世界的なインフレを背景に、米国FRB(連邦準備理事会)が利上げを開始しました。金融政策が金融緩和から金融引き締めに転換したことで、相場環境にも変化が訪れています。足元の相場環境下における株式ファンド選びの注意点について説明します。

  • 利上げは企業の資金調達コストを増加させ、企業収益の圧迫につながる
  • 将来への期待で買われていた割高な銘柄は敬遠されて株価の調整が起こる
  • アクティブファンドは、「継続的な成長が期待できる銘柄に投資する」商品を選ぶ

インフレの主要因は供給制約と需要増加

今回の主なインフレ要因は、「新型コロナウイルスの感染拡大により工場や港湾の稼働が停止し、供給が制約されたこと」「新型コロナによる需要の落ち込みを抑えるために大規模な財政金融の支援がなされ、需要が増加したこと」の2つと言われています。また、その後発生したウクライナ危機によりエネルギーや小麦など食料の価格上昇を招いています。

一般的にコストプッシュ型のインフレは、消費者などの需要の拡大から起こるデマンドプル型のインフレと違い長続きしないインフレと考えられています。また、今回の需要の増加は大規模な財政金融支援に起因したもので、一過性の需要拡大だと思われていました。

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米国FRBは利上げによるインフレ対策へ

上記のような理由から、当初、米国FRBのパウエル議長も利上げには慎重な姿勢を示していましたが、下表のように米国の消費者物価指数(CPI)が高い水準で推移し続けたことから、利上げによるインフレ対策に舵をきりました

米国消費者物価指数(CPI)推移(単位:%)
  1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
2021年 1.4 1.7 2.6 4.2 5.0 5.4 5.4 5.3 5.4 6.2 6.8 7.0
2022年 7.5 7.9 8.5 8.3                

0.00%~0.25%に据え置いていた金利の誘導目標を3月17日に0.25%引き上げ0.25%~0.50%とし、5月4日には0.50%引き上げ0.75%~1.00%としました。また、FRBのパウエル議長の記者会見では今後2回も0.50%引き上げることを選択肢にすることや、量的金融緩和でつみあがったFRBの資産圧縮を6月から開始することも決定したとコメントしています。

設備投資や需要を抑え、景気の過熱感を冷ます

利上げは、需要増加による景気の過熱を抑えることを目的に行われる中央銀行(FRBなど)の金融政策のひとつです。一般的には、1回の利上げを0.25%程度に抑えて景気の様子を見ながら行っていきます。中央銀行か利上げを行うことで民間銀行の貸出金利も上がります。それにより、企業は設備投資などに慎重になります。個人もローン金利などが上がるため大きな買い物に慎重になり、景気の過熱感が抑えられインフレが鎮静化していきます。

上記のような需要増加(デマンドプル)によるインフレには、利上げは有効な金融政策になります。ただし、コストプッシュ型のインフレに有効なのかよくわからない部分があり、景気を後退させた状態で物価が上がるスタグフレーションを懸念する声もあります。

株式ファンドを選ぶ際の注意点

利上げは貸出金利の上昇により世の中に出回るお金を減らすことにより、インフレの鎮静化を図る目的で行われています。また、貸出金利の上昇は企業の資金調達コストを増加させ、企業収益の圧迫につながります。そのため、投資家は、現在の業績や今後の成長の継続性に対してよりシビアに検討して銘柄を選ぶようになり、将来への期待で買われていた割高な銘柄は敬遠されて株価の調整が起こります。相場環境は金融相場から業績相場へ変化していきます。

そのような市場環境の変化の中でアクティブファンドを選択するのであれば、運用方針として「継続的な成長が期待できる銘柄に投資する」ファンドが適していると考えます。また、FRBの利上げのスピードや終了時期は今後の経済状況により変わるため、運用期間が設定されたファンドを選ぶ際は、無期限のファンドより慎重になりましょう。

インデックスファンドを選択する場合は、そのファンドがベンチマークとする株価指数の銘柄見直しの頻度を選択基準とするのもひとつの方法です。見直し頻度の多い株式指数の方がその時々で勢いのある銘柄を採用している可能性が高いことがその理由です。

下表は米国の代表的な株価指数の銘柄見直しの頻度です。

  株価指数 銘柄見直しタイミング
米国 NYダウ 適時見直し
S&P500 4半期に1回
ナスダック100*1 年1回(12月)

(*1:ナスダックを投資対象とするインデックスファンドでは、ナスダック100指数をベンチマークに採用しているファンドが多い)

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