現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第79回は、発電所などの大型プラントで用いられるバルブというニッチ分野において、その技術力と信頼性がグローバルで高く評価されている、岡野バルブ製造(6492)をご紹介します。
- 岡野バルブ製造は発電所で用いられるバルブなどで国内最大手
- 岡野バルブ製造は技術力に定評があり、グローバルでシェアトップの商品もある
- 米国のトランプ新政権の政策やデータセンターの建設ラッシュなどの需要増に期待
岡野バルブ製造(6492)はどんな会社?
岡野バルブ製造は、発電所で用いられるバルブの製造やメンテナンスを手がけるメーカーとして国内の最大手で、東証スタンダード市場に上場しています。
バルブとは「パイプとパイプの間に装着され、パイプの中を流れる気体や液体の流れる量を調節したり、止めたりする装置」です。火力原子力発電所の主蒸気ラインに使用される超高温高圧バルブを製造しています。流体の温度は700℃、圧力40MPa(1cm四方あたりに400kgの圧力)といった流体に用いられる発電所用高温高圧バルブは、発電プラント最重要機器のひとつであるとともに、技術的難易度はバルブの中でも最高峰です。
その他大型タンカー用、LPG・LNG用の超低温に耐えるバルブや1200℃に耐える風洞用遮断弁、減温・減圧を1台でこなす蒸気変換弁など、産業の様々な場面で同社のバルブが活躍しています。
同社は1926年に創業者の岡野満氏によって前身の岡野商会が設立されました。当時英国のボイラーメーカーの輸入に頼っていた高温高圧バルブは、故障が多く国産化を目指すため起業しました。その後研究開発を進めバルブの国産化に成功。1932年には高温に強い特性を持つ合金であるステライトの採用を、世界で初めて実現しました。現在でも世界中のバルブメーカーがステライトを採用しており、世界標準の技術となっています。1966年に操業を開始した日本原子力発電・東海発電所には、蒸気用のバルブを全量納入するなど実績を積み重ねていきました。
信頼性を強みにグローバルニッチトップの地位へ
岡野バルブ製造の強みは、高い技術力による製品の信頼性です。これは設計から製造まで自社内で手掛ける一貫体制と、エンジニアと熟練工たちの技術の蓄積によるものです。各発電所ごとに異なる仕様があり、同社の受注生産では一品一様の製造が行われており「人」の力が欠かせないためです。
また、同社は鋳鋼も自社内で行っています。クロムやモリブデン、ニッケルなどの添加物のバランスは、当日の気温や湿度に合わせて調整され、数回の試行を経て最適な組み合わせが見つけられます。こうした取り組みは気体や流体の漏れを防ぎ、高温高圧環境でも劣化を最小限に抑えるために不可欠です。高い信頼性をもった同社の特殊バルブは、ニッチ分野ながらもグローバルでシェアトップとその地位を確立しているのです。
岡野バルブ製造(6492)の業績や株価は?
岡野バルブ製造の今期2024年11月期は、売上高が前期比1%増の75億円、営業利益が8%増の8億8000万円を見込んでいます。
足元の業績は東海第二発電所向けの特定重大事故等対処施設用弁や、上越火力発電所2号のバルブ販売が伸びています。メンテナンス部門では、島根原子力発電所2号機の点検工事や福島第一原子力発電所の廃炉関連工事などが好調です。
11月22日の終値は5790円で、投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約58万円、予想配当利回りは0.7%です。
国内では長引く電気料金の高止まりやピーク時の電源確保のため、原発の再稼働機運が高まっています。また、石炭火力発電所なども老朽化による廃炉や更新需要で同社の特殊バルブのニーズは今後も伸びそうです。また、米国ではトランプ新政権による発電所の規制緩和も期待されているほか、世界的なデータセンターの建設ラッシュでグローバルで発電所の新設・更新が見込まれます。
株価は日足ベースで上昇基調が続いています。4月の年初来高値6500円からは調整局面となっていますが、直近では再度の高値トライの機運が盛り上がっており、妙味のある銘柄のひとつと考えています。