新NISA(少額投資非課税制度)の成長投資枠では、多くのETF(上場投資信託)への投資が可能です。以前は株価指数などに連動するインデックス型のみでしたが、最近はアクティブ型のETFが上場されるなど、商品ラインナップも広がっています。本記事では、ETFを公募型株式投資信託(以下:株式投資信託)と比較しながら、その違いと仕組みや注意点について説明します。
- ETFは証券会社のみで購入でき、公募型株式投資信託と違って指値注文ができる
- 購入時手数料は証券会社が決める。信託報酬はETFの方が低い傾向
- ETFは金額指定での購入はできず、分配金の再投資を自動ではできない
ETF(上場投資信託)とは
ETFは、株式と同じように証券取引所に上場されている投資信託です。従来は、TOPIX(東証株価指数)や日経平均株価など指数に連動して運用するインデックス型のみでしたが、最近は、連動する指数がないアクティブ型の運用をするETFも徐々に増えています。
ETFと公募型株式投資信託の主な違い
ETFと公募型株式投資信託の主な違いは下表の通りです。なお、株式投資信託とは「株式に投資ができる投資信託」のことであり、「株式にしか投資できない投資信託」ではない点は押さえておきましょう。
公募型株式投資信託 | ETF | |
---|---|---|
購入先 | 証券会社、銀行など | 証券会社 |
購入価格 | 基準価額 | 市場の取引価格(時価) |
注文方法 | ブラインド方式 | 指値・成行注文 |
購入時 | 手数料商品ごとに異なる | 証券会社ごとで異なる |
信託報酬 | 一般的にETFに比べ高め | 一般的に公募型株式投資信託より低め |
株式投資信託は、証券会社以外に銀行などの金融機関でも購入できます。ただし、取り扱っている投資信託の銘柄や数は、金融機関ごとに異なります。
ETFの購入先は、証券会社のみです。他の金融機関での購入はできませんので注意しましょう。また、ETFは株式と同じように証券コードがあり、原則どの証券会社からでも購入は可能です。
購入価格は、株式投資信託は基準価額ですが、ETFは市場取引価格となります。ただし、ETFにも基準価額が存在します。ETFの価格については、以下の「ETFの仕組み」のところで説明します。
注文方法は、株式投資信託は「ブラインド方式」です。ブラインド方式とは、購入時の基準価額がわからない段階で売買注文をする方式です。一方、ETFは、株式と同じように株価を指定した指値(さしね)注文や、株価を指定しない成行(なりゆき)注文ができるので、取引価格を確認しながら売買注文を出せます。また、株式と同じように信用取引も行えます。
購入時手数料は、株式投資信託が各商品(ファンド)ごとに運用会社が上限を決めているのに対して、ETFは証券会社が手数料を決めています。
保有時にかかる信託報酬は、一般的にETFの方が低い傾向です。しかし、近年はインデックス型の株式投資信託でも信託報酬がかなり低いファンドもあります。
ETFの仕組み
ETFは、下図で示しているように「発行市場」と「流通市場」が併存しています。
一般の投資家がETFを売買できるのは、流通市場です。流通市場は取引価格で売買が行われます。また、流通市場でETFの売買が行われても、株式投資信託のように売買のたびに受益権口数が増減することはありません。その点は、株式の取引と似ています。
発行市場は、指定参加者(証券会社など)と運用会社の間でETFの取引(設定・交換)が行われます。ここでは、基準価額による取引になります。基準価額は、株式投資信託と同じように「純資産総額÷受益権口数」で算出されます。基準価額は、一般の投資家も確認することができます。この基準価額を参考に、流通市場でETFの取引が行われます。
ETFは原則として金額指定の注文ができない
ETFは、株式の注文と同じように取引単位の口数を指定して買付を行います。株式投資信託のような金額指定の買い付けは原則できません。ただし、証券会社によっては金額指定(金額内で買える口数を購入する)での買い付けに対応している会社もあります。
ETFの分配金に自動的に再投資できない
ETFの分配金は、株式投資信託のように自動的に再投資することができません。そのため、分配金を再投資する場合は、投資家自身が行う必要があります。
また、ETFの分配金原資は、当期(決算期)の利益(配当や利子)から、費用(信託報酬など)を引いたものになります。値上がり益は分配金原資に含めません。株式投資信託は、当期利益(含む値上がり益)と当期の収益以外が分配金原資です。分配金に回せる原資が、ETFと株式投資信託では異なります。
まとめ
以上、ETFの仕組みや特徴、株式投資信託の違いについて説明してきました。
ETFは、株と同じように注文(指値・成行)や取引(現金・信用)ができる点が、株式投資信託にない特徴です。しかし、金額指定の買い付けや分配金再投資ができないなど、注意する点もあります。