テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家が700人以上所属する日本放送作家協会(放作協)がお送りする豪華リレーエッセイ。ヒット番組を担当する売れっ子作家から放送業界の裏を知り尽くす重鎮作家、目覚ましい活躍をみせる若手作家まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜く放送作家&脚本家たちのユニークかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず!
連載第166回は、前回に引き続き放送作家協会が運営する作家養成スクール「東京作家大学(東作大)」でも講師を務める、放送作家のさらだたまこさんの再登場! 62の手習いで始めた「熟年空手」の経済効果を大公開!

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熟年空手女子の20キロ減量経済効果!

なにしろ伸び代100%ですから!

さらだたまこさんの写真
さらだたまこ
放送作家
日本放送作家協会会員

「身体が全く動かない!」
悲鳴に近い絶望感……それが、空手を習い始めたその日の感想だった。
コロナ禍のお籠もりで太りに太った身体が重いせいもあったが、もともと運動オンチで鈍くさく、しかも30歳の頃、ゴルフをちょっと始めたけど結局長続きはぜす、以来、ほとんど運動もしていなかったから、身体がガチガチに固まっていた。
「まずは真似してくださいね」と指導員の先生に言われても、身体が思うように動いてくれないのだ。
自分で自覚してる以上にヨレヨレして不格好ったらありゃしない!

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私より年齢は若いが手慣れた先輩たちはカッコ良くて、動きもキレッキレだ。
私とほぼ同時に始めた歳の近い熟年層も、呑み込みが良く、上達が見える。
「あああ、やっぱ、空手は向いてないかも!」と内心落ち込んだ。
だが、指導員の先生に「誰だって最初は身体は動きませんよ。でも伸びしろ100%なんだから休まないで気長に取り組んでください」と言われ、なるほどと思った。
「あと伸び代1%未満」と言われたら諦めるが、100%ならば大いに稽古し甲斐があるというもので、確かに稽古を続けるとちょっとずつだが、身体は柔らかくなり、だんだん動けるようになってきた。

空手練習の写真(左)は入門したての頃の横蹴り。ふらついて脚も上がらない。(右)は3年経った横蹴り。軸足もだいぶ定まり脚も上がってきたが、まだまだツッコミどころ満載でここからさらに伸び代100%! 3年後は頭の上まで脚が上がって静止してる予定(希望的観測!)

身体能力に長けた若者ならきっと数時間の稽古で上手くなるだろうが……。
写真のように、熟年女子の固い身体では脚を上げるだけでも年月がかかる
私は蹴りは苦手意識が強く、蹴りの稽古もしんどいので実は好きではない。
だが面白いことに、蹴りの練習を集中してやらなくても、ストレッチ的な準備運動を丁寧に時間をかけてやり、そのあと、空手に必要ないくつもの手技・足技を、順番にこなしていく……などなどのルーチンの稽古を続けているうちに、いつの間にか関節の可動域が広がってきたり、筋肉がついてくるから不思議。

ある日、脚がだんだん上がってくるのに驚いたり、知らないうちに腕力がついて、生まれてこのかた、できたためしがなかった腕立て伏せが、なんと拳立てでできるようになりつつある!
それから、座って1分もたたないうちに痺れてどうしようもなかった正座も、知らないうちに30分くらい平気になった。
空手おそるべし!

拳立ての写真拳立てでの腕立て伏せなんて、60年以上生きてきて初めてのこと。最初はオットセイみたく固まっていたけど、1年くらい経ったころからオットセイではなくなった。とはいえ、まだ浅いので頭が床に着くまで伸び代100%!

空手で足腰を鍛える経済効果

コロナ禍で開催された東京五輪で結構話題になったので、空手には「型(※形とも書く)=目に見えない仮想敵相手に繰り広げる演武」と、「組手=対人の武闘試合」があることはわりと世間に知られるようになった。
還暦過ぎたおばさんが空手をやると言うと、たいてい皆「女性だから型をやってるんでしょ?」
と言われる。
しかし、空手の稽古では型も組手もやる

うちの道場での組手はフルコンタクト(直接打撃制)なので、いわゆるど突き合ったり蹴り合ったり……で顔面にだって回し蹴りが飛んでくるので、それをちゃんと受けて反撃する稽古だってする。
でも、ボコボコの路上の喧嘩と違うのは、組手は型で稽古した動きを使って行うことだ。
型の動きを使えば、私のような熟年おばさんでも、相手の攻撃を捌いて我が身を守ることができる……それも、痛い思いをせずに!

もちろん、3年経った今も、まだまだ組手はへっぽこで、型だって全然垢抜けてないけど、日々の稽古の中で、少しずつだけど、進捗はある。
道場の先生が言うには「足腰の鍛錬ができてくると、型も組手もそこから始めて上達します」と……なるほど、奥が深い!
それならばなおさら、伸び代に充分期待ができる(……という気がする)。

組手の稽古の写真組手の稽古。とにかく足腰を鍛え、慣れることが大事

さて、ひと口に「足腰の鍛錬」と言うが、この足腰の鍛錬こそ、空手を習うことで得られる宝ものだと思う。
ただし、見た目逞しい足腰ではダメで、要は鼠径部(太腿の付け根=コマネチライン)を柔らかく動かして使いこなすことが重要だという。
この理解は難しい。
なにせ私の鼠径部は鋼(はがね)のように固いから。
だけど、鼠径部が固いと腰や膝に負担がいって、やがて歩けなくなるということを考えたら、鼠径部を柔らかくするのは一番の課題だ!

私は子どものときから右足のくるぶしに軟骨が出ていて、それを庇うように歩いてきたので土踏まずが無くて外反母趾になり、最初、空手の稽古でも、右足を庇って左膝を傷めたり、今もあちこち足の故障は絶えない。
ただ、鼠径部を意識して正しい姿勢で立つように心がけると、足の痛みは治らないものの負担が減って痛みは軽減し、稽古も普通にできるようになってくる。

ということで、還暦過ぎて初めてめちゃくちゃフットケアにも心配りするようになったが、実はこれが良い経済効果を生むことに最近気がついた。
高齢化社会に生きる私たちは、還暦過ぎてもまだ現役でいたい。
20年、できれば30年、40年……。
で、年収500万円のサラリーマンにたとえれば、20年働くと1億円。
しかし、彼を雇う企業としては、彼の仕事にかかる経費など加算すると、倍額になり、企業の売上げが2億円以上ないと、利益も出ず、赤字になるから彼を雇えない。
そう考えると、私たち熟年が元気なフットワークであと20年働けたら、2億円以上の価値があるという単純計算になる。

100歳まで独りでどこへでも、ホイホイ出かけていける身体なら4億円だ!
そういえば、健康な脚の値段は1本2億円という記事をどこかで目にした覚えがある。
計算の根拠はさまざまだろうけど、元気な足腰はそれだけの価値があるということだ。
それこそ、伸び代100%であれば、先は長い!
100歳でも現役!
空手の力を信じて、辞めずに稽古を続けようと思う!

昇級審査会の写真令和5年3月、昇級審査会の様子

次回は鮫肌文殊さんにバトンタッチ!

是非読んで&観てください!

■ ダイエット中に、介護生活を体験。やはり最初の3年間はアップアップしながらなんとか乗り越えてきた経験から、これから介護するみなさんに少しでも参考になればと。

『親も自分もすり減らない⁉ シングル介護術』

『親も自分もすり減らない⁉ シングル介護術』

■ 骨粗鬆症予防啓発にラジオ出演いたします。

「ティモンディの人生キャッチボール」(ABCラジオ)
(毎週 月曜6:05頃〜約8分「朝も早よから芦沢誠です」内)
2024年4月29日(月)、5月6日(月)放送

※Radikoやポッドキャストでもお聴きいただけます。
※過去放送分はYouTubeにアーカイブされてます。

■ 2024年の夏は音楽朗読劇を!

「うるまの島々から北の大地へ、そして」
~やさしさの道しるべ
外岡秀俊の世界

6月8日(土)那覇公演 於:那覇文化芸術劇場

(8月には札幌公演を予定しています)

「うるまの島々から北の大地へ、そして」「うるまの島々から北の大地へ、そして」

■ さらだたまこのダイエットに勤しんだ空手道場はこちら

武道学館

武道館サイト

■ さらだたまこの熟年空手女子SNS

Twitter(X)https://twitter.com/JKJ_saratama
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■ さらだたまこがエッセイ講座の講師をつとめる東京作家大学はこちら

東京作家大学
開校して10年目を迎え、ただいま記念すべき10期生を募集中。
4月中は、5月の新年度の開講にむけて、入学説明会など開催中です。

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一般社団法人 日本放送作家協会
放送作家の地位向上を目指し、昭和34年(1959)に創立された文化団体。初代会長は久保田万太郎、初代理事長は内村直也。毎年NHKと共催で新人コンクール「創作テレビドラマ大賞」「創作ラジオドラマ大賞」で未来を担う若手を発掘。作家養成スクール「市川森一・藤本義一記念 東京作家大学」、宮崎県美郷町主催の「西の正倉院 みさと文学賞」、国際会議「アジアドラマカンファレンス」、脚本の保存「日本脚本アーカイブズ」などさまざまな事業の運営を担う。

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