「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は、いつか来るかもしれない巨大地震への備えと、その際に直面する可能性がある「現金のリスク」について考えます。
- 戦前・戦中の日本は国債を大量に発行した結果、戦後ハイパーインフレに陥った
- 大量の国債を発行した今の日本で巨大地震が起きたら、同じことが起きる可能性
- ハイパーインフレに地震保険だけでは不安。インフレに強い資産を持つことが大切
今年は関東大震災から100年の節目ということで、関東大震災やいずれ来るであろう南海トラフ地震等を特集したテレビ番組が報道されました。カラー化した関東大震災発生直後の映像では、意外とのんびり過ごす人たちに迫りつつある大火災と、その後の悲劇(陸軍被服廠跡地)などが放映されていました。100年前の教訓を、令和の今に、どのように活かしたら良いのでしょうか?
地震保険は役に立つ?
さて、令和の今、巨大地震が襲ってきたとしましょう……最も恐いのは何でしょうか?やはり、人の波・デマ・未だ収まらない新型コロナ感染症・季節外れのインフルエンザなど、数え上げればキリがありません。
そして、住まいを失ってしまえば生活と仕事の基盤も失うことになりますから、代替の住まいを入手するためにも、筆者は地震保険を契約しています。
が、巨大地震が襲ってきたときに、この地震保険は果たして、どのくらい有効なのでしょうか? そんな疑問を感じるようになりました。
巨大地震の襲来後、続けて襲ってくるのは?
巨大地震の襲来後、続けて襲ってくるのは津波かもしれません。では津波の次は? 津波の次に襲ってくるのは、おそらくハイパーインフレではないでしょうか?
関東大震災100年目の報道番組では、「東京が焼け野原」という言葉を繰り返し聞きました。そして、関東大震災からわずか21年半後、今度は東京大空襲(太平洋戦争)で、東京は再び焼け野原になります。太平洋戦争の時は東京のみならず、日本の主要都市はもちろん、地方に至るまで焼け野原となりました。
関東大震災や東京大空襲……焼け野原からの復興のために国債
そして、関東大震災や太平洋戦争からの復興に当たり、日本政府は大量の国債を発行しました。特に太平洋戦争の直後は、全国が焼け野原になったのに加え、海外の植民地や戦地から多くの日本人が戻ってきたので、国債を大量に発行して資金調達を行いました。
しかし、太平洋戦争後の国債は、戦後だけにとどまりません。太平洋戦争の開戦前、そして戦時中にも戦費調達のため、すでに国債を多く発行していて、それらの国債の残高が太平洋戦争後までに大きく積み上がっていたところに、さらに大量に国債を発行したのです。では、その結果、どのようなことがあったのでしょうか?
積み上がった国債残高に、さらに国債を大量に発行した結果
太平洋戦争が始まる前と太平洋戦争中に戦費調達のために国債を発行し、その残高が積み上がり、そして太平洋戦争の焼け野原からの復興のために、さらに国債を大量に発行した結果、いわゆるハイパーインフレが発生しました。戦後のハイパーインフレを数字で追うと、少しはイメージできるかもしれません。
日本銀行の調査では、太平洋戦争開戦より7~5年前の1934~1936年の消費者物価指数を1とすると、太平洋戦争終戦から9年後の1954年は301.8になっていたそうです。また、伊藤正直氏によると、1934~1936年時点での卸売物価が、1949年までに約220倍になったとし、1945年の水準からみてもわずか4年後の1949年には約70倍というハイパーインフレーションになったとしているそうです。
令和の今、平時に積み上がる国債の残高
さて翻って、令和の今、日本の国債は果たしてどのくらい積み上がっているのでしょうか?
毎年、関東大震災の時期の前後に話題になるのが翌年度の政府の予算ですが、来年度、すなわち2024年度の政府の予算額は114兆円を超えるそうです。そして、予算に対する資金調達は税金が主になるのはもちろんですが、3分の1近くの、およそ35兆円は国債によって賄うことになります。
もし、巨大地震が襲来したら?
巨大地震がまだ起きていない今を「平時」としましょう。政府は「平時」にあっても、すでに多額の国債を発行し、その残高が積み上がっているのです。「平時」を太平洋戦争が始まる前と太平洋戦争中に重ね、巨大地震が襲来した時を「太平洋戦争後」に重ね合わせると……。巨大地震の襲来の後には、ハイパーインフレの襲来も間違いないという考え方も成り立つのではないでしょうか?
ハイパーインフレが襲ったら、地震保険の価値は?
巨大地震の襲来によって地震保険の保険金を受け取ったしても、同時にハイパーインフレが襲ってくれば、受け取った地震保険の保険金は、いかほどの価値になるのでしょうか? そんな不安が胸をよぎります。
巨大地震への備えは、やはり有事への備え?
やはり、ここは「有事の金」なのかなと思います。
ちなみに、日本はマイナス金利(短期金利)や超低金利(長期金利)がいまだ続いていますから、ハイパーインフレ時に多額の借金をすると、最もパフォーマンスが上がるのは政府ということになります。時間が経過しても利子は付きませんし、額面はともかく、国債(=借金)の実質的価値はみるみる下がっていくわけですから。
平時にあっても、もはや最もハイリスクな資産といえば、日本円なのかもしれませんね。
そして、不謹慎かもしれませんが、巨大地震の襲来の後に襲来するハイパーインフレは投資の機会といえるかもしれません。その機会を逃さないためにも、ハイパーインフレに耐えうる資金調達の手段こそが、今の私達に必要なものだといえるでしょう。