海外の主要な株式インデックスの多くは、銘柄(企業)の時価総額に応じてウェイト付けする時価総額加重平均型で指数を算出しています。この算出方法は、ウェイトが大きい銘柄ほど、そのインデックスに対して大きな影響を与えます。
この記事では、S&P500、MSCI World Index、MSCI ACWI Index(オールカントリー)の概要を説明し、それぞれのインデックスの上位10銘柄のウェイト合計と銘柄、年率リターンや年率リスク(標準偏差)を比較して、個々のインデックスの特徴を見ていきます。
- 3つのインデックスのうち、上位10銘柄のウェイトが最も高いのはS&P500
- どのインデックスも時価総額の大きい米国企業が構成銘柄の上位を占めている
- 長期リターンが高かったのはS&P500、リスクが低かったのはオールカントリー
海外の主要株式インデックスの概要
まずは、それぞれのインデックス(株価指数)の概要について説明いたします。
S&P500
S&P500は、ニューヨーク証券取引所やナスダックに上場している米国の代表的な503銘柄(2025年7月31日現在)で構成された指数で、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社が算出し公表しています。
MSCI World Index(MSCIワールド)
MSCI World Index(以下「MSCIワールド」)は、先進国23か国の株式で構成された株価指数です。
構成銘柄数は1,325銘柄(2025年6月30日現在)で、MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)社が算出し公表しています。
また、日本を除く先進国22か国で構成された「MSCIコクサイインデックス」という指数もあります。
MSCI ACWI Index(オールカントリー)
MSCI ACWI Index(以下「オールカントリー」)は、先進国23か国と新興国24か国の株式で構成された株価指数です。
構成銘柄数は2,528銘柄(2025年6月30日現在)で、こちらもMSCI社が算出し公表しています。
以上、3つのインデックスの銘柄数と対象地域をまとめたものが図表1です。
S&P500 (2025/7/31) |
MSCI World Index (2025/6/30) |
MSCI ACWI Index (2025/6/30) |
|
---|---|---|---|
銘柄数 | 502 | 1,325 | 2,528 |
対象地域 | 米国1か国 | 先進国23か国 | 先進国23か国 新興国24か国 |
出所:各インデックスのファクトシートを参考に筆者作成
各指数の上位10銘柄の合計ウェイトは?
S&P500、MSCIワールド、オールカントリーそれぞれの指数の上位10銘柄の合計ウェイトは、図表2の通りです。
インデックス名 | 上位10銘柄のウェイト合計 |
---|---|
S&P500 (2025/7/31) |
38.00% |
MSCI World Index (2025/6/30) |
25.26% |
MSCI ACWI Index (2025/6/30) |
22.73% |
出所:各インデックスのファクトシートを参考に筆者作成
上位10銘柄のウェイト合計が最も高いのがS&P500の38.00%、次がMSCIワールドの25.96%、3番目がオールカントリーの22.73%で、3つの指数の中ではS&P500が上位10銘柄の影響を最も受けやすいインデックスといえます。
各指数の上位10銘柄の構成は?
次にS&P500、MSCI ワールド、オールカントリーの上位10銘柄の構成を比較したのが図表3です。
S&P500 (2025/7/31) |
MSCI World Index (2025/6/30) |
MSCI ACWI Index (2025/6/30) |
|
---|---|---|---|
1位 | エヌビディア | エヌビディア | エヌビディア |
2位 | マイクロソフト | マイクロソフト | マイクロソフト |
3位 | アップル | アップル | アップル |
4位 | アマゾン・ドット・コム | アマゾン・ドット・コム | アマゾン・ドット・コム |
5位 | メタ・プラットフォーム クラスA | メタ・プラットフォーム クラスA | メタ・プラットフォーム クラスA |
6位 | ブロードコム | ブロードコム | ブロードコム |
7位 | アルファベット A | アルファベット A | アルファベット A |
8位 | アルファベット C | テスラ | テスラ |
9位 | バークシャーハサウェイ B | アルファベット C | TSMC |
10位 | テスラ | JPモルガン・チェース | アルファベット C |
出所:各インデックスのファクトシートを参考に筆者作成
S&P500(2025/7/31)とMSCI ワールド(2025/6/30)、オールカントリー(2025/6/30)とファクトシートの作成時期が違うため、順位が異なる銘柄がありますが、どのインデックスでも、時価総額の大きい米国企業が上位を占めていることがわかります。
オールカントリーとほか2つのインデックスの違いは、台湾のTSMCが9位にランクインしている点です。
S&P500のファクトシートでは、銘柄ごとの比重が確認できなかったため、MSCI ワールド、MSCIオールカントリーについても銘柄ごとの比重を記載しませんでしたが、興味のある方は、本文下に記載しました出典サイトでご確認ください。
また、国別ウェイトでの米国の割合はS&P500が100%、MSCI ワールドが71.86%、オールカントリーが64.37%でした。米国の巨大IT企業の影響をある程度抑えたい場合は、3つの指数の中ではオールカントリーが選択肢となります。
各指数のトータルリターンとリスク(標準偏差)は?
S&P500、MSCI ワールド、オールカントリーのそれぞれの年率リターンは図表4の通りです。
インデックス名 | 1年 | 3年 | 5年 | 10年 |
---|---|---|---|---|
S&P500 (2025/7/31) |
16.33% | 17.10% | 15.88% | 13.66% |
MSCI World Index (2025/6/30) |
16.76% | 18.87% | 15.09% | 11.23% |
MSCI ACWI Index (2025/6/30) |
16.69% | 17.91% | 14.18% | 10.55% |
出所:各インデックスのファクトシートを参考に筆者作成
5年、10年の長期で比べると、S&P500の年率リターンが他のインデックスに比べ高くなっています。
また、過去3年間は世界の市場環境が良かったことが年率リターンからわかります。
次にS&P500、MSCIワールド、オールカントリーのそれぞれの年率リスク(標準偏差)を見ていきます。
年率リスク(標準偏差)は数値が大きいほどリスク(振れ幅)が高く、小さいほどリスク(振れ幅)が低いことを表します。
図表5を見ると、他のインデックスに比べ銘柄数や投資地域の多いオールカントリーのリスクが抑えられていることがわかります。
インデックス名 | 3年 | 5年 | 10年 |
---|---|---|---|
S&P500 (2025/7/31) |
15.15% | 16.19% | 15.50% |
MSCI World Index (2025/6/30) |
15.11% | 15.87% | 15.14% |
MSCI ACWI Index (2025/6/30) |
14.76% | 15.37% | 14.91% |
出所:各インデックスのファクトシートを参考に筆者作成
最後に
以上、海外の主要なインデックスの概要と、上位10銘柄のウェイト合計、年率リターンと年率リスクについて見てきました。
各指数への連動を目指すインデックスファンドを選ぶ際の参考にしていただければ幸いです。
出典サイト
S&P500 ファクトシート……S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社(2025/7/30)
MSCI World Index ファクトシート……MSCI社(2025/6/30)
MSCI ACWI Index ファクトシート……MSCI社(2025/6/30)