も為替の影響が織り込まれる点に留意する必要があります。また「金(ゴールド)」は、もともと価格の変動があります。ですので、価格変動と為替変動の二重の変動リスクがあることに留意しなくてはなりません。
また「金(ゴールド)」は、かつては「お金の信用の裏付け」でしたが、いつの時代もお金そのものではなく、単なる鉱物資源に過ぎません。ですので、「金(ゴールド)」から利息や配当金などのようなインカムゲインを得ることはできません。
二重の変動リスクにインカムゲイン無しというと、リスクが低いとは言えません。「金(ゴールド)」はNISAの成長投資枠で積み立てが良いでしょう。あるいは、「金(ゴールド)」そのものの積み立ての並走もありかもしれませんね。