宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は、止まらない物価上昇(インフレ)に対応する日本の経済政策や、米国のトランプ大統領の動向を気にしながら、日経平均株価の先行きをテクニカル分析で予測していきます。
- ここ半年間の日経平均株価は、テクニカル的にも方向性が定まらない
- 日経平均株価はアイランドリバーサルが3度出現し、上値を意識すべき局面に
- 高値圏での「トウバ」はトレンドの転換点か。日米の経済政策にも注目を
デフレ完全脱却のために、日本は利上げをどう進めるか
【質問】
ハワイ旅行に行ってきました。そこでビックリしたのは、物価が高いこと! まさかの飲食代、日本で食べるラーメン一杯1000円が、ハワイは日本円ベースで約3000円と約3倍超高く、全てのモノがそうなっています。ハワイに比べたら日本の物価高なんてたいしたことがないと感じますが、日本の値上げ、これからどうなっていくのでしょうか?
前回、日本経済を安定させるためにはデフレ脱却は最重要課題で、そのためにはインフレは避けて通れないという話をしました。
20日には、世界経済のキーマンともいえる米国トランプ大統領が就任となり、日本も含め世界経済が混迷を深めていきそうです。
はっきり言えるのは、方向性が決まるまでは、まとまったお金で投資をする環境ではないことです。8年前のトランプ政権誕生時の株高と比較しても、今回は株価に勢いがないことがわかると思います。
米国にはインフレ再燃のリスクがありますが、日本の投資環境について言えば、デフレを早く終わらせなければなりません。「デフレは終わった」と宣言することができれば、日本経済は良い方向に行っていることが国民にとっても明確になり、少なくとも経済にはプラスに働きます。政府・日銀にとっては、痛みを伴う経済改革を上手くコントロールをしていけるか? そこにかかってきます。
インフレ対応の政策は簡単そうに見えるかもしれませんが、みんなが使っているお金の価値を高めるには、相当な力関係の変化が必要となってきます。米国の利下げと日本の利上げにより金利差が小さくなる効果が、株価にどの程度影響するのか。日銀と日本政府、そして大手だけではなく中小企業も含めた経済界が、痛みを伴う改革を進めていけるのかにかかってきます。
ここ半年間の日経平均株価を見ても、上げたり下げたりの繰り返しで、テクニカル的にも方向性が定まらないチャートとなっています。
そこで短期(0~6カ月)に焦点をおいて、テクニカル的に日経平均株価はどうなっていくのかを考えてみたいと思います。
「アイランドリバーサル」が3度出現した日経平均株価
その前に参考にしていただきたいのは、相談室第118回からの、半導体銘柄のルネサスエレクトロニクスを題材にしたチャート分析です。
ロウソク足から買い場を探るための「アイランドリバーサル」について話しました。復習として、アイランドリバーサルとは、窓を開けて上昇(下落)した後に、再度窓を開けて上昇(下落)した株価の動きのこと。離れ小島(アイランド)のように見えることです。
半年前から今現在のルネサスエレクトロニクスの株価チャートを見てみても分かるように、ロウソク足、移動平均線ともにはっきりしないトレンドになっています。
上昇トレンド時にアイランドリバーサルができると天井のサインとして活用されることをふまえ、中長期では買いでも、短期的には様子見と考えます。
ここで日経平均株価のトレンド的判断は、短期的にはどうなるのか? チャート分析をしていくと、ルネサスエレクトロニクスと同じようなチャートが始まっていることに気づきます。
日経平均株価のチャート分析(期間6カ月、日足、移動平均線5日・25日・75日)を具体的に解説してみると、2024年7月13日に4万2426円に到達後、アイランドリバーサル(離れ小島)が出現して窓を数回開けながら8月5日まで急落していき、25%の調整になります。その後は約40%回復したものの、そこからの上昇はなかなか4万円の上値を意識されて、抜けきれません。
10月15日に4万円に乗ったものの、2回目のアイランドリバーサルで、窓を開けて下落です。3万8000円で踏みとどまるも、12月12日に4万円の上値を何と3度目のアイランドリバーサルで再び窓を開けて下落。2025年1月21日現在は、年初めに4万円を超えるも再び、4万円が強く意識されている状況です。
高値圏での「トウバ」は上昇トレンドの転換を示唆
アイランドリバーサルが3度出現したことによって、日経平均株価はかなり上値を意識しなければいけなくなっています。
もっと詳しく解説すると、2回目・3回目のアイランドリバーサルでのロウソク足が、回を追うごとに嫌な形状になっています。長い上ひげで、なおかつ始値と終値が近く、全体の3分の2以上が上ひげになる「陰のピンバー」です。逆T字型の形状で、「トウバ」(塔婆)と呼ばれています。
高値圏でトウバが出現した場合は、売り買いが拮抗し始めていることを指していて、上昇トレンドの転換を示すともいわれます。1月22日現在のチャートを見れば少しずつ切り上がって上昇しているように見えますが、まだまだ予断を許しません。短期トレンドは小康状態で変わりないと思います。
今回はテクニカル的にどうなるのか、日経平均株価の予測を立ててみたわけですが、トランプ政権下で米国株式が上昇し為替が円安に振れれば、日銀が株式相場の下落を抑えながら慎重に利上げをしていく構造は変わらないでしょう。波乱含みの展開になったことは間違いありません。