ハイイールド債とは、格付け会社による評価は低いものの、高利回りな債券のことです。債務不履行などのリスクはありますが、うまくいけば一般の社債などより大きな利益を手にできます。日本では市場が確立されていないため、個人投資家は海外のハイイールド債を含む投資信託やETFを使って投資することが一般的です。

  • ハイイールド債は、債務不履行のリスクと引き換えに金利が高く設定されている
  • 個人投資家は投資信託やETFを通じて、海外のハイイールド債に投資できる
  • 米国、欧州、アジアのハイイールド債に投資する代表的な投資信託とETF

ハイイールド債とは「利回りが高い低格付けの債券」

ハイイールド債とは債券の一種で、yield(利回り)がhigh(高い)ことからその名が付いています。債券は格付け会社によって「信用格付け」が付けられており、信用格付けが低い債券は、金利が高く設定されることが一般的です。

通常、格付けがBB格以下の債券はハイイールド債とされ、債務不履行のリスクと引き換えに金利が高めに設定されます。一方、BBB格以上の債券は「投資適格債」と呼ばれ、信用度は高いものの、金利は低めに設定されることが一般的です。

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債券の格付けの仕組みやハイイールド債の特徴については、前回の記事もあわせてご覧ください。

ハイイールド債ってどんな債券? リスクはあるの?

ハイイールド債には投資信託やETFで投資できる

日本では信用格付けが低い企業は債券で資金調達をすることが少ないため、ハイイールド債の個別銘柄はほとんど存在しません。そのため、ハイイールド債に直接投資する場合は、アメリカなどの海外の債券が対象となります。

外国債券を一般の個人投資家が直接購入するのは難しく、現実的とはいえません。したがって、個人が海外のハイイールド債に投資する場合は、これらを投資対象とする投資信託やETFを活用することになります。投資信託であれば、国内の証券会社や銀行などで簡単に投資することが可能です。

ここからは、代表的なハイイールド債の投資信託とETFを、米国、欧州、アジアなど地域別に紹介します。

米国ハイイールド債の投資信託

フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド

設定日:1998年4月1日
純資産総額:5112.3億円
過去1年騰落率:12.68%
過去3年騰落率:32.01%
信託報酬:年率1.738%(税込み)
販売会社:主要ネット証券、全国の銀行・証券会社
運用会社:フィデリティ投信
(2022年11月30日時点)

フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド』は、1998年に設定されてから20年以上もの長期にわたって運用されてきた投資信託です。歴史が古く、純資産はハイイールド債の投資信託の中で最大です。

運用成績も良好で、設定来の騰落率は2022年11月末時点で+258%、つまり約3.6倍となりました。年平均では5.3%の利回りです(ただし、これは分配金を再投資した場合の評価額のため、分配金が課税される場合は実際の利益がこれより少なくなります。以下同様)。

みずほUSハイイールドオープンBコース(為替ヘッジなし)

設定日:2004年6月30日
純資産総額:580.8億円
過去1年騰落率:7.4%
過去3年騰落率:24.9%
信託報酬:年率1.54%(税込み)
販売会社:主要ネット証券、全国の銀行・証券会社
運用会社:アセットマネジメントOne
(2022年11月30日時点)

みずほUSハイイールドオープンBコース(為替ヘッジなし)』は、先ほどの『フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド』と比較すると信託報酬が低めで、長期運用に適したファンドといえます。直近1年および3年の騰落率では遅れを取っていますが、設定来の騰落率は約220%で、年平均の利回りは約6.6%と、こちらも高い運用利回りを実現しています。

為替変動リスクが気になるときは、為替ヘッジありのAコースへの投資も検討するといいでしょう。

米国短期ハイ・イールド債券オープン

設定日:2013年9月17日
純資産総額:237.9億円
過去1年騰落率:15.22%
過去3年騰落率:28.36%
信託報酬:年率1.873%程度(実質、税込み)
販売会社:岡三証券、主要ネット証券、地場証券など
運用会社:岡三アセットマネジメント
(2022年11月30日時点)

米国短期ハイ・イールド債券オープン』は、アメリカのハイイールド債の中でも、満期までの期間が短い「短期ハイイールド債」に投資するのが特徴です。一般的に、満期までの期間が短い債券の方が値動きは小さい傾向がありますが、同ファンドのリターンは上記2本の投資信託と比較しても良好といえるでしょう。

同ファンドの信託期間は2023年9月までとなっており、信託期間の延長が行われない場合には償還されるので、注意が必要です。また、販売会社は現時点でほぼ証券会社に限られています。

欧州ハイイールド債の投資信託

DWS ユーロ・ハイ・イールド債券ファンド(毎月分配型)Bコース(円ヘッジなし)

設定日:2011年1月6日
純資産総額:32.0億円
過去1年騰落率:2.94%
過去3年騰落率:15.10%
信託報酬:年率1.638%程度(実質、税込み)
販売会社:主要ネット証券、全国の銀行・証券会社
運用会社:ドイチェ・アセット・マネジメント
(2022年11月30日時点)

DWS ユーロ・ハイ・イールド債券ファンド(毎月分配型)Bコース(円ヘッジなし)』はユーロ建てのハイイールド債に投資するファンドです。ただし、投資対象にはユーロ圏以外の債券も含まれます。2022年11月末時点での発行体の国別構成比率は、フランスが約15%、ドイツとイタリアがそれぞれ約14%となっていますが、アメリカの債券にも9%ほど投資しています。

設定来の騰落率は105%で、12年で約2倍に増えたことになります。円ヘッジなしのBコースのほかに、ヘッジありのAコースもあります。

アムンディ・欧州ハイ・イールド債券ファンド(ユーロコース)

設定日:2011年1月31日
純資産総額:5.1億円
過去1年騰落率:-1.18%
過去3年騰落率:6.80%
信託報酬:年率1.638%程度(実質、税込み)
販売会社:主要ネット証券、大手・中堅証券、一部の銀行
運用会社:アムンディ・ジャパン
(2022年11月30日時点)

アムンディ・欧州ハイ・イールド債券ファンド(ユーロコース)』は、欧州のハイイールド債に投資するファンドです。「ユーロコース」はユーロ建てでの運用ですが、このほか円コースや豪ドルコース、ブラジルレアルコースなど、通貨別に全部で8つのコースが設定されています。米ドルコースでは過去3年騰落率が18.24%、メキシコペソコースでは37.31%と、通貨によってはリターンは大きくなりますが、同じ傾向が今後も続くとは限りません。

また、決算回数も年1回と2回の2種類のコースがあります。

アジアハイイールド債の投資信託

アジア ハイ・イールド・プラス(毎月決算型)(為替ヘッジなし)

設定日:2012年8月27日
純資産総額:95.1億円
過去1年騰落率:5.97%
過去3年騰落率:6.28%
信託報酬:年率1.837~1.883%程度(実質、税込み)
販売会社:岡三証券、大手ネット証券など
運用会社:岡三アセットマネジメント
(2022年12月19日時点)

アジア ハイ・イールド・プラス(毎月決算型)(為替ヘッジなし)』は、日本以外のアジア企業のハイイールド債に投資するファンドです。2022年12月時点の組み入れ上位5カ国・地域は、上から中国、インド、香港、インドネシア、フィリピンとなっています。

投資対象の債券は米ドル建てのため、「為替ヘッジなし」コースでは米ドルの為替変動の影響を直接受けることになります。

GS アジア・ハイ・イールド債券ファンド アジア通貨コース

設定日:2011年10月11日
純資産総額:29.6億円
過去1年騰落率:-4.62%
過去3年騰落率:5.93%
信託報酬:年率1.903%(税込み)
販売会社:マネックス証券、SMBC日興証券など
運用会社:ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント
(2022年11月30日時点)

GS アジア・ハイ・イールド債券ファンド アジア通貨コース』日本以外のアジア企業のハイイールド債に投資するファンドです。2022年11月末時点での組み入れ上位5カ国・地域は、上からインド、インドネシア、マカオ、中国、フィリピンです。

投資対象の債券は米ドル建てですが、ファンド自体は通貨選択型で、米ドルコースと円コースもあります。設定来の騰落率では、アジア通貨コースが156%で最も高くなっています。

全世界のハイイールド債の投資信託

ピムコ・グローバル・ハイイールド・ファンド(毎月分配型)

設定日:2004年9月30日
純資産総額:271.2億円
過去1年騰落率:8.0%
過去3年騰落率:20.8%
信託報酬:年率1.54%(税込み)
販売会社:大手ネット証券、三菱UFJ銀行、地方銀行など
運用会社:三菱UFJ国際投信
(2022年11月30日時点)

ピムコ・グローバル・ハイイールド・ファンド(毎月分配型)』は、さまざまな国のハイイールド債券を投資対象とする投資信託です。ファンドの運用は、債券運用では世界最大級の規模を誇るピムコ社が行います。

ハイイールド債のETF

iシェアーズ 米ドル建てハイイールド社債 ETF(為替ヘッジあり)

銘柄コード:1497
設定日:2017年8月24日
純資産総額:147億円
過去1年騰落率:-14.30%
過去3年騰落率:-8.90%
信託報酬:年率0.6380%程度(税込み)
運用会社:ブラックロック・ジャパン
(騰落率は2022年12月31日時点、それ以外は2023年1月6日時点)

iシェアーズ 米ドル建てハイイールド社債 ETF(為替ヘッジあり)』は、東京証券取引所に上場しているETFの中で、米国ハイイールド債を対象とする唯一の銘柄です。債券指数への連動を目指すインデックス運用のため、信託報酬が投資信託より安いのが特徴です。

為替ヘッジを行っているため、2022年後半の急激な円安ドル高により、直近の運用実績はマイナスになっています。

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