最近よく目にするFIRE(経済的独立と早期リタイア)という言葉。会社に縛られない自由な生活に憧れる人は多いですが、その道のりは決して平坦ではありません。FIREを実現するには、何から始めればいいのでしょうか? 会社員生活から独立して、自由な生活を手にした投資家の遠藤洋さんに教えていただきます。
第9回テーマ
副業で、あるいは会社をやめて独立して、新しいビジネスを始めたい。成功するために、失敗しないために大切なこととは?
需要があるところに供給するから利益になる
会社員として働きながら将来の独立を見越して副業を始めたり、あるいは独立して新しい仕事を始めたりする際に、なかなかうまくいかず、思ったようにお金を稼げないことがあります。なぜ、うまくいかないのでしょうか? 多くの場合、その理由は「主語が自分」になっていることだと思います。
以前に、生きるために大切なのは、行動の優先順位を「自分軸」にすることだと言いました。自分の行動は、会社など他人の都合で決めるのではなく、自分自身の成長につながるかどうかで決めるべきということです。
しかし、ビジネスでは必ずしも「自分軸」が正しいわけではありません。稼げるビジネスをしたいのであれば、「他人軸」の判断基準を持つことが大事です。
ビジネスは需要と供給の世界です。「こんな品物やサービスがほしい」という需要があるところに供給するから、そこに売上が発生し、利益になります。需要がないところにいくらモノを売っても、誰も買ってくれません。お金と時間の無駄になってしまいます。
もちろん、世の中にない新しいビジネスであれば、実際に立ち上げてみないとどれくらいの需要があるかはわかりません。僕が始めた写真配信サービスもそうでした。最初は誰でも「このサービスは絶対に売れるはずだ」と思ってビジネスを始めます。それで成功すればいいのですが、うまくいかないときが問題です。立ち上げたビジネスを、「他人軸」で見直してみる必要があります。
自分だけで考えず、人に聞いてみることも必要
やってはいけないのは、自分ひとりだけで考えることです。時間とお金をかけて始めたビジネスですから、なかなかあきらめられず、頑固になって「私はこれがいいと思う」と信じてやり続けることはよくあります。しかし、ビジネスとは「自分がいい」と思うことをやるのではなく、世の中に対して価値提供をしていくことです。
厳しい言い方をすると、お客さんが「お金を払ってまで欲しくない」というものに時間とお金をかけ続けるのは、ビジネスではなく、趣味でしかありません。これではお金を稼ぐ手段として成り立たないので、やめてしまうべきです。
ビジネス=世の中に価値を提供するためにお金と時間を使う……“他人軸”
趣味=自分自身の満足のためにお金と時間を使う……“自分軸”
もしかしたら、ビジネスとしては需要があっても、やり方が良くないだけというケースもあります。なぜうまくいかないのか気になったら、自分ひとりで考えて答えを探すより、お客さんに聞いた方が確実です。どういう条件なら商品やサービスを買ってくれるのかは、他人が答えを持っています。「他人軸」という視点を通して、初めて見えてくるものがあるはずです。
自分にとっての「当たり前」にも価値があるかも
僕自身も、「自分にとって価値があるものは何か」ではなく、「世の中は僕に対して何を求めているか」という基準を大切にしています。
僕は今投資コミュニティ「ixi」を主宰していますが、最初から「人に投資を教えたい」と思っていたわけではありません。僕がいろいろな人たちと話す中で、たくさんの人が「投資を教えてほしい」と言ってくれて、投資に関する僕の知識や経験に需要があることを知ったのがきっかけでした。
自分では当たり前だと思っていても、世間では当たり前ではないことはよくあります。株式投資の話で言うと、僕にとっては時価総額を見ることは当然で、それすら見ずに投資するのはありえないと思うのですが、世間一般の個人投資家は決してそうではありませんでした。だから、僕にとっての「当たり前」を伝えることが、世の中に価値を提供することになったわけです。
新しいビジネスを始めるときは、世の中の需要がありそうなものの中から、自分が何らかの価値を提供できる分野を選ぶとやりやすいと思います。たとえば自分の身近な人が何を欲しがっているのか、どんなことを聞きたがっているのか、そこにフォーカスしていくのもいいかもしれません。
前回お話しした「時間の投資」に絡めて言うなら、自分の1時間を使うことでどれだけ多くの人が喜んでくれるか、どれだけの価値を世の中に提供できるか。時間の使い方にも「他人軸」の観点を取り入れることが、自分自身にとっても有効な時間の使い方になり、ビジネスの成功につながり、さらにその先にある「お金と時間の自由」にもつながっていくと思います。
- 「どんな生き方をするか」は自分自身が判断基準。「どんなビジネスが成功するか」は他人が判断基準
- うまくいかない理由は自分で考えるより、お客さんに聞いてみる。無理だと判断したらやめるのが大切
- 自分にとって当たり前なことの中に、世の中に提供できる価値があるかもしれない