2021年の11月から師走にかけて、九州・沖縄地方に漂着した大量の軽石が大きな問題となっています。今回は、その要因である海底火山噴火のメカニズム、火山活動の被害や恩恵について、株式アナリストの鈴木一之さんに詳しく解説していただきました。

  • 日本は世界有数の火山大国。地球上の7%の火山が日本に存在
  • 火山活動は「深刻な被害」と温泉など豊かな「自然の恵み」をもたらす
  • 株式投資に応用する場合、国土強靭化投資でも活躍する地質調査会社に注目

戦後最大規模の噴火、噴出物は東京ドーム80個分

鈴木一之です。2021年も暮れてゆこうとしています。昨年に続いて今年もコロナウイルスの話題に埋め尽くされました。

今年起こった出来事をたどってゆくと、東京オリンピック・パラリンピックが57年ぶりに開催されたことを筆頭に、「数十年ぶり」とか「戦後初」という出来事が多くありました。そのような出来事のひとつに、小笠原諸島での海底火山の噴火、それに伴う「軽石」の漂流に思い至ります。

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8月に小笠原の海底火山が大規模な噴火を起こし、そこから大量の軽石が飛び出して海洋を漂ったという出来事です。九州、沖縄地方の漁業や観光に大きな被害をもたらして、現在も軽石は海上を漂っており、伊豆諸島や千葉県に到達しています。

産業技術総合研究所によれば、今回の噴火は「戦後最大規模」に達するそうです。火山の噴火による噴出物は1億立方メートルにのぼり、これは東京ドームに詰めると80個分に相当するそうです。軽石の漂流は現在もまだ進行中で、終息の時期は見えていません。今回の記事では火山活動について述べてみます。

海洋プレートが沈み込む日本、活火山110か所が集中

日本は世界有数の火山大国と言われています。日本列島には現在もなお活発に活動する活火山が110か所もあります。世界に存在する火山は1500か所とされているので、日本にはそのうちの7%が存在することになります。日本の陸地面積は世界の0.1%に過ぎないことと照らし合わせても、日本がいかに火山大国であるかがわかります。


日本列島には現在も活発に活動する活火山が110か所あり、世界有数の火山大国と言われる(画像はイメージ)

なぜ日本にこれほど火山が集中しているのかと言えば、それは地球の構造に基づいています。火山は海洋プレートが大陸プレートに沈み込むことによって生じるものが大半で、日本はちょうどそのような位置にあるからです。

トラリピインタビュー

火山は地球上のどこにでもあるわけではなく、限られた場所に固まって偏在しています。地球上のおよそ1500か所の火山は、いずれも次に挙げる3つの場所にしか存在しません。

一つは「弧状列島―海溝系火山」で、日本列島の火山がこれに相当します。大陸プレートに海洋プレートが沈み込む場所に存在するものが海溝系火山です。海洋プレートが沈み込んで、ある程度の深さに達したところで発生したマグマが原因となって火山が形成されます。マグマの正体は地中深くにあるマントルと海水ですが、詳しくは後述します。

二つ目は「火山島を形成する火山」で、ハワイ諸島のように大洋の真ん中に火山がある場合です。火山の真下には大量のマグマが存在し「ホットスポット」と呼ばれます。特定の決まった場所にありプレートの動きとは無関係に存在します。

三つ目は中央海溝と呼ばれる「海底火山の山脈」です。南アメリカのガラパゴス諸島やイースター島の西に位置する東太平洋海膨がこれに相当します。海底深くのこの場所でプレートが新たに生み出されているとされています。

日本の火山はこの中の海溝系火山です。プレートが一定の深さに沈み込む場所を地図上に描いてみると、海溝やトラフに沿ったラインが描かれます。これを「火山フロント」、あるいは「火山前線」と呼び、日本では千島列島から富士山を経て伊豆諸島に至る東日本の火山フロントと、中国山地から南西諸島まで走る西日本の火山フロント、のふたつのラインが描かれます。

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