最近よく目にするFIRE(経済的独立と早期リタイア)という言葉。会社に縛られない自由な生活に憧れる人は多いですが、その道のりは決して平坦ではありません。FIREを実現するには、何から始めればいいのでしょうか? 会社員生活から独立して、自由な生活を手にした投資家の遠藤洋さんに教えていただきます。

第8回テーマ

ビジネスを立ち上げても失敗するかもしれない。それでも確実に、できれば最短距離で“お金と時間の自由”に近づいていくためには、どんな「時間の使い方」を心がけるべきか?

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人生はコスパよりタイパが大事

遠藤洋
遠藤 洋
投資家
投資コミュニティixi主宰

最近になって「タイムパフォーマンス」、「タイパ」という言葉が流行語になりました。以前から「コスパ」という言葉はありましたが、お金のコストを意識しすぎるあまり、タイムパフォーマンスがおざなりになっている人が多いと思います。

水への投資 世界的に不可欠な資源への投資機会 BNPパリバ・アセットマネジメント

単純な例として、スーパーに卵を買いに行くことを考えてみましょう。家の近所のスーパーなら10個200円ですが、自転車で10分かかる隣町のスーパーでは10個100円で売っています。100円の方がコスパは高いということで、たくさんの人が隣町まで卵を買いに行くのが現実だと思います。近所のスーパーの卵が100円でも、隣町では無料で配るとなったら、行列に並んでまで卵をもらおうとする人もいるでしょう。

この差額の100円を、時給で換算するとどうなるでしょうか? 往復20分の時間をかけて、得をする金額が100円。これは時給300円のアルバイトをするのと同じです。そんなアルバイト、普通はやらないですよね。目先のコスパばかりを見ていると、タイパが悪くなることになかなか気づきにくいものです。タイパが悪い行動を続けると、長い目で見ればコスパまで悪くしてしまいます。

時間の使い方を分類して「時間の投資」を増やす

僕は、お金の使い方より時間の使い方が生きるうえで大事だと考えています。連載第1回でもお伝えしましたが、時間の使い方は3つに分けられます。浪費、消費、そして投資です。

3つの時間の使い方
浪費……がんばった自分へのごほうびのために時間を使うこと
消費……今生きるために時間を使うこと
投資……自分の成長のために時間を使うこと

お金は、たとえ浪費して失ってしまっても、稼げばまた戻ってきます。時間は二度と戻りません。「今日1日をむだにしても、また明日がある」と思うかもしれませんが、たとえば20代前半の1日は、その日しかありません。その限られた時間をいかに使うかで、数年後の自分の人生が大きく変わります。

まず、今の自分が何に時間を使っているのかを把握するのが最初のステップです。時間の浪費とは、だらだらとテレビを見たりスマホゲームをやっていたりする時間が当たります。こうした時間も「がんばった自分へのごほうび」ではありますが、未来に対しては何の価値も生みません。

消費は、食事をしたりお風呂に入ったり、休憩したりする時間です。自分のパフォーマンスを維持ために必要なものです。

そして投資です。自分の成長のための時間、言い替えれば「自分の望む未来につながる時間の使い方」が投資です。仕事をしている時間は、消費にも投資にもなりえます。第1回でも説明しましたが、明日の生活費を稼ぐために、時間とお金を交換するだけの仕事は「消費」です。将来独立するために、仕事を通じて技術や知識を身に付けようと努力するのは、時間の「投資」になります。

現状を変えるための「時間を投資する」という視点

与えられた時間を、ただ目先の仕事をこなすだけでなく、自分の成長のために使う。これが時間を「投資」するという感覚です。

時間の使い方を3つに分類したら、時間の浪費を減らして、時間の投資を増やしていくことが大事です。時間を大切にする感覚がないと、つい毎日をなんとなく過ごして、楽な方に流れてしまいがちですが、タイムパフォーマンスを上げることを意識すれば、目指す未来に近づいていけるはずです。

自分の成長のために使う時間としては、わかりやすい例では「資格の勉強」が挙げられますが、お金と時間の自由を手に入れる「FIRE」をゴールにするのであれば、個人的には資格をあまり重視しなくてもいいと考えています。資格はあくまで「雇われる側」にとって有利な技能であって、ひとりでビジネスを始めたり人を雇ったりするためのものではないからです。

資格の勉強
勉強することも時間の投資。ただし「何のために、何を勉強するか」が大事

自分の望む未来があるところに時間を使う

話を戻すと、僕が過去に写真配信サービスを立ち上げたのは、最初はお金にならなくても、ユーザーが1万人集まって、月1回利用すれば、ほとんど何もしなくても毎月300万円の利益が出る、そんな未来を目指していたからです。

退職前に会社を設立。基本は“スモールスタート”

結果的にこのビジネスはうまくいきませんでしたが、ビジネスを立ち上げるために費やした時間は、未来のための投資でした。とはいえ、投資は必ずリターンが出るとは限りません。やってみて、これは違うと思ったらやめることも大切です。

今自分が使っている時間の延長上に、自分の望む未来があるのか?
 そんな自問自答をしながら、僕は意識して時間を使ってきました。理想とする人生は人それぞれです。年収アップが目的なら、今がんばって働くこと、いい会社に転職するためにキャリアを積むことが時間の投資になりますが、目指す未来がFIREであれば、たくさん働いて年収を上げることより、独立するための準備が正しい時間の使い方になると思います。

次に問題になるのは、どのような時間の投資をすればお金と時間の自由に近づけるのかということです。次回は、自分でビジネスを始める際に大切な考え方についてお話ししたいと思います。

遠藤洋今回のポイント

  • 目先のコスパに気を取られすぎるとタイパが犠牲になり、結果的にコスパも悪くなる
  • タイパを高めるために「時間の投資」を増やすことを心がける
  • 時間を投資する判断基準は「今の時間の延長上に、自分の望む未来があるか」

※第9回は2月9日の公開を予定しています。

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