投資対象を株式に集中させず、複数の資産に分散して投資すれば、下げ相場での値下がりを抑えられます。ただし、何も考えずに分散投資をしても効果は期待できません。本記事では、株価が下落する局面で値上がりしやすい「債券」や、「有事の金」とも呼ばれ、波乱相場に強い金(ゴールド)について解説します。
- 景気が悪化し、金利が低くなる下げ相場で債券価格は上がりやすい
- 金(ゴールド)は株価が短期的に大きく下落するような波乱相場に強い
- 大きな変動から資産を守るためには、債券や金にも分散投資するとよい
景気が悪化し、金利が下がると価格が上がる債券
景気がよくなると、企業は銀行からお金を借りたり、債券を発行して投資家からお金を集めたりして、設備投資などへ積極的に資金を投じます。資金需要が旺盛になると、銀行が企業にお金を貸し出す金利や、債券の金利は上昇します。
一方で、景気が悪化すると企業の資金需要が減ります。すると中央銀行(日銀)は、景気を回復させるために、企業などが設備投資をしやすくするよう、政策金利を引き下げます。中央銀行が政策金利を引き下げると、銀行が企業に貸し出す際の金利も、債券の金利も低下します。
世の中の金利が上昇すると、債券価格は下落します。その理由は、金利が上昇すると過去に発行された債券の魅力が低くなるからです。
例えば、金利1%の債券が売り出された後、金利5%の債券が売り出された場合には、投資家は多少の損をしてでも、金利5%の債券を購入する可能性が高いでしょう。金利が上がった場合、過去に発行された金利が低い債券の魅力が下がるのです。
逆に金利が下落した場合は、過去に発行された金利の高い債券の希少価値が高まり、債券価格が上昇します。金利と債券価格はシーソーのような関係にあると覚えるとよいでしょう。金利が上昇すると債券価格が下落し、金利が下落すると債券価格が上昇するのです。
景気が悪化すると金利が下がり、債券価格は上昇しやすくなります。そのため、債券は株価が下落する局面において、相対的に有利な運用ができるのです。景気が悪いときに大きく資産を失いたくない場合は、株式だけでなく債券にも分散して投資するといいでしょう。
「有事の金」と呼ばれ、危機時に買われやすい金
債券に並び、下げ相場で比較的有利に運用できるのが「金」(ゴールド)です。金は宝飾品や半導体、投資用など、さまざまな需要があります。
金は「有事の金」とも呼ばれ、株価が短期的に大きく下落するような波乱相場に強い点が特徴です。
金が有事に強い理由の一つとして、無国籍であるという点が挙げられます。株式や債券は基本的にどこかの国に属しています。国に属すということは、国の動乱などに巻き込まれるリスクもあるということです。
また、世界的な経済危機で各国の政府が低金利政策を行った場合、金の価格は上昇する傾向がみられます。
金は債券とは異なり、保有しているだけで金利収入が得られる財産ではありません。そのため、金は金利が高ければ高いほど不利になりますが、金利が低下するような下げ相場では、金が持つ希少性と安心感によって、その価値は高まりやすくなります。
波乱相場では金利が低下する傾向があるため、金にとっては有利な展開が期待できるでしょう。波乱相場で値上がりを期待できる金を保有しておくことで、株式や債券とは異なる値動きの資産を持つことができ、資産全体の値動きを抑えることにつながります。
金は、金価格に連動する投資信託やETFなどを購入することで、誰でも手軽に投資が可能です。銀行や証券会社で購入できますので、取引をしている金融機関の取り扱い商品を見てみるとよいでしょう。
債券や金を含めた分散投資で、資産全体の値動きを抑える
投資といえば株式投資を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。実際に株式投資は投資の王道であり、相場上昇時には大きな利益を上げることが可能です。
一方、相場が下落する局面では、株式は大きく値下がりする可能性があります。特にリーマン・ショックのような世界的に大不況となる状況では、ほぼ全ての株式が大幅に下落する可能性が高いでしょう。
よって、株式だけに投資をしていると、不景気のときには資産を大きく減らしてしまう可能性が否定できません。場合によっては、評価額が50%以下になることもあります。
株式のみを保有している場合は、大きな相場変動に耐えることができません。大きな変動から資産を守るために大切なことは、金や債券など株式とは異なる値動きをする、さまざまな資産に分散投資をすることです。
債券や金を組み合わせた運用をすることで、下げ相場のタイミングで急にお金が必要になるなど、万一の事態に備えることができるでしょう。