日本(日銀)は利上げ方向に舵を切っているのに対し、欧州(ECB)は利下げ方向に舵を切り、米国はインフレ再燃を警戒しながら利下げのタイミングを探っている状態です。
近年、日本と欧州、米国では金融政策の方向性が異なっています。
この記事では、利上げと利下げの投資商品(株式、債券、REIT)に与える影響について解説します。市場環境を確認する際の参考にしていただけたら幸いです。

  • 利上げは株価にマイナス、債券にはプラス、REITにはマイナスの影響
  • 利下げはそれぞれ逆の影響。ただし既発債券の価格は利下げにより上昇
  • 金融政策は投資商品の価格に大きな影響があるため、その動向には注意が必要

各国・地域の政策金利の動向

日本と欧州、米国の2024年6月から2025年6月までの政策金利の動向が下の(図表1)です。

【図表1】日本・欧州・米国の政策金利の推移(単位=%)
日本 欧州 米国
2024年 6月 0.10 4.25 5.50
7月 0.25 4.25 5.50
8月 0.25 4.25 5.50
9月 0.25 3.65 5.00
10月 0.25 3.40 5.00
11月 0.25 3.40 4.75
12月 0.25 3.15 4.50
2025年 1月 0.50 2.90 4.50
2月 0.50 2.90 4.50
3月 0.50 2.65 4.50
4月 0.50 2.40 4.50
5月 0.50 2.40 4.50
6月 0.50 2.15 4.50

日本は2024年7月に0.10%から0.25%に利上げを行い、2025年1月には0.25%から0.50%に引き上げ、さらなる利上げのタイミングを探っています。
欧州はインフレの状況を見ながら継続的に利下げを行い、2025年6月の政策金利は2.15%になっています。
米国は2024年9月に5.50%から5.00%、2024年11月の5.00%から4.75%、12月4.75%から4.50%に利下げ後、インフレ再燃を警戒しながら利下げのタイミングを探っている状況です。

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利上げが投資商品(株式、債券、REIT)に与える影響

利上げは、インフレの抑制や景気の過熱を抑えるために行われる金融引き締め策です。
ここからは、利上げが株式、債券、REITに与える影響について見ていきます。

株式

利上げは株価に対してマイナスの影響を与えます。
利上げが行われるとそれに伴い、銀行からの借り入れなどの資金調達コストが上昇し、企業収益に対してマイナスに働くからです。
特に借り入れの多いグロース(成長)株が、利上げの影響を大きく受けます。

また、利上げにより個人のローン金利も上昇します。それが住宅や車などの需要の減少につながります。住宅や自動車などすそ野が広い産業の業績が悪化すると、市場全体の株価を下げる要因にもなります。

債券

利上げは、債券のクーポンレート(表面利率)の上昇につながるため、プラスの要因として働きます。
ただし、低いクーポンレートの既発債では債券価格の下落というマイナスの影響が出ます。

価格の下落幅は、残存期間(満期までの期間)が長いほど大きくなります。

REIT(不動産投資信託)

利上げがREITに与える影響は、上記の株式同様、銀行などからの借り入れによる資金調達コストの上昇により、収益が減少する点です。収益の減少は、分配可能額の減少につながり、分配金利回り低下の要因になります。

そのため、利上げによりクーポンレートが上昇した債券との比較で、REITの分配金利回りの魅力が低下します。REITから債券への資金移動が起こった場合、REIT価格が下押しされる要因になります。

利下げが投資商品(株式、債券、REIT)に与える影響

利下げは、景気を刺激するための行われる金融緩和の政策です。
ここからは、株式、債券、REITのそれぞれについて利下げの影響について見ていきます。

株式

利下げが行われると、借り入れなどによる資金調達コストが下がります。それにより、設備投資やM&Aなど企業活動が活発になり、収益の増加が期待され、株価に対してプラスの影響を与えます。
特に借り入れの多いグロース株が、その影響を大きく受けます。

また、個人のローン金利が低くなることにより消費が刺激され、企業業績や株価に対してプラスに働きます。

債券

利下げが行われると、新発債のクーポンレートも下がるので、相対的に債券の魅力が低下します。投資家が債券から、より収益の増加が期待できる株式やREITへ資金を移動することにより債券価格は下落します。

ただし、利下げ後の新発債に比べてクーポンレートの高い既発債の債券価格は上昇します。

REIT(不動産投資信託)

利下げは、借り入れなどによる資金調達コストの減少につながります。そのため、REITの分配可能利益を増加させる方向に働き、分配金の増加を期待することができます。

また、分配金増額の期待からREITへ資金が流入すれば、REIT価格の上昇が期待できます。

まとめ

以上、株式、債券、REITのそれぞれについて、利上げと利下げの影響について見てきました。
(図表2)はその一覧表になります。

【図表2】利上げと利下げの株式・債券・REITへの影響
株式 債券 REIT
利上げ(金融引き締め策) マイナス プラス マイナス
利下げ(金融緩和策) プラス マイナス プラス

投資している先(国や地域)の金融政策は、株式や債券、REITの運用利回りや価格に大きな影響を与えます。日本(利上げ)と欧米(利下げ)が逆の金融政策を行っている現在(2025年7月)、その動向に高い関心をもっておきましょう。