テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家が700人以上所属する日本放送作家協会がお送りする豪華リレーエッセイ。ヒット番組を担当する売れっ子作家から放送業界の裏を知り尽くす重鎮作家、目覚ましい活躍をみせる若手作家まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜く放送作家&脚本家たちのユニークかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず!
連載第28回は、「天才・たけしの元気が出るテレビ!」や「ザ!鉄腕!DASH!!」「特命リサーチ200X」など数多くの人気番組に携わる、放送作家の野呂エイシロウさん。
仕事をせずに生きていたい
僕は子供の頃からこんなことを思っていた。「仕事をせずに生きていきたいな」と思った。
僕は小学4年のときに放送部に所属し、その後、高校2年までずっと放送部に所属していた。放送部に所属した理由は非常に不純で、1つ下の学年に超かわいい放送部の女子がいたからである。その後、中学、高校時代は朝5時までオールナイトニッポンを毎日聞いてハガキ職人をしていた。お陰で受験を失敗し希望しない地元の工業大学に行くことになる。
そこで、プランナーの道が突然開ける。公募で学生起業家の仲間入り。学生向けクレジットカードや家電製品の企画開発をしていた。200万円もするMacintoshを買い、企画書きに明け暮れた。父親の年収を遥かに超えて、大学生なのに携帯を持ち、毎月10万円以上の電話料金を支払っていた。高級クラブでグラスを傾けていた。そう仕事をせずに生きていけるようになったのだ。
その後「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」で放送作家デビュー。運良く番組にも恵まれ「ザ!鉄腕!DASH!!」「特命リサーチ200X」「奇跡体験!アンビリバボー」と次々とゴールデン番組に参画することができた。
稼げる「目線」を持つ
今から20年ほど前、自動車番組をやっているときに、いろいろなご縁もあってプロモーションビデオやCMの仕事をするようになった。それが縁で企業の様々な相談に乗るようになり複業として戦略的PRコンサルタントをするようになった。実は放送作家の仕事の9割は相談ごとの解決だ。原稿書きはわずかであると僕は思っている。
当時から秋元康先生、小山薫堂先生もいろいろな仕事をしていた。それを見ていて「そうだ何でもやろう」と決めたのです。運良く大きな企業からベンチャー企業までこれまで150社以上の企業のコンサルをすることができました。現在も数多くの企業の広報戦略の相談にのってます。
放送作家の目線というのは非常に大切だと思いました。放送作家の仕事の一番は、企画を考え、企画書を作ることです。それはPR会社さんとはちょっと違う目線のものです。だから非常に高確率で企画を通すことができます。
多くの広報関係者が間違っているのは、マスコミの目線が入っていないことです。企画になってないのです。「紹介してください」とお願いモードになっていることです。でも放送作家が提案するものは「どうだ! 面白いでしょう!」という企画になっているのです。
リリースは嘆願書ではありません。企画書である必要があるのです。企業の広報さんの多くは「自社のアピールをしたいだけで企画を考えたいわけではない」というと思うのです。その差が僕の収益を生んでいる。
すでに放送作家業の数倍の収益を上げている。ものを書くのが仕事だから放送作家業も企画を考えるのもメールを書くのも一緒なのである。
そのついでにSNSとブログも書く。それがそのまま書籍になっている。最近、書籍にかけている時間は本当に短い。一冊1時間程度である。公開されている文章をまとめているだけである。それでも国産車一台分の収益になる。
学生の頃思った「仕事をしたくない」が現実化している。毎日遊んでいるようななんかふんわり頭で浮かんだアイディアを収益化している。僕はケチだからどんどん思いつきをアイディアにして企画にして収益を上げている。趣味で始めたゴルフも今や仕事になりつつある。収益を生み始めているのです。
放送作家はアイディアを企画にする仕事。そして会議のプロフェッショナルでもある。普通の企業の会議を盛り上げることができる。だから多くの企業が放送作家を使いたがるのだろう。
この需要はまだまだあると思う。放送作家は非常に便利な存在であり、有名コンサルタントよりも安価である。しかも面白い。この閉鎖的な日本社会に新しい風を吹き込むことだろう。
次回は脚本家の東多江子さんへ、バトンタッチ!
放送作家の地位向上を目指し、昭和34年(1959)に創立された文化団体。初代会長は久保田万太郎、初代理事長は内村直也。毎年NHKと共催で新人コンクール「創作テレビドラマ大賞」「創作ラジオドラマ大賞」で未来を担う若手を発掘。作家養成スクール「市川森一・藤本義一記念 東京作家大学」、宮崎県美郷町主催の「西の正倉院 みさと文学賞」、国際会議「アジアドラマカンファレンス」、脚本の保存「日本脚本アーカイブズ」などさまざまな事業の運営を担う。