「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は、NISAを活用した投資の選択肢のひとつとして、REIT(不動産投資信託)について掘り下げていきます。
- J-REITを利用すれば個人で投資するのが難しい東京都心の物件にも投資が可能
- オフィスビルや物流施設にもREITを通じて手軽に投資できる
- 不動産の「地域」と「種類」の分散を実現できるのがREITの特徴
皆さん、こんにちは。前号では「NISAでREITを」というお話をさせていただきました。
本稿ではREITについて、少し掘り下げていきたいと思います。REITなら、個人では難しい不動産物件の「地域の分散」投資や「種類の分散」投資を実現できる、というお話です。
REITなら、個人で所有が難しい地域の物件にも投資できる?
(取得価格ベース、2025年6月末時点)

出所:不動産証券化協会
図は2025年5月末時点の、取得価格を基準とした、J-REIT(国内市場に上場しているREIT)が保有する不動産の所在地別比率です。3割近くを東京都心5区(=千代田区、中央区、港区の都心3区に、渋谷区と新宿区を加えた5区)が占めています。
東京都心5区には、巨大なオフィスビルを筆頭に、外国人を含む多くの客が訪れる商業施設、それに価格も高さも高い立派なマンションが林立している、そんなイメージがありますね。
東京都心5区の不動産に個人で投資をするのは、金額の面ではもちろんのこと、投資する機会という点でも、なかなか難しいと思います。「良い物件を見つけた」時には、すでに完売御礼だったりしますからね。
REITなら、それが可能になります。
国内市場に上場するREITが保有する不動産は、東京都心5区に残りの18区を加えた、いわゆる東京23区で44%を占めます。
一方で東京23区以外では、東京23区を除く関東地方で24.5%、近畿地方で15.5%、という比率になっています。また、REITが保有する不動産の所在地別比率こそ少ないものの、中部・北陸(5.2%)、九州・沖縄(5.5%)、東北・北海道(3.2%)、中国・四国(1.4%)を合わせると15.3%となります。これらのことから、REITによって不動産の「所在地別の分散投資(=地理的な分散)」が可能になります。
なお、日本のREITが保有する海外物件の比率は0.6%に過ぎません。「為替の動向や海外の地政学的リスクに影響されず」に地理的な分散を実現したい、という方には良いかもしれません。
REITなら、個人で所有が難しい種類の物件にも投資できる?
(取得価格ベース、2025年6月末時点)

出所:不動産証券化協会
図は2025年5月末時点の、取得価格を基準とした、J-REITが保有する不動産の用途(=種類)別比率です。
最も多いのがオフィス物件で、次いで多いのが物流施設です。
個人で不動産投資というと、区分所有マンションや賃貸アパートなどの住宅が多いのではないでしょうか? REITの物件にも、もちろん賃貸住宅はありますが、図をご覧いただくと住宅の割合は15.4%と、決して多くはありません……。が、これは取得価格を基準とした場合の話です。
オフィス物件や物流施設への投資というと、個人ではなかなか難しいのではないでしょうか? REITなら可能です。REITなら、他にショッピングモールなどの商業施設や、ホテル、ヘルスケアへの投資が可能です。つまり、物件の「種類の分散」投資を実現できるのです。
まとめに代えて
REITなら、個人では難しい不動産物件の「地域の分散」投資や、「種類の分散」投資を実現できます。
そして、そのREITから得られる分配金の原資は家賃収入を主としています。NISA口座で保有するREITなら、分配金に対する課税はゼロです。
本稿ではREITを称賛してまいりましたが、実際にREITに投資するか否かは、ご自身で判断なさってください。REITにももちろんリスクはあります。