最近はQRコード決済のポイント還元をはじめ、日常の買い物で「ポイント」に触れる機会が増えました。スマホアプリの「AI-Credit」(公式サイト)は、地図上に表示されたお店で、どんな決済手段を使えばお得になるかを一覧で示してくれるアプリ。開発者の足澤憲さんに、アプリを開発したきっかけや「クレジットカードマニア」としての一面、さらにはご自身の資産運用についてお話をうかがいました。
リエールファクトリー
取締役 COO/CTO
足澤 憲さん
キャッシュレスマップアプリ「AI-Credit」開発者。2013年、岩手県立大学大学院ソフトウェア情報学研究科・ソフトウェア情報学専攻博士前期課程修了。茶道(裏千家初級)の資格も保有。クレジットカードマニア。
幼少期から「お得」に敏感。学生時代にカード沼へ
足澤さんは、お店で使えるポイントを検索するアプリを自ら開発してしまうほど「お得」に対する感度が強くて、「セコロジスト」を紹介する某テレビ番組にも出演されたそうですが、ご自身の節約生活のルーツはどこにあるのでしょうか。
足澤 私は岩手県の山奥で農家の家庭に生まれたのですが、決して裕福とはいえない環境で、家にお金が足りないのが日常でした。そんな環境だったから、小さい頃から「お得」や節約のことをいつも考えていました。
そんな環境でありながら、父は新しい物を買うのが好きで、私が小学5年生ぐらいのときにパソコンを買ってきました。でも、父はそのパソコンをほとんど使いこなせず、このままではもったいないので、自分がなんとか減価償却しなければと思い、パソコンを触り始めたのがこの頃です。
Windows 98の頃でしょうか。ちょうどインターネットが日本で普及し始めた時期ですね。実際にどんな使い方をしていたのでしょうか?
足澤 中学生になると、近所のお店の価格やセール情報をExcel(表計算ソフト)にまとめて管理していました。ジャガイモはどこで何円とか、かなり細かいことまでチェックしていた記憶があります。
あとは、村のお寺の人に頼まれて文書を作るなど、パソコンを使ってお金を稼ぐこともしていました。趣味でプログラミングを始めたのもこの頃でした。実際にパソコンを触ってみたら楽しくて、それが今の仕事につながっていると思います。
そして、クレジットカードの沼に入っていったわけですね。
足澤 初めてクレジットカードを発行したのは、大学に入学した19歳のときでした。カードごとにさまざまな特典があって、たとえばガソリンはどうすれば安く入れられるか、スーパーで使うとお得なのはどのカードか、自分の生活圏内でよく使うお店をリストアップして、それに合致するカードは何かを調べていました。それがきっかけでカード好きが始まり、カードを集めるようになりました。
すごいですね……。こんなにカードがあると、管理が難しいのでは?
足澤 どのカードがいつ引き落とされるとか、ポイントがいつ失効になるとか、自分だけで管理するのはほとんど無理です。今は「マネーフォワード」のようなサービスを利用して、かなり効率的に管理できるようになったのですが、それでもポイントを失効させてしまい、悔しい思いをすることもあります。
QRコード決済の還元率もひと目でわかる「AI-Credit」
そうですよね……。ところで、学生時代には何を情報源にしてカードを集めていたんですか?
足澤 クレジットカードの情報をまとめたサイトが昔からあって、そういうサイトを見て回っていました。当時はそれくらいしか手がかりがありませんでした。ただ、どのサイトも、実際にカードを利用する立場で見ると決してわかりやすくはない、どちらかといえば玄人向けのデータベースサイトだったので、情報を自分なりに整理してExcelでまとめていました。
当時はもちろん、今みたいになんちゃらPayなどのQRコード決済はなかったので、計算式もそこまで複雑ではなく、Excelだけで対応していました。
その経験が「AI-Credit」の開発につながっていったわけですね。
足澤 そうですね。新卒で入った会社では、これまでの経験を生かしてカード比較サイトを作っていたのですが、カードの特典やポイントはキャンペーンなど日々変わっていくので、これをより動的にというか、なるべく人間の手を介さずにベストな決済方法を提案できたらという思いが、今のサービスにつながったと思います。
そのサイトは半年か1年でクローズしてしまいました。その後、上司と2人で起業して、当初は今のAI-Creditとまったく関係ないウェブサービスを運営していたのですが、あまりうまくいかず、次に命をかけて作れるサービスは何かということでアイディアを出し合った結果、やはりクレジットカードだろうということで、AI-Creditが生まれました。
最初のベータ版ができたのは2年前でした。当時はPayPayもサービスが始まるかどうかという時期で、アプリの機能としてはクレジットカードの比較がメインでした。
キャッシュレス決済の中には、キャンペーンによっては10%、20%還元というのもざらにあります。クレジットカードの還元率は通常だと0.1%単位の差でしかないので、クレジットカード以外の決済手段を入れないと、誤差レベルの計算になってしまいます。
そこで、QRコード決済などの還元率も反映させるために、機能拡張というか、もはや方向転換といえるレベルでアプリの刷新をしました。今の形になったのは1年ほど前のことです。