現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第93回は、かつてITバブル時代に携帯電話の販売で急成長を遂げ、現在は主に通信サービスやオフィス機器のリースなどを手がける光通信(9435)をご紹介します。
- 光通信はOA機器のリースなど、継続的な収入を見込めるストック事業の比率が高い
- 2026年3月期は過去最高の利益を見込む。予想PERは19倍台で割高感は薄い
- 自社で開発したAI商材の拡販に期待。リスク回避のディフェンシブ銘柄として注目
光通信(9435)はどんな会社?
光通信は、個人や法人向けに全国の販売網を生かし、通信サービスやOA機器、光回線などさまざまな商材やサービスの取り次ぎ販売を展開しています。
商品・サービスの販売後に、使用料などに応じた継続的な収入が見込まれるストック事業が収益の中核です。事業セグメントは、売上高の多い順に電力・ガス、通信、飲料、保険、金融、ソリューションやその他です。その他、余った資金は上場株式などに投資し、資産運用からも安定収益を得ています。
光通信は、1986年に創業者の重田康光氏によって創業されました。当初は、電話加入権の販売から事業を開始しました。当時は前年にNTT(9432)が民営化されたばかりで、通信関連商材により事業を拡大しました。90年台後半にはNTTドコモなどにより携帯電話やPHSキャリアが黎明期を迎え、光通信は代理店販売を大きく伸ばし成長を加速させていきました。2000年には株価が24万1000円の高値を付け、ソフトバンクグループ(9984)とともにITバブルで急騰した株の代表格として、有名です。
強固な顧客基盤とストック型収益モデル
光通信の強みは創業以来、全国に広げた顧客基盤です。法人顧客を約130万社、個人顧客を約400万人抱えています。直営販売に加えて、約1000社の代理店を持っており、インセンティブ報酬の厚い実力主義の企業文化も営業力強化につながっています。
さらに通信サービスやオフィス機器のリース・レンタルなど、月々の継続的な料金が発生するストック型ビジネスの比率が高いことが特徴です。ストック型収益の積み上げに加えて、多様な商材を取り扱うことで景気変動の影響を受けにくく、安定した収益基盤を構築しています。

かつては携帯電話販売店の「HIT SHOP」で一世を風靡した光通信。現在は営業力を生かした通信サービスの提供やOA機器のリースなどで堅実に収益を積み上げる(写真はイメージです)
資本効率を追求するためコスト管理も徹底しています。本社は豪華な作りにせず、経営陣の移動でもグリーン車などの負担はしていません。
光通信(9435)の業績や株価は?
光通信の今期2026年3月期決算は、売上高が前期比11%増の7600億円、営業利益が10%増の1150億円と、ともに過去最高を見込んでいます。
電力や保険事業などでストック収益の伸びが見込まれます。また、オーガニックな事業成長に加えてM&Aを活用した事業拡大も視野に入れています。前期にも宅配水、電力小売などの企業をM&Aするとともに携帯電話ショップ、システム開発などの事業売却も進め、常に資産効率の最大化を図っています。
そのほか、AIを活用したサービスの開発・販売を始め、今後の成長が期待されます。光通信はAIオペレーターによるアポイント獲得、営業資料作成などのAI商材を開発しました。企業のDX化が本格化するなかで、光通信の販売力によるAI商材の拡販に注目しています。

6月20日の終値は42570円で、投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約426万円とかなり大きい金額です。しかし東証が上場企業に対し、最低投資金額を10万円程度に引き下げるよう求めており、今後株式分割で投資しやすくなるかもしれません。予想配当利回りは1.7%です。株主優待はありません。
長期の株価チャートは、右肩上がりに値上がりするきれいな形です。年初来高値圏で推移していますが、水準としてはITバブルの上場来高値の3分の1以下です。また、業績の安定成長や資産効率にこだわった経営で、今期も売上高や営業利益は過去最高の予想です。予想PER(株価収益率)も19倍台とそこまでの割高感はありません。
東京株式市場ではトランプ米大統領による関税、中東の地政学的リスクなどを回避できる景気変動に強いディフェンシブ株としても見込まれており、さらなる資金の流入に期待しています。