2022年度に入り、国民年金と厚生年金・年金生活者支援給付金・年金保険料の金額がそれぞれ変更となっています。老齢年金は、老後の生活を支える貴重な収入の一つ。それが引き下げられるのは、現役世代の人に取っても気になることでしょう。今回は、今年度の年金額に関する変更とそのしくみについて解説します。

  • 国民年金・厚生年金の支給額が2022年6月15日支給分より原則0.4%引き下げ
  • 将来の年金支給額は「ねんきん定期便」「公的年金シミュレーター」などで確認
  • 家族のためにも年金にプラス自助努力の準備を検討したい

年金の支給額と保険料がそれぞれ引き下げに

2022年度の国民年金・厚生年金の支給額は、6月15日に支給された分より、原則0.4%引き下げられています。年金の引き下げが行われたのは、2021年度に続いて2年連続となります。

では、どれくらい引き下げがされたかというと、平均的な収入の方が40年間就業した場合を例にすると、国民年金は前年度比259円減の64,816円(※1)厚生年金は前年度比903円減の219,593円(※2)です。

新しいNISAの“裏技”教えます! ニッセイアセットマネジメントの情報発信&資産運用アプリ

※1 満額の場合
※2 夫婦2人分の老齢基礎年金(満額)を含む標準的な年金額

公的年金の収入額などが基準額以下の人に対して年金に上乗せして給付される年金生活者支援給付金も、支給額が引き下げられます。引き下げ率は0.2%で、基準額でいうと5,020円(障害年金……1級6,275円、2級5,020円)と、前年に比べて約10円程度引き下げられています。

また、国民年金保険料も引き下げられており、令和4年度の年金保険料は16,590円、前年度比20円減となりました。

毎年行われる国民年金の見直しのしくみ

年金額と年金保険料は、賃金と物価の変動率を基準として毎年度改定されています。今年度は賃金の変動幅を表す名目手取り賃金変動率が下落し、かつ物価変動率を下回ったため、名目手取り賃金変動率の-0.4%に従って引き下げが決まりました

さらに、賃金と物価の変動率によっては、マクロ経済スライドが適用される場合もあります。マクロ経済スライドとは、現役人口と平均余命のバランスで年金額を調整するしくみのことです。賃金と物価が上昇した場合の年金額上昇率を、現役世代の負担が大きくなりすぎない範囲に調整しつつ、年金制度の財政を長期的に確保するために導入されています。

物価上昇のイメージ
物価は上昇しているにもかかわらず、年金支給額は引き下げられた

賃金と物価のいずれも上昇した場合には、マクロ経済スライド調整率の分、年金額の上昇は抑えられます。賃金と物価は上昇したものの上昇率が低い場合は、スライド調整率の反映は限定的になり、結果的に年金額は改定されません。今年度のように、賃金と物価の変動率がいずれも下落した場合は、マクロ経済スライドによる調整は行われず、結果的に年金額は引き下げられます。

年金見込額を確認して早いうちから将来の準備もできると安心

こうした年金額引き下げの情報を見ると、将来自分の受け取る年金額はいくらになるのか、心配になる人もいるかもしれません。そういう場合には、まずは年金見込額を確認してみることをおすすめします。

年金見込額は、毎年誕生月頃に郵送されてくる「ねんきん定期便」でも、これまでの加入実績に応じた額が確認できます。また、厚生労働省が4月から試験運用を開始している「公的年金シミュレーター」や、日本年金機構が運営している「ねんきんネット」では、パソコンやスマートフォンから年金額の試算などができますので、そちらも活用してみると良いでしょう。

正しい保険選びは公的保険制度を知ることから

特に「ねんきんネット」では、自分がこれまで加入していた年金の種類や年金保険料の未納有無についても確認ができます。年金の未納や免除・猶予期間があると、その期間分、受け取れる年金額が減ってしまいます。可能な限り未納分や免除・猶予分については、時効までに追納できると安心です。

年金見込額を確認し、不安があるようでしたら、早めに将来に向けた準備を進めていきましょう。貯蓄をしていくのも良いですし、確定拠出年金(iDeCo)などを利用して老後に受け取れる給付金を増やしていく方法もあります。また、60歳以上からは国民年金の任意加入制度を利用することで年金額の増額をすることも可能です。

自分のため、家族のため、年金にプラスする準備を一度検討してみてくださいね。

<参考URL>
日本年金機構「令和4年4月分からの年金額等について」
日本年金機構「年金額はどのようなルールで改定されるのですか。」
厚生労働省「マクロ経済スライドってなに?」

メルマガ会員募集中

ESG特集