ハイイールド債とは利回りが高い債券のことで、一般的に信用格付けがBB格以下の債券を指します。ハイイールド債には債務不履行などのリスクがありますが、利回りが高く、大きな利益を期待できるメリットもあります。すでに難しい言葉がいくつか出てきてしまいましたが、ここからはハイイールド債の特徴についてわかりやすく解説していきます。

  • ハイイールド債とは、利回りが高い代わりに信用格付けが低い債券のこと
  • 米国ハイイールド債は米国10年債より5%ほど利回りが高い
  • 個人投資家がハイイールド債に投資するなら投資信託を利用するのが一般的

利回りの高さが魅力のハイイールド債

ハイイールド債とは債券の一種で、yield(利回り)がhigh(高い)ことからその名が付いています。債券には、格付け会社が付与する「信用格付け」があり、信用格付けが低い債券は金利が高く設定される傾向にあります。

ハイイールド債は、格付けが「BB格」以下の債券を指すことが一般的です。反対に、「BBB格」以上の信用格付けが高い債券は「投資適格債」と呼ばれます。

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債券の「信用格付け」とは?

債券の信用格付けとは、格付け会社が独自の基準で債券の「信用度」をランク付けしたもののことです。代表的な格付け会社として、グローバルではS&P、ムーディーズ、フィッチなどが知られており、それぞれの基準で債券の信用度を評価しています。

信用度とは「債務を果たせるかどうか」の度合い

信用度とは、簡単に言うと「債券を発行する企業などが、きちんと債務を果たせるか?」という度合いのことです。債券を発行する企業や国、政府機関(発行体といいます)にとって、債券は借金にあたります。借金なので、お金を貸した人(投資家)に対して利子を支払う必要があり、満期になったら借りたお金を返さなければいけません。

きちんと利子を支払い、お金を返してくれる可能性が高い発行体は信用度が高いとみなされ、信用格付けは高くなります。経営が安定した大企業や、先進国の政府が発行体の債券は、格付けが高くなりやすい傾向があります。逆に、経営状態が悪い企業や政情が不安定な国の政府が発行する債券は、利子がきちんと支払われなかったり、満期でお金が全額返ってこなかったりする(債務不履行といいます)可能性があるため、格付けは低くなる傾向があります。

倒産
債券を発行した会社が倒産してしまうと、利子がもらえないばかりか、元本も戻ってこない可能性がある

信用格付けはアルファベットで表される

信用格付けは、一般的にAからC(もしくはD)までのアルファベットで表されます。例えばS&Pの場合、債務不履行のリスクが最も低い発行体には最高の格付け「AAA」を与え、以下AA、A、BBB、BB、B、CCC、CC、C、Dという順にリスクが高くなります。先ほども説明した通り、「BB」以下の格付けが与えられた債券をハイイールド債と呼びます。

ただし、S&PでAAAを与えられた債券であっても、別の格付け会社ではAAA以外のランクの可能性があります。あくまでも格付けは各格付け会社の意見であり、債券の信用度を示す1指標に過ぎません。

なぜ格付けが低いと利回りが高くなるのか?

ハイイールド債、つまり格付けが低い債券は、格付け会社によって債務不履行のリスクが高いと判断された債券です。ハイイールド債が投資適格債、つまり債務不履行のリスクが低い債券と同じ金利では、投資家にとっては何の魅力もありません。債務不履行のリスクと引き換えに、金利を高くすることで、発行体は投資家に債券を買ってもらい、必要な資金を調達するわけです。

このように、ハイイールド債は投資適格債よりも金利が高めに設定されているため、ハイリスク・ハイリターン型の投資を目指す投資家にとっては、魅力的な金融商品のひとつとなります。

また、債券を発行したあとに発行体の格付けが下がれば、その債券の価格は下がることが一般的です。そのため、結果として利回りがさらに高まり、投資家にとって投資効率は高まりますが、その分だけ債務不履行のリスクが高まることも受け入れなければいけません。

金利上昇中! 利上げすると債券価格はどうなる?

金利は国債より5%ほど高いが、破たんの可能性も

債券の利回りが魅力的かどうかは、その国の10年国債との利回りの差(スプレッド)で判断することが一般的です。例えば米国のハイイールド債(満期まで10年)のスプレッドは、近年5%前後で推移しているため、国債より5%ほど高い利回りが期待できます。2023年1月4日時点の米国10年債の利回りは約3.7%なので、満期まで10年の米国ハイイールド債に今から投資すれば、約8.7%の利回りとなる見込みです。ただし、実際に米国や欧州で発行されるハイイールド債は、満期までの年数が10年未満の比較的短いものが大半です。

利回りが高いということは、当然リスクがあります。ハイイールド債は金利の支払いが滞ったり、場合によっては発行体の経営破たんにより元本が戻ってこなかったりといったリスクが投資適格債より高い点には注意が必要です。そのため、ハイイールド債の個別銘柄に投資する際には、銘柄をしっかりと選ぶ必要がありますが、後述するように日本の個人投資家がハイイールド債の個別銘柄を買うのはあまり現実的な選択肢とはいえないでしょう。

日本には「ハイイールド債券市場」はない

米国や欧州では、1980年代頃から信用格付けが低い企業などがハイイールド債を積極的に発行するようになりました。ハイイールド債を買い求める投資家も増えており、2000年頃になるとグローバル規模での「ハイイールド債券市場」が成立しました。

近年はアジアなどの新興国でもハイイールド債の発行が増えている一方で、日本では信用格付けが低いとみなされる企業は債券を使った資金調達をしない傾向があり、日本の発行体によるハイイールド債券は少ないのが現状です。そのため、日本国内にはハイイールド債券市場と呼べるような市場はありません。現時点では日本の個人投資家が、日本企業の高利回りの債券を買うことはほとんど不可能といっていいでしょう。

投資信託を使って手軽にハイイールド債券に投資

日本の個人投資家がハイイールド債に投資をするなら、米国など海外の債券市場を視野に入れる必要があります。しかし、個人が直接、海外のハイイールド債を探して投資するのは、ハードルが高いと感じるのではないでしょうか。

ハイイールド債に投資をするのであれば、投資信託を利用するのが一般的です。投資信託であれば、日本円のままで海外のハイイールド債に、しかも1万円以下の少額から投資できます。一度に複数の銘柄に投資することになるため、投資しているうちの1社がたとえ破たんしても、その影響は限定的です。

例えば、米国のハイイールド債に投資する代表的な投資信託である『フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド』は、1998年4月の設定から24年8カ月で約3.6倍に値上がりしました。年平均では5.3%の利回りとなります(ただし、これは分配金を再投資した場合の評価額のため、分配金が課税される場合は実際の利益がこれより少なくなります)。

日本の金融機関では、これ以外にも海外のハイイールド債を投資対象とするファンドを多数取り扱っているため、まずはチェックしてみましょう。

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