2023年12月に廃止が決まっているジュニアNISAの口座数が伸びています。2020年12月末の約45万口座から、2021年3月末には約50万口座となりました。なぜなくなることが決まった制度の利用者が増えているのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの恩田雅之さんが解説します。
- ジュニアNISAの口座数が3カ月で10.6%伸びている
- 2024年以降は18歳になるまでの払い出し制限が解除。遡及課税もされない
- 利便性が向上し、大学入学以前の教育費の準備にも使えるようになった
ジュニアNISAの口座数が3カ月で2桁の伸び
コロナ下の巣ごもり生活の影響から「つみたてNISA」の口座数が伸びている新聞記事を読みました。他のNISAの状況も気になり、金融庁が4半期ごとに調査している「NISA・ジュニアNISA口座の利用状況調査」を確認してみました。それぞれの直近4半期での伸び率は以下の表のとおりです。
2021年3月末 | 2020年12月末 | 増加率 | |
---|---|---|---|
一般 NISA |
1224万5057口座 | 1220万9886口座 | 0.3% |
つみたて NISA |
361万5057口座 | 302万2422口座 | 19.6% |
ジュニア NISA |
50万2472口座 | 45万4453口座 | 10.6% |
出典:金融庁 NISAデータ集(2021年7月16日公表分)
2020年度の税制改正で2023年12月に廃止することが決まったジュニアNISAの口座数が10.6%と高い増加率を記録していました。つみたてNISAは投資可能期間が2042年まで5年間延長、一般NISAも2024年以降、新NISAへ見直しが行われ、投資可能期間は5年間延長されます。その中で廃止が決まっているジュニアNISAの口座数の伸び率に興味を持ち、過去の「利用状況調査」をみてみました。
2020年度の税制改正後に口座数の増加率が加速
2020年度税制改正は、その年の3月に発表になっています。その前後の口座数の伸び率を比較すると、以下の表のようになります。
上記の表を確認すると、2020年度税制改正の発表の前後で増加率に大きな変化が出てきていることがわかります。以下、ジュニアNISAの仕組みと税制改正後の変更点についてみていきます。
ジュニアNISAは2016年にスタートした非課税制度
ジュニアNISAは、投資によって子どもの教育資金や社会人として独立する時の資金づくりのために作られた少額投資非課税制度で、2016年にスタートしました。対象者(契約者)は日本に住む0~19歳の未成年者です。資産の運用は親などの親権者が代理で行います。
年間の非課税投資額は80万円、投資を始めた年から最長5年間です。2023年12月末にこの制度は廃止になりますので、今からの制度利用ではロールオーバーの機能を使うことはできません。ただし、子どもが20歳になるまで継続管理勘定に移して非課税で保有ができます。
投資できる商品は、上場株式、株式投資信託など一般NISAと同様の商品です。その点は、投資対象商品が決められているつみたてNISAに比べて投資対象が広くなっています。
また、他のNISAにない制限としては、子どもが18歳になるまでは払い出し制限があります。18歳前に払い出した場合は、非課税期間に受け取った配当や売却益に対してペナルティとして遡及して税金がかけられます。
払い出し制限がなくなりジュニアNISAの利便性向上
ジュニアNISAは2023年12月末で廃止になるため、2021年から利用する場合は年間80万円×3年(2023年末まで)の240万円が最大の非課税投資額になります。
2016年から2019年末までに利用を始めれば、年間80万円×5年間の最大400万円の非課税投資額を確保できたのに、なぜ2020年4月以降に口座の増加率が上がったのでしょうか。
要因は、2020年度税制改正時のジュニアNISAの制度変更にあります。
今回の制度変更により、2024年以降は18歳になるまでの払い出し制限が解除され、それに伴い非課税部分に対しての遡及課税をされることがなくなりました。これに伴い、今までは18歳以降の教育資金や社会人になるための準備資金としてしか利用できなかったものが、ジュニアNISAの利用開始年齢により保育園・幼稚園、小中校の入園・入学資金としても利用可能になり、学資保険のような使い方ができるようになりました。
制度変更による利便性の向上が、2020年4月以降の口座増加数に繋がっているのでしょう。
ただし、ジュニアNISAは価格変動リスクなどにより運用資産額が上下します。学資保険のように受け取れる保険金があらかじめ決まっているものではない点に注意して、ジュニアNISA利用を検討しましょう。