現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第71回は、国内・海外でイタリアンレストランチェーンを運営し、料理のクオリティとリーズナブルな価格で支持されているサイゼリヤ(7581)をご紹介します。

  • サイゼリヤの強みはリーズナブルな価格とオペレーションの徹底した標準化
  • 国内事業は直近で赤字だが、中国など海外では値上げや客数増で収益が成長
  • 2024年8月期は大幅増収増益を見込む。上場来高値圏からさらなる上値追いも

サイゼリヤ(7581)はどんな会社?

サイゼリヤは、国内・海外でイタリアンレストランチェーンの「サイゼリヤ」を運営しています。リーズナブルな価格でクオリティの高い料理を提供すると評判も高く、利用されたことのある方も多いのではないでしょうか?

直近の店舗数は国内が1038店舗、アジア地域では中国・上海160店舗、広州175店舗を中心に、北京、香港、台湾、シンガポールなど約500店舗を運営しています。

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同社は、創業者の正垣泰彦代表取締役会長が1967年に、千葉県市川市本八幡の個人店舗「レストランサイゼリヤ」をスタートしたのが始まりです。当初はわずか36席の洋食屋として開店しましたが、客入りは悪く苦戦が続きました。

その後は、欧州へ出向きローマのイタリア料理店でイタリア食文化の豊かさに感銘を受け、イタリアン料理専門店として再オープンしました。また、メニュー価格を大幅に値下げしたところ連日大行列となり、知名度が上がり現在の礎となりました。

サイゼリヤ店舗
効率性を重視した店舗運営が低価格を支える

徹底した産業化と海外展開

サイゼリヤの強みの1つが価格のリーズナブルさです。国内の外食チェーンなどが原材料高やコスト上昇で軒並み値上げに踏み切る中でも、サイゼリヤは「値上げしない宣言」を貫いています。消費者にも支持され客数増につながっています。

店内の調理などのオペレーションも徹底した標準化、単純化を進めています。例えば代表メニューの「ミラノ風ドリア」であれば、時期によって最適な米と炊飯条件を選択し、ライスの炊飯を工場でまとめて行い効率化するとともに品質を確保しています。そのほか野菜などの農産物についても農家と契約し、必要な分だけを生産してもらう「計画生産」を進めることにより、リーズナブルで高品質な野菜を調達しています。

また、現状国内事業が赤字と苦戦する中で、海外事業の成長が期待されています。海外では賃金の上昇が続いていることもあり、現地の経済状況を分析しながら、適切な値上げを続けており、収益の成長につながっています。

海外では、現地の食文化に合わせた独自メニューを取りそろえており、リーズナブルで品質の高いイタリア料理が食べられることで、海外の店舗でも行列ができるなど客数の増加も続いています。注力市場である中国でも、低価格志向とコストパフォーマンスを求める層に支持されSNSなどでも取り上げられています。

サイゼリヤ(7581)の業績や株価は?

サイゼリヤの今期2024年8月期の決算は売上高が前期比15%増の2110億円、営業利益が81%増の131億円と、大幅増収増益を見込んでいます。国内既存店の客数増加や円安による海外事業の増収が見込まれます。利益面では、セルフレジの導入や、QRコードと消費者のスマートフォンを使った注文方式の導入を進めています。こうしたオペレーションの見直しなどによる販管費コストの低下で採算が良化する見通しです。

【図表】サイゼリヤ(7581)の株価(2022年1月~直近、週足)
サイゼリヤ(7581)の株価(2022年1月~直近、週足)

7月19日の終値は6110円で投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約62万円、配当利回りは0.41%です。直近で、株主優待制度を廃止し同時に配当を増配すると発表しました。海外の機関投資家などから株主還元の公平性を求める声に対応したかたちです。

株価は足元で上場来高値圏で推移しており、他の外食チェーン株と比べても見劣りしない力強い値動きとなっています。国内で不採算店舗の閉鎖などを進める一方、海外では新規の出店を強化しています。2024年5月には中国広州の食品子会社に新工場建設の資金として増資を行いました。

月次の既存店売上高でも、客数は前年同月比で2桁%の伸びが続いており、業績の拡大に期待した買いにより、さらなる上値追いの余地があるとみています。

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